四季

読書と乙女ゲームとラジオが好きです。

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最近の記事

君死にたもうことなかれ(2024年6月1日(土)の300字小説)

 弟が半年間アメリカに留学に行く。  年が近いので喧嘩ばかりしてきた。高校生になってそんなに口をきいていない。それでも、荷物を詰めている背中を見ると寂しいなと思った。 「ニューヨークは物騒だと思うから、気をつけるんだよ」 「分かってるって」 「お土産は、ニューヨークチーズケーキがいいな」 「覚えてたらね」  弟はいつの間に私の身長を追い越していた。 「姉さんも、父さんと母さんをよろしくな」 「うん」  真正面に弟を見るのは何年振りだろう? 「ホント、マジで危ないことには気をつ

    • 一人寝の夢(2024年5月31日(金)の300字小説)

       週末の金曜日。彼氏と会う約束をしていたが、風邪を引いたので、ラインで、 『ごめん。風邪引いたから会えないわ』  と送った。 『何かほしいものはある?』という彼の返信に、 『ないよ』と告げる。実際ないものはなかったので。 『寂しいね。なんかあったらすぐに呼んでね』と返信が来たけれど、彼に移しちゃ申し訳ないので、治るまでは会わないつもりだ。  そのことを告げると、 『君は結構頑固なところがあるからな。分かった。ゆっくり休んでね』  と、来た。  彼は普段一人でも大丈夫な顔をして

      • 情けは人の為ならず?(2024年5月29日(水)の300字小説)

         風邪を引いて寝ていた。熱は37℃台だが、咳が止まらなくて、夜なかなか眠れない。おかげで寝不足だ。  会社を休み取って、うつらうつら寝ていると、ラインが来た。友達からだった。 『あとで玄関見といて。備蓄品買っておいたよ』  玄関を開けると、ドアのノブに、レトルトもお粥やポカリスエット、ゼリーなどがコンビニ袋に入ってかかっていた。 『ありがとう! 買い物行けなかったからすごく助かる』 『花が私風邪引いたとき差し入れしてくれたから、そのときのお礼だよ』  情けは人のためならず、と

        • 風邪っぴき(2024年5月25日(土)の300字小説)

          「完全に風邪引いた……」  熱はまだないが、悪寒がするので上がるかもしれない。喉が腫れて痛い。  私は早々に帰宅すると、寝ることにした。 「何か食べなきゃなあ」  買い置きがあるのは、レトルトカレーくらいしかなかった。カレーを食べる食欲はない。  せめてお粥を作ろうと、一人キッチンで鍋の前にいる。こういうとき、家族と住んでいたときは有り難かったな、と思う。  出来上がったお粥は卵を入れているが、薄味だった。  何とか食べて、市販薬の薬を飲む。必要なら病院に行かなきゃ。  ベッ

        君死にたもうことなかれ(2024年6月1日(土)の300字小説)

        • 一人寝の夢(2024年5月31日(金)の300字小説)

        • 情けは人の為ならず?(2024年5月29日(水)の300字小説)

        • 風邪っぴき(2024年5月25日(土)の300字小説)

          同僚の優しさ(2024年5月21日(火)の300字小説)

          「おはよう。今日は寒いねえ」  職場に出勤してきて、私は同僚に挨拶する。 「最近暑かったのに、今日急に冷え込みましたね」  後輩は、冬に使っていたひざ掛けを膝に掛けていた。 「いいなあ。私、もう使わないと思って持ち帰ってしまったわ」 「よければ貸しましょうか? 予備もまだあるので」 「助かる~」  ピーナッツのスヌーピーの描かれている膝掛を借りた。薄いがないよりはだいぶ暖かい。  その膝掛にお菓子のカスがくっついていて、私は苦笑してほろった。 おしまい

          同僚の優しさ(2024年5月21日(火)の300字小説)

          土曜日はパラダイス(2024年5月18日(土)の300字小説)

