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インターネットに載っていない人や地域活動は存在しない?僕らが九州の文化ツーリズムをやる意味。

地域文化をつないでいかなければ未来はない!

なぜ地域の文化資源を残すことが重要なんでしょう?何度も何度も考えます。いまだに答えは出ていないですが、ここはあえて言い切ってみたいと思います。ネイティブな(固有性を持った)地域文化・文化資源が残っていない地域は、今後アイデンティティを失い、地域として弱くなっていきます。土地の文脈を解釈し、未来へつなごうと意思を持った人がいる地域に人は訪れ、暮らし、文化と生活をつないでいきます。

僕自身、地域文化、または文化資源というものに憧れや強い想い入れがあるからこう言うのではなく、危機感からこれを強く感じ、断言しています。地域にずっと住んでるものとして、自分事として、地域文化をつないでいかなければ未来はない、だから行動しなければならないという使命感を抱えています。

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お店・ツーリズムなど地域文化に関わるきっかけと経緯

僕自身の経歴を少し記すと、18歳まで佐賀で過ごし、大学は大分、その後福岡で仕事をし、今商いをしている福岡県南部の筑後地方に住み、暮らしました。仕事をはじめるまでインターネットと本の世界しか知りませんでした。大学時代、デザインや建築、工芸や民芸などに出会い、学び、東京やメディアに出る正解こそが全てと思い過ごしてきました(なんて浅はか)。

福岡に越して、とあるきっかけで筑後地方の事業に関わらせてもらい、養鶏場や果物農家、石鹸をつくる工場や、久留米絣の工房、有明海の海苔漁師の方や、それを加工して飲食店を営む人。農業・工業・商業、さまざまな方々に出会い、「インターネットや本に載ってない魅力的な人たちがたくさんいる!!」と気づきました。彼らは有明海という海、耳納連山や筑後川、そして阿蘇山の噴火など、地域の歴史や文脈を受け継ぎながら、また家業を背負いながら、地域文化の一端を担い、その風景をつないでいます。20数年九州という地に住んでおきながら、このような方々の存在に全く気づかなかったのです。

東京やインターネットの中に出てくる有名人、本を書いている人に出会う機会もありました。だからこそ、この地域で風景をつないでいる人たちに出会うと「なぜ、このような活動をしている人たちのことが知られていないんだ?もったいない!そしてなによりおもしろい!!」と、いてもたってもいられなくなりました。

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物を売るだけじゃ、伝わらない地域文化の価値

2012年僕らは、九州ちくごのものづくりのアンテナショップ「うなぎの寝床」を立ち上げました。まずは物を通して地域文化やつくりてのことを知ってもらおうと。そして、看板商品に成長した久留米絣のMONPEをはじめ、いろんなつくりてと商品開発、コラボレーションをしながら、お客さんにもその価値を伝えています。

しかし、生活者にとって地域文化は自分事にはなかなかなりません。「わー、素敵ー。」とか「つくる背景おもしろいですねー。」という言葉はいただくものの、生活者とつくりて・地域文化の距離は遠く、物の流通からだけでは、僕が体感したような「こんな魅力的な人たちの活動や意義が知られてないなんてもったいない!!」という感動と驚きのようなところまでは伝わりきれていません。そのジレンマを抱えながら5年以上過ごしました。

では、どうすればいいのか?

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答えは体感にある、文化ツーリズムの立ち上げ

2014年に、僕はある人に出会いました。イノベーションのシンク・アンド・ドゥ・タンクを実践しているリ・パブリックの田村大さんです。知り合いの紹介でふらっとうなぎに来てくれて、連れのKさんと一緒に3人で意見交換をしました。その後、佐賀県の伝統工芸PRの事業・「ニューノーマル」(今となっては先駆的なプロジェクトネーム。笑)を一緒に取り組みながら、今後の地域やものづくりの現場に何が必要なのか?という議論を2年ほどかけて進めてきました。

議論の先に出た答えは、つくりてや地域文化側の商品やブランディングも必要だけど、生活者側の行動や意識を変えていく必要があると、生活者の行動が変われば、逆につくりてや地域文化側の意識やモチベーションが変わっていくのである。という結論でした。

