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最上の理想の空へ

割引あり


 序言 

この記録を手に取った読者諸氏にまずは感謝致します。この私の記録は、私の経た特別な経験を記述した物であります。この記録は必ずや諸氏を大いに楽しませるでしょう。この中には、記述する私及び記述される人間の活躍が記されています。その時その時における迷いや悩み、痛み、そして達成、これを描き取っています。私はそれをもう、人に何憚る事なく記述仕切れました。この記述を記し終えた今、私はある種の恍惚に浸っています。 

人間よ! 

今私は自分の心の中で人類に、民族に呼び掛けています。一人の人間がここまで出来たぞ!私は人一人に許された限り有る力を全て使いました。成し遂げた事業は私の当初に予測していた成功より遥か大いなる物に仕上がり、そして私個人の掌から離れました。私はその私の元から独立した事業の姿を遠くから眺めて、寂しさと自分自身への確信の混ざった感情で、この地で日々を送っています。 

私の仲間達、彼らはもう私の側にはいません。私は大事業の後、一人この海が近い家で日々を過ごしています。私は彼らと会いたいと強く思っています。ですが、私は彼らを失ったのです。しかしその当時の事を記述していた時、彼らの存在をすぐ側に感じていました。失った、というと彼らは皆死んでしまった様に受け取られてしまうでしょうが、彼らは健在です。しかし私と最も近かったその当時の彼らではありません。そんな彼らを私はもう必要としません。そして彼らもそうです。彼らも私を必要としません。現在は現在なのです。 

私は殆ど永遠に近い時間を眠りに費やしています。私にはそれが必要なのです。この記述に使った精神的労力を回復させねば、新しい段階に進めないのです。私はまた更に新しい段階へと進むのです。 

時に詩歌など創作します。これまで出来なかった事です。何故だか詩歌を作っていると心が休まります。詩歌を作りそれを書き取っていると喜びを感じます。私は私の詩歌が私の血肉を削って生まれた精霊の様に感じ、それらが私の回りに漂っている事を強く感じます。私の身体はあらゆる意味で生産を止めてはいません。私はその精霊達と共にこの記述を進めたのです。 

この記述にも、その精霊が各行間に遊んでいる事でしょう。 

『眠りから覚め、全ての人間の先を行くのだ』 

 

大場治人 手記 


1、起源 


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