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書評『アリス・エクス・マキナ』

(初出 2014年「宝島」)

 ロボットが身近になってきた。
 今年の5月、ソフトバンクが人工知能(AI)を搭載した120cm程度の人型ロボット「pepper(ペッパー)」の発売を発表したのは記憶に新しい。
 6月には東京の科学未来館では人間そっくりの、「コドモロイド」と「オトナロイド」という遠隔操作型アンドロイドがコミュニケーターとして就任。
 これ、ぼくも見に行って来たのだけど、仕草や話し方などものすごい自然で、遠目から見ると普通の人間にしか見えなかった。
 ついに人型ロボットが携帯みたいに普及する未来が来るのか!?
『アリス・エクス・マキナ 01』は、〈アリス〉と呼ばれる高性能アンドロイドが社会進出したいまよりちょっと未来を描いた作品。
 主人公の職業は“調律師”と呼ばれる、人格プログラム改修を行う、いわばSEみたいなもので、〈アリス〉たちが動く仕組みや感情のからくりも把握している。にも関わらず、突然あらわれた幼なじみそっくりの〈アリス〉「ロザ」に心を乱されていく。果たして彼女が現れた理由とは……。
 同テーマ作は長谷敏司『BEATLESS』や瀬名秀明『デカルトの密室』など、優れた作品が多い。本作がそれらに比して抜きん出ているのは、日常感。
 あくまで〈アリス〉は生活に密着した存在で、主人公も仕事として彼女たちに接する。
 AIに対する個人の感情を掘り下げるという点では、先日公開されていたスパイク・ジョーンズの映画『HER』とも近いかも知れない。あわせてぜひ。

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