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六連島

響灘にポツンと浮かぶ島。人口約70人、コンビニや売店、病院はなく、24時間オープンしているのは自販機一台。
島と街を繋ぐ船は一日往復4便。島の人は、「ようこそ六連島へ」の代わりに「六連に何しに来たんかね」と。
島の人達が何もないことを一番知ってるし、何があるのかも一番知っている。それが住んでる人の一番の特権である。
島には、明治時代に建てられ、国の重要文化財に指定された六連島灯台や、世界に三つしかないと言われている天然記念物の雲母玄武岩などがある。
また、アルコール瓶詰めウニの発祥地であり、浄土真宗の妙高人の一人「お軽さん」が生まれ育った場所でもある。
小さな島だが色々と詰まった場所、さすが関門の離島である。
六連島は溶岩台地で水捌けがよく、肥沃な土地。そのためか漁業よりも農業の方が盛んに行われてきた。昭和の時代にはキャベツ生産で国の指定産地になっている。
現在は花卉栽培が、島の主要産業である。
名前だけでなく、歴史もユニークなこの島に一度は住んでみたいと学生時代ぼんやり思っていた。
そして今、六連島に住んで3回目の夏を今味わっている。初めての夏は、虫の声や空の色、吹き渡る風、土や海の匂い、それらに触れた時にフレッシュな感覚と自然の深さに感動したのを覚えている

六連島でカブトムシ

初めての夏で特に覚えているのは、島に住んで初めての畑仕事。
作業終わりに差し掛かった時、どこから来たのか草刈りをした畑の中から一匹のカブトムシを見つけた。

やまとカブトムシ


そのあと、鼻の近くで鉄の匂いがした。気づくと口の中も鉄の味でいっぱいだった。手で鼻から口を触ってみる。
手は赤くなっていた。鼻血だ。下を向くと鼻から赤いものがポツポツと垂れていた。
とりあえず近くの水道で顔洗い。上を向きながら、カブトムシを片手に帰った。
カブトムシに興奮したのか、単純にのぼせたのか、鼻をいじりすぎたのか、原因を考えながら、上を向いて帰った。

途中、後ろの方から島の人が原付バイクに乗って僕の少し前に止まって声をかけてくれた。事情を話すと、タオルを渡してくれた。「あんまり無理しちゃいかんよ、ぼちぼちやりゃええ」と温かい言葉を頂いた。感謝の気持ちと共にいろんな気持ちが湧いてきた。島の人からはヤバいやつが来たと思われたかもしれない。島に来たばかりの人間がカブトムシに片手に上を向きながら坂を降っているのだから。上を向きながら坂を下るのも、めちゃくちゃしんどかった。コケるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。どこを歩いても坂だった。この島は坂が多い。山のような地形をしている島は、どこに行くにもだいたい坂を通る。そのため島の人の移動手段は基本的に原付バイクである。そんな坂の多い六連島で、自分が個人的に好きな坂を次回は紹介したいと思う。


六連島、夏の空

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