heldioリスナーに届けるしおのはなし#5 令和6年5月9日 玄関口の盛り塩の起源は?

 飲食店の入り口に塩が盛ってあるのをご覧になったことがあるだろう。清め用の塩ととらえられがちだが、実はそうではない、というのが一般的な見方た。取り上げられる舞台は色々あるが、ここでは中国の史実に沿ってお話しよう。
 紀元前二世紀、中国をはじめて統一した秦の始皇帝。絶大なる力をもった彼は例にもれず多くの側室を有していた。そして、日中の激務を終えた皇帝は、毎晩、牛車に乗って側室たちの家々を訪問するのが日課。当然、側室たちは皇帝にわが家に来てもらおうと、着飾ったり、楽器の腕を磨いたりしていた。が、そうした中、ちょっと知恵を絞った女性がいた。
 皇帝の乗る牛車を担当する従者に近づき、あることをお願いした上で、自宅の玄関の入り口に塩を盛って置いたのだ。するとそれ以降、皇帝は毎晩、彼女の家を訪問するようになったのだ。いったい彼女は従者に何を頼んだのか?
 その答えは…日中、牛に塩を与えないように頼んでおいたのだ。通常、牛には一日80gの塩を摂るという。それを与えなかったとしたら…盛り塩のある彼女の自宅をめがけてまっしぐら、となること間違いなし。実際に皇帝が行き先を牛の足取りに任せたかどうかは疑問だが、商売繁盛の祈願の起源をこれほどうまく説明した話はないだろう。
 ちなみに、必要な1日の塩分量は動物によって異なる。牛が80g、馬は40g、カバはなんと200gの塩を必要とするとか。当然、動物園で飼う動物にはそれに見合った塩を与えている。もっとも、塩を与えるのは草食動物だけである。肉食動物には通常、塩を与える必要はない。えっ?なぜ肉食動物には必要ないの?分からない方は#1のエスキモーを思い出していただきたい。


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