日衛連がユニ・チャームの「紙おむつの水平リサイクル工場」を視察!~使い捨てない未来のために~
「世界の紙おむつリサイクル事情~幼虫で紙おむつを分解!?ユニ・チャーム インドネシアのチャレンジ~」でもお届けしたように、「紙おむつのごみ」は多くの国が取り組んでいる大きな社会課題です。
もちろん、日本の衛生用品業界も「紙おむつのごみ」の処理とその対策をとるために積極的に活動しています。
今年2月には、紙おむつをはじめとした衛生用品の業界団体である、一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 環境委員会(以下、日衛連)のメンバーが、鹿児島県にあるRefFプロジェクトの実証実験施設を視察。「紙おむつの水平リサイクル」の工程の一部を見ていただきました!
今回は、日衛連 環境委員会による視察の様子と「紙おむつの水平リサイクル」の流れを紹介しますね。
日衛連は消費者の安心・安全のために活動する業界団体
ところで、みなさんは日衛連についてご存じでしょうか?
日衛連には、日本のさまざまな衛生用品のメーカーが所属しています(もちろん、私たちユニ・チャームも会員です!)。メーカーが衛生用品を開発・販売し、商品が消費者の手元に渡り、使われた後まで包括的に関わる、大切な役割をされています。
「紙おむつのごみ」は、衛生用品業界全体で取り組む共通課題
日衛連の高橋専務理事に「紙おむつのごみ」と「紙おむつのリサイクル」についてお話を伺いました。
●日衛連 高橋専務理事
―日衛連では「紙おむつのごみ」にどのような課題感をおもちでしょうか?
高橋専務理事「紙おむつのごみは、30年以上前から衛生用品業界においての共通課題でした。紙おむつが普及するのと同時進行で、焼却時の安全性や燃えやすさ、地中に埋めた際の分解のしやすさなど、環境に与える影響も含めて、さまざまな角度から検討が行われてきました。
現在は、日衛連の環境委員会が衛生用品業界全体としての環境政策を行っていますので、紙おむつも委員会のテーマとして活動しています」
―「紙おむつのリサイクル」全般についてはいかがでしょうか。
高橋専務理事「紙おむつのリサイクルの実現に向けて、各紙おむつメーカーにおいても、マテリアルリサイクルなどの挑戦が続いています。
使用済み紙おむつから紙おむつをつくる“水平リサイクル”はその中のひとつであり、ユニ・チャームの取り組みは、紙おむつのリサイクルとして具体化してきている代表例ではないでしょうか」
「紙おむつのごみ」の処理は、以前から衛生用品業界が取り組んできたこと。その中で、今回は「紙おむつのリサイクル」の具体例として、RefFプロジェクトが目指す「水平リサイクル」に注目されたんですね。
リサイクルの現場(1)紙おむつを3つの素材に分ける
ところで「使用済み紙おむつは、一体、どうやってリサイクルしているの?」と疑問をおもちの方も多いはず。
ここでは、実証実験施設で「使用済み紙おむつから低質パルプを取り出して、上質パルプ(リサイクルパルプ)として生まれる変わるまで」の流れをお話ししますね。
①紙おむつの計量・破砕
回収された使用済みの紙おむつは回収袋ごと計量され、金属探知機を通ります。回収袋の中に金属が入っていると、機械を傷めてしまう可能性があるからです(だからこそ、分別が大切なんですね!)。
その後、紙おむつは回収袋ごと、細かく砕いて洗浄されます。
②プラスチックの分離
③高分子吸水材(SAP)の分離
どろどろにされた紙おむつは「パルプ」「プラスチック」「高分子吸水材(SAP)」の3つの素材に分けられます。
リサイクルの現場(2)オゾン処理技術で、新しい“きれいなパルプ”に生まれ変わる!
素材が分けられたところで、いよいよ、パルプ(低質パルプ)をきれいにする工程に入ります。
④オゾン処理技術によるパルプの洗浄・仕上げ
「低質パルプ」は、オゾン処理技術による殺菌・漂白・脱臭を行うことで、きれいな「上質パルプ」に再生されます!