           天気のいい土曜日にゲームして引き篭もっているという背徳感。  ああ、外はこんなに明るいのに、私は薄暗い部屋でゲームをしている。昨日の酒が残っていて、少しぼんやりする。  なんとなくこのままじゃいかんな、と思い、玄関掃除をした。  外は暖かいを通り越して、暑いぐらいだった。  夕飯はどこかに食べに行こうかな、と考える。近くのカフェに行くか、ラーメン屋さんに行くか。  その前に書店を見に行こう。着替えて軽くお化粧をしていると、楽しくなってきた。  一人の休日、最高だな。 おしま

          土曜日はパラダイス(2024年5月18日(土)の300字小説)

          週末が楽しみ(2024年5月16日(木)の300字小説)

           帰りの通勤のバスの中で、私はお気に入りのアイドルの曲をBluetoothイヤホンで聴いている。朝聴くと会社に行くのが憂鬱になるので、帰りに聴くことを解禁している。解放感とともに疾走感のある曲が心地いい。  この時間のバスはまあまあ混んでいる。次のイオン前で人が結構降りるのでそれからは座れるだろう。  空は曇っていた。雨が降りそうな匂いがする。たしか折りたたみ傘は持っていたと思うが……。  今日は木曜日。明日頑張れば、週末になる。毎週末、あれもしたい、これもしたいと思いつつ寝

          週末が楽しみ(2024年5月16日(木)の300字小説)

          床の拭き掃除(2024年5月15日(水)の300字小説)

           そろそろ暖かくなってきたし、部屋の床の拭き掃除をやることにする。  まずは掃除機を丁寧にかけて、次に硬く絞った雑巾で床を拭く。毎日掃除機をかけていても、完全に埃は取り切れない。雑巾もすぐに真っ黒くなる。こんなに汚かったのか、と唖然となる。  綺麗になった部屋に満足して、お昼はホットケーキを焼くことにした。 「あっ」  ホットケーキミックスを床に零した。いろいろ台無しにした感じが強くて、私は笑うしかなかった。 おしまい

          床の拭き掃除(2024年5月15日(水)の300字小説)

          その体勢で寝て大丈夫?(2024年5月14日(火)の300字小説)

           仕事から帰ってくると、妻が寝ていた。ソファに深く座っていて寝ていた。  僕はそっと居間を通り、洗面所で手を洗い、寝室で着替えた。  そうしていると、妻が起きたらしい。 「あ、おかえり。お疲れ様~」 「君こそお疲れ。もっと寝ててもいいよ?」 「ありがとう、大丈夫。今ご飯あっためるね」  僕が食卓に着くと、味噌汁を盛ってくれたので、米を注いだ。おかずはコロッケだった。 「最近眠そうだね。春だから?」 「だと思ったんだけどね、私、妊娠しているみたい」 「まじ?」 「まじ」 「やっ

          その体勢で寝て大丈夫?(2024年5月14日(火)の300字小説)

          早朝の出来事(2024年5月9日(木)の300字小説)

           朝早く起きたときは、ゲームをしている。静かな部屋は今日は寒いので、毛布にくるまってテレビの前に座っている。  ふと、スマホを見たら、昨夜の履歴でラインが届いていた。昨日は早く寝たので、気付かなかった。 『明日、帰り寄っていってくれない? 野菜もらったから』実家の母からだった。  私は、『いいよ、行くね』と送ると、すぐに既読が付いた。母は何時に起きているんだ、と思いながら、再びゲームに戻った。  ゲームを終えて、朝食を取っていると、母からラインが来た。 『あんた早く起きている

          早朝の出来事(2024年5月9日(木)の300字小説)

          連休明けの食卓(2024年5月7日(火)の300字小説)

