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選択的P2X3受容体拮抗薬 リフヌア錠:ゲーファピキサントクエン酸塩

新しい機序の慢性咳嗽治療薬

咳嗽で悩まれている方が多い一方で、既存の咳嗽治療薬は、効果が曖昧なもの、便秘や眠気の副作用が鎮咳作用のメリットを上回ってしまい兼ねないものが多く、選択肢が十分とは言えませんでした。むしろ、これらの薬剤より「はちみつ」のほうがリスク・ベネフィットのバランスが良いかもしれません。(注:1歳未満の乳幼児にはちみつは禁忌なのでご注意!!!)

ゲーファピキサントは気道の迷走神経のC線維上にみられるP2X3受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽を抑制します。
C線維は炎症又は化学刺激物質に反応して活性化され、ATPは炎症条件下で気道粘膜細胞から放出されます。細胞外ATPのP2X3受容体への結合は、C線維による侵害シグナルとして感知され、C線維の活性化は、患者が咳嗽の衝動として感じ、咳嗽反射を惹起させます。P2X3受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の遮断により、感覚神経の活性化及び咳嗽が抑制されます。

有効性

添付文書にPhase3が2つ掲載されています。
ゲーファピキサントを52週間投与したデータを用いて、
投与開始後12週間後と24週間後をそれぞれエンドポイント、
咳嗽頻度の低下をアウトカムとしてます。

国際共同第Ⅲ相試験(027試験)
ベースラインと投与12週時の咳嗽頻度の比(95%CI)
ゲーファピキサント群:0.38(0.33~0.44)
プラセボ群:0.47(0.41~0.54)

プラセボ群に対する相対減少率(%)(95%CI)
-18.5(-32.9~-0.9)

海外第Ⅲ相試験(030試験)
ベースラインと投与24週時の咳嗽頻度の比(95%CI)
ゲーファピキサント群:0.37(0.33~0.41)
プラセボ群:0.43(0.39~0.48)

プラセボ群に対する相対減少率(%)(95%CI)
-14.6(-26.1~-1.43)

安全性

味覚不全(40.4%)、味覚消失、味覚減退、味覚障害、悪心、口内乾燥(各5%以上)、下痢、上腹部痛、消化不良、口の感覚鈍麻、流涎過多、口の錯感覚、上気道感染、食欲減退、浮動性めまい、咳嗽、口腔咽頭痛(各5%未満)が報告されている。特に味覚関連の副作用(味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害)の発現頻度は63.1%であるが、大多数は薬剤投与後9日以内に発現し、軽度または中等度で、薬剤投与中または投与中止により改善し、この味覚関連の副作用は曝露量依存的に増加する傾向にあることに注意が必要。

腎排泄型の薬剤であり、腎機能障害者では腎機能検査を定期的に実施することが望ましく、重度腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73㎡)で透析を必要としない患者では、1日1回45mgで投与する。

透析患者さんに対する適正な用法用量は不明です。

医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「尿中の結晶性異物に起因する腎障害」が挙げられています。

薬物相互作用については概ね問題ない様子です。

雑感

本剤の臨床試験における組入基準は

咳嗽が1年以上継続している治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者です。

治療抵抗性の慢性咳嗽とは、
咳嗽に関連すると考えられる原因疾患(喘息、胃食道逆流性疾患、又は上気道咳症候群等)の適切な治療を受けているにもかかわらず継続する咳嗽と定義されました。

原因不明の慢性咳嗽とは、
十分な臨床評価を行った結果にもかかわらず、関連すると考えられる原因疾患が示唆されない咳嗽と定義されました。

また、胸部X線又は胸部CTスキャン上に慢性咳嗽に対して大きな影響を与えていると考えられる異常又は他の重大な肺疾患が認められない患者を対象としました。

つまり、一般的に慢性咳嗽の原因になる疾患を除外した上で1年以上咳嗽が持続している患者ということです。

不思議なことに、プラセボ群の患者においても咳嗽頻度の低下を認めており、ゲーファピキサント群と大差無いようにも見えます。

あとは、味覚障害の頻度が高いですね。主に苦味、金属味及び/又は塩味としても報告されており可逆性とのことですが、QOLが大きく低下します。

重要な潜在的リスクの「尿中の結晶性異物に起因する腎障害」については、発症頻度にプラセボ群と差が無いようにも見えるので経過観察です。

個人的な見解ですが、慢性咳嗽に対する対症療法として使用するには
デメリット>メリットかなと考えます。

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