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秋田への旅

私にとっての旅。
それは、新たな故郷と家族と出逢いにいくことなのかもしれない。
海外を巡る前の最後の日本旅行がそう教えてくれた。

はじめに

今回、向かったのは秋田。
中学の修学旅行で47都道府県を制覇するため、北海道から沖縄を縦断した際に、私1人、太平洋側の岩手、宮城を担当したから東北の中で唯一行ったことのない県だった。

日本各地で地域おこしに関わる人々の集まるオンラインコミュニティ地域商人のツアーが組まれるということでお誘いを受け、8年ぶりとなる東北行きにときめきを感じ、同行させてもらうことにした。

何かしら用事を見つけて、日本各地へ旅をする機会があったものの、決まった行程をアテンドされて巡る、いわゆるツアーに参加するのは今回が初めてだった。

アテンドしてくださったのは加藤肇子さん。
加藤さんのおかげで地域ならではの魅力を一段も二段も深く知ることだけでなく、1人で訪ねただけでは出逢えない素晴らしい方々と出逢う機会があった。

またこの旅のメインだったのは、「アースデイ能代」。アースデイとは地球環境を考えて行動する日である。能代では高校生が主体となりイベントを企画・開催しており、きっかけを作ったのが加藤さん、そして地域商人のテルさんだったことから、この素晴らしいイベントの内輪に入れさせていただく機会を頂いた。

このように地域を訪ね、地域と繋がることできた贅沢な旅路となった2泊3日の秋田旅を1日ずつ振り返っていく。


1日目

最初の訪れたのは太平山三吉神社。

枝垂れ桜が咲き乱れる気持ちの良い春の神社で、土地神様にご挨拶、そして旅の無事を祈る。

次に向かったのは秋田市立赤れんが郷土館。
旧秋田銀行の建物はとても立派で、昔から秋田は稲作により豊かな土地で、それにより東北地方の中でもハイソで上品な文化があったことを知る。
さらに版画家・勝平得之さんの暖かく風情溢れる作品に触れ、東北への愛おしさを植え付けていただいた。

秋田風俗十態 笹飴

その後、男鹿へ移動した。
巨大な風車の真横を数キロも走り続ける圧巻の景色を通り、まず向かったのは移住者が2021年に開業したという酒屋さん。バー&カフェで副産物である酒粕を生かしたアイスクリームとマヨネーズを購入。
そして、この旅で私が一番楽しみにしていたパラグライダーへ!!!のはずが、風が強く飛べないことが判明。
代わりに美味しい山菜の天ぷらとコーヒーをいただき、そして旅仲間たちとそして地元の経営者さんと、良い時間を過ごすことができ、気づいた時には一番の楽しみがパァになったこともあっという間に忘れてしまっていた。
むしろまた男鹿に来ないと行けない言い訳ができて少し嬉しい。

今晩の宿は、男鹿リゾートホテルきららか。

日本海を一望することができ、撮影に来ていたおじさんとちゃっかり仲良くなったのも
良い思い出。

夕食には、秋田の海産物や春野菜を贅沢にいただいた。
夕食でご一緒した、お二人は男鹿の街でも重要な方々でありながら、物腰が柔らかく、私もそうありたいと思った。
何よりも印象に残ったのは、お二人による食後のパフォーマンス。街ぐるみで子育てをすることを目指し、自分ができること思案し子供達を楽しませているそう。今宵はルーレットくじ、シャボン玉と紙芝居で楽しませてくれた。そしてメインパフォーマスは、見応えのあるマジック!暖かな笑いに
包まれるひとときとなった。

やっぱり、笑いは良い。お二人が体を張って人の心を温め、場を笑いに包む姿に感動する初日であった。

2日目

朝風呂を楽しんでホテルを出発して初めに向かったのは、道の駅オガーレ。到着すると朝9時前だというのに駐車場は車が溢れていた。
理由はそう、激安、新鮮のお魚!
母ちゃん世代は大喜びで箱いっぱいに魚を購入。夕食でお会いした社長さんとも再会し、一緒にブルネイへ行くことを約束した(つもり)。次にスーパーセンターAMANOに寄り、さすがアメリカ仕込みだというその規模と品揃えに一同びっくり。

次はこの旅のメインイベント、アースデイ能代へ。市役所を会場に開催されていたイベントでは、ドラムサークルやフードトラックなどイベントらしい楽しい催しに並び、絵本、おもちゃの回収、伐採された枝を使ったボールペン作りなどサステナブルな社会作りに貢献するアクティビティが準備されていた。
私も高校生の頃から環境問題に関心があったが、アースデイという取り組みも知らなかったのでこうして街を巻き込む高校生たちがかっこうよかった。

今日は1日盛りだくさん!
秋田杉を使用し、国登録有形文化財に指定されている旧料亭の金勇を訪れたり。

自然の産物である木の美しさとそれを美しい建築物にする日本の匠の技を見物。


バスケットボールミュージアムでは、30年に渡り、能代高校でバスケ部のコーチとしてたくさんの人を指導した人格者、加藤廣先生の背筋の伸びるご活躍を受付の方が丁寧にお話ししてくださり、目頭が熱くなるのを感じる。

その後、アースデイ主催者の営むコミュニティカフェやなんともほっこりする「はかり専門店」を訪れる。

はかることの幅広さ・深さを感じられた。

銘酒・山本酒造の素敵なカフェで日本酒を嗜み…

滅多に入ることのできない酒蔵見学へ!


