見出し画像

お店の再始動は、わたしの再始動でもありました。

再始動のはじまり

「定例ライブのネーミングを考えてくれないかな?」

それは仕事でお付き合いのあるYOSHINO氏からのメールで始まりました。

話を伺ってみると、
富士宮市にあるカフェHOUKI Living(ほうきリビング)定例の夜間ハウスライブを始めることになったので、ライブイベントそのもののネーミング、その他もろもろのコピーを考えてほしいとのことでした。

HOUKI Living↓

数年前にオーナーのTacacoさんが始めたそのお店は、旦那さんのご逝去により、ある転機を迎えます。

売り上げの柱は飲食と音楽イベントの二部門。
とりあえずランチ営業をやめて、事業をスリム化しましたが、コロナ禍でハウスライブの開催が困難という厳しい状況だったのです。特にバックアップ役として旦那さんの存在が大きかった音楽イベントはTacacoさんひとりで回すにはかなり大変だったようです。

しかし、コロナ禍が終息に向かい、もともと旦那さんと二人でやりたかった音楽イベントの場としての新たな一手を考えていたころ、地元のウェブデザイナー兼ミュージシャンのYOSHINO氏と出会い、先述の定例ハウスライブを企画するに至ったのでした。

お店は市街地の一角にある住宅地の奥。
いわゆる袋小路となっていて、飲食店の立地にはちょっと不利です。
でも、隠れ家的な面白さもあるので、ディープな固定客さえ獲得できれば、逆に有利に働きそうです。

オーナーの想いをお客様に伝えたい

Tacacoさんからは、音楽への想い、お店への想い、そして旦那さんへの想いについて、ヒアリングさせていただき、色々と迷いはあるものの、これからは自分の店として再び盛り上げていきたいとの強いお気持ちを知ることができました。

コピーの納期は2週間。
思えば大変な依頼を引き受けてしまいました。小さなお店とはいえ、オーナーの人生と財産がかかっています。

わたしは地元の企業を支援する立場にありますが、広告会社の社員ではありません。つい最近、コピーライターとしての基本的な学びを終えたばかり、とはいえ誰かのお役に立ちたい気持ちもあり、タイトル、キャッチフレーズ、ボディコピーの制作にとりかかることにしました。

もちろんフィーなんか要りません。わたしを信じていただけるクライアントのお気持ちが原動力なのです。

制作にあたって大事にしたことは、ご夫婦のこと。
お二人の名前
旦那さんから「宝」
奥さんから「貴」
それぞれ一文字ずつとったHOUKIの店名。
そして、二人が大切にしてきたお店と音楽。
制作のセオリーにのっとって、この二つを外さないように考えました。

以下、制作メモです。


そもそも、自分はこう問いました

  • なぜ、この店は客から愛されているのか?

  • どのような店になってほしいと、皆に思われているのか?

  • ほかの店で代えることはできないのか?

  • この店は今後も継続できるだろうか?

  • 旦那さんの思いはどのようなものだったろうか?

たとえば、自分はこう思いました

  • 人はつながる相手とつながる場所を必ず求めている

  • 大規模なライブ会場ほど、醒めている自分

  • 耳栓やダイブはもう卒業

  • 地方都市でハウスライブを楽しむ環境はとてもレア

  • 店を続けるには動機だけでなく、「仕組み」が要る

つまり、自分はこう目をつけました

  • この店の立地は不便だけど、かけがえのない場所

  • 客の気持ちは存続してほしい、楽しみたい・共感したい

  • オーナーは独りではなく、あの人や客と常に一緒だ

  • オーナーと客の想いも一緒だ

  • 音をよりしろに、皆で何かを創る、いつもの場所として

そこで、ネーミングを考えました

  • 日本語で表現する

  • コピーには話し言葉のように「、」「。」を入れる

  • 名前から一文字ずつとった宝貴(HOUKI)のフレーズを大事にしたい

  • 宝貴には中国語で「貴重な」の意味も

  • 他の日中イベントに転用不可能な唯一のフレーズ

  • 夜会とは、社交を目的とした、夕食後に開催される会合や宴


ネーミングとキャッチコピーはほぼ同時進行。
コピー案を考えていくうちにネーミング案が収れんしてゆきます。

コピー案は100本欲しい所でしたが、わたしのウデでは60本ほどが限界。
それでもそれらを携えて、一週間後、YOSHINO氏立会いのもとTacacoさんへのプレゼンに臨みました。

その結果、生まれたイベント名が

「宝貴の夜会」(ほうきのやかい)

なのでした。

続いて、Tacacoさんにコピーを2つ選んでもらい、そのまま採用していただきました。
採用されなかったコピー案は1週間かけて私が再編集の上、ボディコピーとしてまとめ上げることになります。

「ベタな作品でごめんなさい」
「泣いちゃいそうだよ」

横で聞いていたYOSHINO氏の声をうけて、内心ホッとしました。
お世辞でもうれしかったです。どうもありがとう。
制作した全てをお渡しして、とりあえずは納品完了です。

バージョン1
アートディレクションはYOSHINO氏
バージョン2

いよいよ開演

1月27日の夕刻、Tacacoさんにお招きいただき、第1回「宝貴の夜会」へ。
20人も入れば満員のかわいらしいライブハウスです。
おお、すでに満員御礼です。
一足早く一杯入ってご機嫌の女性たちは次々にお酒とおつまみをオーダーしてます。
これにはTacacoさんも大忙し。

制作したタイトルとコピーがムービーのスタイルでステージ壁面に投射され、いい感じ。
でも、ちょっと照れくさい。

今回のアーティストはrêve
なんとYOSHINO氏がメンバーでした。

メンバーは
Gt. YOSHINO
Ba. KOSHIRO
Per. TAKAYA
ゲストにTedd 加藤ハープのブルースハープ。

ROCK&BLUES を愛するヤツら。
60~70年代の洋楽ロックをアレンジした3ピースバンド。
静岡県内を中心に都内~神奈川~山梨とウロチョロしている。
と自己紹介。
うはは~シブいです。

右がYOSHINO氏

セトリは

【1部】
Cross Roads
Route66
No woman no cry
Stand by me
Knocking heavens door
Change the world

【2部】
Every Breath You Take
Imagine
Have You Ever Seen The Rain
Sittin On The Dock Of The Bay
Bring It On Home to Me
Wonderful tonight

【アンコール】
Bell bottom blues
I so her standing there

馴染みの曲&アコースティックなので、聴きやすく、
最終曲はスタンディングで皆さんノリノリでした。

最後にTacacoさんからの決意表明があって、お開きの流れに。
一番奥で聴いていたTacacoさんのご両親もうれしそうで、なによりでした。

さて、気になっていた興行収入ですが…
相当の売り上げがあったと聞きました。
とりあえずヨカッタ。

最後に

私の今年の目標は「クリエイティブの話がわかる中小企業診断士になる」こと。
人生のセカンドステージに入って、多少まごついた時期もありましたが、様々なご縁を得る中で、新たな道へ踏み出すことができました。

どうやら、HOUKI Livingの再始動とあわせて、わたしの運命の輪も動き始めているようです。

がんばって、オーナーのTacacoさん。
どうもありがとうございます、皆さん。

この記事が参加している募集

ライターの仕事

はじめての仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?