           僕が夕飯を作っていると、妻が帰って来た。今の業務形態は、僕が在宅で、妻が出勤しているので、夕飯の支度などは僕の担当だ。  妻は、しおしおの名探偵ピカチュウみたいな顔で、 「連休明けの仕事、きつい……」と零した。  僕が、 「今日は雨降って寒かったね。シチューにしたから」と言うと、心底嬉しそうな様子で、 「嬉しい~! ありがとうたっちゃん!」と、大袈裟に喜んでくれた。  そんな妻が可愛くて、僕も悪い気はしない。  妻が通勤のときに、デリシャスパーティプリキュアの音楽を聴いてい

          連休明けの食卓(2024年5月7日(火)の300字小説)

          子どもの日のケーキ(2024年5月5日(日)の300字小説)

           子どもの日の今日、予約していた子どもの日ケーキを受け取りに行った。5歳になる息子は甘いものが大好きで、きっと今年も喜んで食べてくれるだろう。  鯉のぼりの形のケーキ、息子はいつも目玉のところを好んで食べる。鰭のフルーツのところの方が美味しいと思うが、どうやら目玉のチョコレートがお気に入りらしい。 「ママのオレンジもあげるね」 「ありがとー」  夫が私たちがケーキを食べているところを写真に撮る。夫もケーキを食べたが、甘いものが不得意なので、少しだけ食べた。  来年も、その次も

          子どもの日のケーキ(2024年5月5日(日)の300字小説)

          2年ぶりのゲーム(2024年5月3日(金)の300字小説)

           久しぶりに、あつまれどうぶつの森を起動した。ゲームをやる夢を見て、なんとなくやってみたくなったのだ。  どうぶつの住民に「久しぶりー」と言われる。昔のニンテンドーのゲームは、久しぶりに起動すると冷たいことを言われた。最近は優しい。  ふと、家の前のポストを見る。貯金の利子と、母からの誕生日プレゼントが入っていた。  あと、ポストカードが入っていた。  さゆちゃんからだった。  さゆちゃんは一時期、一緒にあつ森をやっていた。最近はあまり一緒にゲームをしていない。  2年前のさ

          2年ぶりのゲーム(2024年5月3日(金)の300字小説)

          彼とコナン観に行った(2024年5月1日(水)の300字小説)

           彼氏と映画を観に行った。  帰りにマックに寄り、夕飯にする。  彼と、「去年のコナンの方が面白かったね」と笑い合う。そんな日常が、10年後に大切だと思うのだろう。  その時も隣に居てほしい、と思った。でも、上手く言葉にできないので、 「来年もコナン観に行きたいね」と私が言うと、彼も、 「そうだね」と笑ったのだった。 おしまい

          彼とコナン観に行った(2024年5月1日(水)の300字小説)

          韓流風?(2024年4月30日(火)の300字小説)

           今日からやって来たインターンの学生の男の子は、2003年生まれだそうだ。近未来だ……、と思いながらアラサーの私は対応する。 「ここまでで何か分からないことある?」 「今のところ大丈夫です」  学生さん、谷くんは私をじっと見て、 「韓流好きですか?」と、唐突に訊いてきた。 「なんで分かるの?」 「なんとなくですけど」  谷くんは、韓流アイドルみたいな見た目をしている。髪型とかちょっと意識しているかもしれない。 「谷くんは韓流っぽくてかっこいいね」 「ありがとうございます」  

          韓流風?(2024年4月30日(火)の300字小説)

          私にとっては3連休(2024年4月29日(月)の300字小説)

           世間では10連休とか言われているが、私は明日は出勤だ。3連休で多少疲れが取れたが、なかなか仕事に対してやる気がわかない。  しかし、行ってしまえば仕事をするしかないのでやる気云々ではないのかもしれない。  お風呂から上がって、炭酸水を飲みつつぼんやりとテレビを観る。普段見てないチャンネルでは、大食い対決がやっていた。 (こんなにたくさん食べて体型変わらないの、いいなあ。きっとうんこがすごくでかいんだろうなあ)  そんなことを思いながら、明日の仕事のやることをスマホでチェック

          私にとっては3連休(2024年4月29日(月)の300字小説)