そして夜は能代の街のスター方、議員、協力隊、地域商人メンバーの大宴会!
能代代表の地域商人であるNさんの愛され女帝ぶりが良く感じられる会。
個人的に大人の輪に入ってお酒を楽しんだり、話をしたりすることに慣れてきたことを感じられたのが嬉しかった。
そして夜は加藤さんと二人部屋で彼女の大切にしていることや、これまでの活動、そして課題など様々なお話をすることができた。

3日目

二泊目の宿泊は、八森いさりび温泉ハタハタ館。朝食では地域商人のグッズ制作話で盛り上がり、家紋ならぬCo紋を作る提案をして褒められ嬉しくなる(笑)。

その後浜辺へ向かい、アースデイの一環として海岸清掃。
参加者は昨日の宴会のメンバーに加え、能代高校、松陽高校の生徒たち、そして個人的にゴミ拾いしてきたという親子まで。
何気なく「歳が近いから仲良くして」という一言から緊張も解け、21歳に見えな〜い!といじられるのが嬉しい年頃なのだと実感する。

お昼ご飯のために閉校した木造の常盤小学校にてだまこ作り。

鶏肉の出汁のきいた甘めの汁にだまこ、金柑、舞茸、油揚げなどが入り箸が止まらない。


指導してくださるのは、みんな大好き、地元のおばあちゃん。お米を半殺しまで潰し丸めて鍋に入れるだまこ鍋の美味いのなんの。だまこを作るおばあちゃんは初めて勇ましくかっこよく見えた。

楽しい、美味しい=幸せな昼食後は、アースデイを振り返るワークショップ。自己紹介やチームビルディング、アースデイを振り返ったりと能代の方々との気楽な交流が楽しい。

旅が終わりに近づくのを感じながら、ふと自分の中で内省が始まる。

この旅では、何気ない時間を尊敬する生き方・働き方をする方々と共有したり、新しく人との出会いを通して、自己紹介をしたり、関係を気づく中でこれまでの自分の在り方が映し出される体験があった。

その全ての瞬間、私は生き心地が良かった。
私が私らしく、時には頑固に信念に従ったからこそ、尊敬する方々と過ごし、秋田の素晴らしさを味わい、さらにエネルギーを満たされる体験ができている。

そしてアースデイを作り上げた高校生たちにも、自分らしく生き生きと輝いてほしい、と無性に伝えたくなってきた。
理想と現実に揺さぶられ、社会の中で自分の道を見つけ出すことの難しさをつい昨日のことのように思い出せる私だからこそ、伝えたいことがあると感じていた。

ツアーは、オンラインでの繋がりのある仲間たちならではのあっさりさで締めくくられた。また日本各地から顔を合わせる日がそう遠くないことが嬉しい。


実は、節約のために往復ともに仙台経由で訪ねた秋田。
バスで翌日、仙台に向かうまでに、秋田市で過ごす時間があった。

だまこで、まだお腹いっぱいなので、夕食の時間をカフェで過ごそうとGoogle Mapでしっくり来たお店に向かう。
するとなんと!秋田でずっと目当てにしていたババヘラアイスのカートがポツンと立っているではないか!

しかも男鹿の塩を使った特別なフレーバー。

通り過ぎた地元民も初めてここで見たという。秋田弁で、秋田へ嫁に来い、とおばあちゃん達にナンパされながら、秋田への愛おしさが込み上げてくる。

予想外の強運ぶりにホクホクしながら、カフェへ向かうと、それらしいビルにスパイダーマンが張り付いている。

(はて、これはだいぶぶっ飛んだ店主だな)と思っていると、どうやら隣は家具屋らしい。センスのある雑貨が雑多に置かれた入り口の奥には上へ向かう階段が続き、「動くもの全て売り物です」と意味深なコメントが。

気づいたら自分に微塵も関係のないお店へ吸い込まれて行っていた。
店内に入ると、再生可能なジュークボックス、子供用らしい黒い革張りの椅子、壁には巨大カーペットが掛けられ、なんとも愉快な優しい雰囲気だった。さらに奥に進むとウィリアム・モリスのデザインのポスター、可愛らしいマブカップ、心豊かになりそうな本までセンスが良すぎる。

(あ、そうだ、明日からお世話になるあの子にプレゼントを贈ろう)そう決めた。店内をもう一周し、マグカップに決めてレジへ向かう。

プレゼント仕様に包んでもらっていると「何か言葉を入れますか?」とお姉さんに聞かれる。「では〇〇へ、でお願いします」と友人の名前を言うと、お姉さんがフリーズした。(え、名前を入れるってセンス悪すぎたか…!?)と少し焦っていると、「私も〇〇って言うんです!!!」と顔をキラキラさせるお姉さん。一気に打ち解け、話しているとお店のコンセプト作りから内装、入荷まで全て行っているというスーパーお姉さんだった。

旅先で、とても心にのこる人に出会うのはこれで2度目。以前、京都を訪れた際に転がり込んだカフェのお姉さんから始まったご縁は、今も時々思い出しては善き人であること、シンプルな喜びを思いだすきっかけとなっている。

この旅の最後に何気なく入ったお店のお姉さんに心を掴まれた。きっとこれからも、このお店独特の温かさが恋しくなるだろう。

終わりに

男鹿、能代、秋田は、絶対戻ってきたい。
そう思える a special place in my heartを持つ場所となった。

「ここじゃないと味わえない幸福がある」
そう思える場所を持つことで心がなんだか大きくなった感覚がする。

いつか地球をすっぽり覆うくらい大きな心を持ちたいな。

それが自分にとって旅をする理由なのかも、ともうすぐ始まる長い長い、諸国漫遊の旅を前に感じることができた。


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