そして、僕らは共同でUNAラボラトリーズという会社をつくりました。九州の文化ツーリズムのプラットフォームです。

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九州には魅力的な人と文化が多く存在する。その体感価値をあげ、つなぐ。

UNAラボラトリーズには3つのミッションがあります。

1_九州の文化の研究とリサーチ・編集を独自の視点でおこないアウトプットします(トラベルマガジンTRAVEL UNAの刊行)

2_ものづくり、まちづくり、食、風習、自然、知恵あらゆる九州の文化の体験・体感価値をあげます(九州のツーリズムプラットフォーム形成)

3_地域文化を点で捉えるのではなく面で捉え、滞在型文化ツーリズムを実現します(宿と地域滞在型文化ツーリズム)

僕らは、地域文化の体感価値を上げるべく、3つのミッションに合わせた事業を展開します。2019年に会社を立ち上げ、ただいま醸成中です。

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1つ目、TRAVEL UNAは、社内で九州の地域文化をリサーチし、テーマを決めて年に2回、トラベルマガジンにして刊行します。僕らはただ訪れて消費される観光ではなく、地域文化を担うつくりてと生活者が出会い、有機的に相互作用が起こるよう、僕らがテーマを決めて深く掘り下げた内容を伝えたい、知ってほしい、ここから新たな旅の体験を始めてほしいと思い雑誌を刊行しています。
https://unalabs.jp/publishing/

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2つ目、九州の文化ツーリズムのプラットフォームづくり。福岡八女で、うなぎの寝床の拠点がある場所に存在する提灯や仏壇のつくりて、神社、八女茶の茶匠の仕事などを見て体感できるツアー、久留米絣の織元を訪ね、オリジナルのストールをつくることができるツアーなど、見学だけでなく、体感しながら地域を知り、楽しめるツーリズムのスタイルを構築しています。現在八女だけでなく九州全域でツアーを造成中で、今年の春から随時リリースしていくのでお楽しみに。博多織、嬉野茶、別府アートと温泉、和菓子、染色などのものづくり、枕崎鰹節、鹿児島薬膳などなど!!
https://unalabs.jp/tourism/

※オランダのPOP UP CITYとのコラボイベントでもその一端を発表しました。
https://kyushucrafts.club

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3つ目は、地域滞在型文化ツーリズム。1と2で情報と点での体感はつくれるかもしれませんが、じっくりとその地域を堪能してほしい。文化は1日でもちろん理解できるわけもなく、滞在型で感じてほしいという想いがあります。僕たちは株式会社NOTEさんと協業し、八女にNIPPONIA by Travel UNAという宿を2棟3部屋で準備中です。2021年8月にオープン予定です。この宿では、つくりて、お店、食を八女という土地の文脈で結びつけて、面としての文化体験価値を編んでいきたいと考えています。

そして、もうひとつ重要な点として主な対象を海外の方にすること。なぜかというと、地域には外からの視点や意見が圧倒的に足りていないからです。そして、地域を全く知らない人たちにどう伝えていくのか?という前提で、いったんゼロから、その土地ならではの(唯一無二の)魅力や可能性を掘り下げてみるのは、今の地域にとって重要なことです。日本文化に興味がある海外の人々を対象にしながら、地域文化を編み直してプログラムを醸成します。こうやって「外の視点」で作り込んだプログラムですが、もちろん日本人にも体感してもらいたいと思います。

2019年の7月に会社を立ち上げ、半年間準備を進めて、リリースをはじめようという時期に新型コロナウイルスがやってきました。出鼻をくじかれた気持ちでしたが、この期間にしっかりと議論してリサーチして、前に進めることができているという実感があります。繰り返しになりますが、文化ツーリズムは短期的な消費観光であってはならないと思います。脈々と続いて来た地域文化を磨き、体感価値を上げて生活者もともに自分事として育てる活動はまだはじまったばかりで、僕たちはその一翼を担いながら少しずつリリースをしていき、大切に育てていこうと思います。九州の文化が顕在化し、輝きを放ち、より多くの方々に伝わるように。

2021年もどうぞ、よろしくお願いします。

UNAラボラトリーズ 共同代表・うなぎの寝床代表 白水高広

本質的な地域文化の継承を。