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【読書ノート】33「紛争地のポートレート 「国境なき医師団」看護師が出会った人々 」白川優子

国境なき医師団の看護師として何度も紛争地へ足を運び医療活動に従事してきた著者の2冊目の著書。信じられないような紛争地のひどい現場の状況で筆者が何を考え、どのように行動してきたかが良く理解できる。素晴らしい内容なので一読をお勧め。

「理想の医療など紛争地は存在しない、当然そう思っていた。物資にも薬剤にも人材にも限りがあり、思うような医療を提供できない中では、志さえ踏みにじられてしまう、そう思ってもいた。医療行為では戦争やめさせることはできない。それも事実だ。では、その限界を知った上で、私たちに求められているのは何だろうか。それは、その時にできる、最善を尽くした医療を提供することだ。時には、手を握ることを、話しかけることを、これだけでも良いのかもしれない。傷や病気の治療という、直接的な医療ではない。しかし、誰かに話しかけ、その手を握るということは、その人を気にかけること、その人に寄り添うことだ。恐怖や、絶望、悲しみ、怒り、憎しみが交差する中で、誰かがそばにいて手を握ってくれるということは、現地の人々に大きな力を与えているかもしれない。私はそれが看護の力だと信じたい。」

P107

(2022年10月2日)


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