パルプ(上質パルプ)は、すすぎ・防腐処理・脱水の工程を経て、細かく粉砕されます。
最後にパルプ(上質パルプ)を袋詰めして実証実験施設での作業は終了です!こうして生まれたリサイクルパルプは「RefF紙おむつ」の素材に使われます。
視察を終えて。日衛連の紙おむつメーカーが「紙おむつのリサイクル」にかける思い
日衛連のメンバーであり、紙おむつの製造・販売を行うメーカーのみなさんにも、視察の感想と「紙おむつのリサイクル」についてのご意見をお聞きしました。
●白十字 佐藤さん
白十字 佐藤さん「2020年に環境省が『使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン』を制定するなど、紙おむつのリサイクルは国をあげて注目されています。とはいえ、各自治体により、抱えているごみの課題や意識は異なるもの。企業だけで実現できるものではなく、自治体との協力体制が不可欠です。
(RefFプロジェクトに協力している)鹿児島県志布志市・大崎町は、住民のみなさんが使用済み紙おむつを分別する仕組みがすばらしい。水平リサイクルは、今後、一般家庭のごみ回収で応用できるかどうかが課題になると思います」
●花王 新家さん
花王 新家さん「衛生用品業界においても、ごみは大きな問題であり、企業は『製品を作ったまま』では許されない時代。そういった意味では、紙おむつのリサイクルもやらなくてはいけないことではあります。その解決の方向性には、技術面とシステム面の両方が必要。いまは、各社とも技術が蓄積されている段階ではないでしょうか。
また、紙おむつの水平リサイクルで(現在の大人用だけでなく)ベビー用を展開していく際には、より安全性をしっかり伝えていく必要がありますし、そのための情報発信が求められると思います」
●王子ネピア 杉山さん
王子ネピア 杉山さん「これまで紙おむつのリサイクルといえば、主に固形燃料や建材などで、水平リサイクルではありませんでした。直接、人の肌に触れる、紙おむつに戻すような水平リサイクルは『先に進んでいる』取り組みで、実現できることなんだ!という驚きがありました。
紙おむつメーカーの開発者としては、どんな形であっても、紙おむつのリサイクルに取り組んでいきたいという気持ちがあります。
日衛連というフラットな立場をいかして、例えば、回収しやすい紙おむつの項目をクリアにするなど、業界全体が技術を持ち寄って協力できることがあるのではないかと考えています」
最後に、日衛連のメンバーを実証実験施設にお迎えし、施設内を案内したユニ・チャームの担当者に日衛連のみなさんの反応をお聞きしました。
●ユニ・チャーム 明賀さん 八巻さん
八巻さん「ユニ・チャームがオゾン処理技術を活用して、紙おむつの水平リサイクルに取り組んでいることは、日衛連のみなさんは、すでにご存じではいました。今回、リサイクルパルプの実物を見ていただいたことで、パルプの白さに驚かれたり、衛生性を実感されたりと、本プロジェクトをより知っていただけたと思います」
明賀さん「みなさん、リサイクルパルプの安全性や紙おむつの回収のシステムなど、紙おむつを提供する側として、さまざまな点を意識され、関心をもたれていました。今後、紙おむつのごみ問題の解決に向けて、衛生用品業界全体で機運が高まることを期待しています」
あとがき
今回、お話しを伺った方以外にも、何社もの紙おむつメーカーの担当者が実証実験施設を視察されました。訪れたみなさんに共通しているのは、「紙おむつのごみを何とかしなくてはいけない」という使命感。その解決方法は各メーカーによりそれぞれ異なります。ですが、衛生用品業界として、使い捨てない未来を目指すという目的は同じだとわかり、心強く感じました!
それから、高橋専務理事のお話の中で「紙おむつメーカーは、お客様が安心して商品を利用できることはもちろん、見えにくい“環境”に対する取り組みについてもきちんと説明をして、信頼できる情報発信をしていくことが必要」という言葉も印象的でした。
こちらのnoteでも「紙おむつの水平リサイクル」について、しっかりとした情報発信を続けていきたいと思います!