RED DSMC3 カメラの基礎知識<第4刷>
RED の第4世代モデルとして話題の KOMODO 6K、V-RAPTOR ST は、これまでのモデルと何が違うのか? RF マウント、Wi-Fi 映像出力、新基準の圧縮率 xQ など、最新情報を交えながらその性能を掘り下げていきます。
以下の動画では、RED Digital Cinema 代表の Jarred Land 氏が DSMC3 に関する Q&A に応じる様子を見ることができます。
1. DSMC3 とは?
これまで 10 年以上に渡り、RED Digital Cinema 社は「DSMC(Digital Still & Motion Camera)」という設計思想をもとに、小型でハイスペックなカメラを開発してきました。その第4世代となるのが、2020 年発表の KOMODO 6K、2021 年発表の V-RAPTOR ST をはじめとする、新型の『DSMC3』設計のラインナップです。
この DSMC3 は従来のモデルと何が違うのか?
その最大の変化と言えるのが、従来のモジュール型の設計を廃止した という点です。Jarred Land 氏によると、それによりカメラの “小型化” が実現したという話ですが、Canon 以外で 固定の RF マウント を採用したカメラは業界初となります。
Wi-Fi 映像出力に関しては、専用アプリ『RED CONTROL』を使うことで、iOS、Android 端末の ワイヤレス接続によるカメラ映像の確認、カメラ設定 が可能となります。DSMC2 以前のモデルに関しては、非公式の iOS アプリ『foolcontrol』を使うことで、同じようなワイヤレス環境を作ることもできます。
この RED CONTROL ではフォーカス操作も行えますが、DSMC3 が Canon RF マウント、電子式可変 ND フィルター、USB-C 端子を採用している裏側には「すべての操作をワイヤレス環境で完結する」という、次世代の映像制作を見通した開発方針があるようです。
2. KOMODO と V-RAPTOR の基本性能を比較する
RED の第4世代モデルは、現行では KOMODO 6K、V-RAPTOR ST の 2 機種があり、2022 年には V-RAPTOR XL のリリースが予定されています。V-RAPTOR XL は、交換可能なレンズマウント、電子式可変 ND を搭載し、I/O 機能(コネクタまわり)が強化されたモデルになるようです。
販売価格を見てみると、従来の DSMC2 の最上位モデル MONSTRO 8K VV を上回る性能をもった V-RAPTOR ST が、半額以下で買えるという衝撃的な価格設定となっています。
以降、KOMODO 6K、V-RAPTOR ST の基本性能を比較していきます。
❶ ハイスピード性能
両モデルの最大の違いは「ハイスピード性能」の部分にあります。KOMODO が最大 6K 40 fps なのに対して、V-RAPTOR ST では最大 8K 120 fps の記録ができます。ハイスピード撮影に弱いという点は、KOMODO を使う上での大きな制約となりそうです。
❷ イメージセンサーの規格
イメージセンサーの規格に関しては、KOMODO 6K が Super 35 規格、V-RAPTOR ST が フルサイズ規格 となっています。新型の V-RAPTOR 8K VV センサーは、従来の MONSTRO 8K VV と物理的には同じサイズ感、同じピクセル数ですが、撮影監督 Phil Holland 氏の検証によると、その性能は全体的に向上しているという話です。
❸ 記録メディア
両モデルはイメージ処理の性能が大きく異なるので、使用する記録メディアにも違いがあります。KOMODO は CFast 2.0 カード、V-RAPTOR ST はよりデータ転送速度の速い CFexpress 2.0 Type B カードを使用します。動作確認済みの記録メディアに関しては、リストを記事の最後に掲載しています。
❹ 電子シャッター
映像のブレ感をコントロールする、電子シャッターの機能にも違いがあります。V-RAPTOR が一般的なローリングシャッターなのに対して、KOMODO には RED 史上初となる「グローバルシャッター機能」が搭載されています。
ただ V-RAPTOR に関しては、センサー読み出し速度が従来の MONSTRO 8K VV の約 2 倍(8ms)速くなっているようで、ローリングシャッター現象は起こりにくくなっていると予想されます。
また RED は 2013 年に、偏光ファルター、電子式可変 ND、グローバルシャッター機能などを搭載した『Motion Mount』という多機能なレンズマウントを開発していますが、KOMODO で採用されるグローバルシャッターの技術は、これを応用したものと考えられます。
3. RF マウントの優位性とは?
RF マウントの搭載により、RED はこれまで抱えてきた弱点でもある、内蔵 ND フィルター、AF 性能の問題を解決しています。
❶ 位相差 AF の機能
Canon RF マウントの優位性といえば、まず思い浮かぶのが「AF 性能」です。Canon には世界最高峰の AF 技術がありますが、その技術(位相差 AF)を活用できるという点は大きなメリットになります。
実際に KOMODO では 2020 年発表の Firmware 1.4.0 以降で RF レンズを使えるようになりましたが、その AF 性能に関しては、Beta 版ながらまずまずの評価があります。EF、RF レンズの手ぶれ補正(IS)も機能するようです。
❷ ND 内蔵のマウント変換アダプター
2018 年に開発された Canon RF マウントを採用したレンズは、Canon 製品以外はまだ種類が少なく、マウント変換アダプターを使って EF、PL など従来のマウントに変換するのが一般的です。
RED 公式サイトでは、Canon EF-EOS R 変換アダプターも販売していますが、Jarred Land 氏によると、RED は「電子式可変 ND?を搭載したマウント変換アダプター」を開発中で、V-RAPTOR XL にはその機構を内蔵するという話です。
最近では、KipperTie 社が開発する、FSND 内蔵の回転式マウント変換アダプター『REVOLVA』も話題ですが、こうした多機能な変換アダプターを使用することで、カメラの性能を拡張できる という点もまた、RF マウントのメリットと言えます。
4. OLPF とノイズ性能に関して
RED のカメラシステムでは「光学ローパスフィルター(OLPF)」もまた、映像の品質を左右する重要な役割を担っています。OLPF の種類によりノイズ性能が変わる というのが、その大きなポイントです。
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