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真田侑子
2023年6月27日 10:50
じりじりと焼かれるような日差しの中、僕は幼馴染のユリと夏祭りに来ていた。 夏祭りと言っても、地元の小さな祭りで、十分程度の花火大会があって数台の山車が出るくらいの、極めて小規模なものだ。本当に、大きくなるにつれて楽しめることは少ない祭り。 それでも小さなころから毎年、ユリと祭りを楽しむのが恒例行事だったので、今年もやってきたというわけだ。 高校生にもなればデートだなんだと茶化してくる同級生
2021年2月12日 09:51
色とりどりの美しいサンゴ礁の広がるエメラルドグリーンの湖に腰まで浸かって、ざぶざぶと水の抵抗に逆らいながら、湖の中心に大きく聳え立つ広葉樹の小島に歩を進めると、どっこからか赤ん坊の泣き声が聴こえてきて、私はどうしてか「急いで赤ん坊のもとに行かなければ」と急かされたような気持ちになる。 先ほどまではこの美しいサンゴ礁を壊してはいけないと、慎重に彼女たちを避けて歩んでいたけれど、どうにかして赤ん坊
2021年2月12日 09:53
蕩けるような恋をしたことがありませんでした。 チョコレートのように甘くて、時にはほろ苦い、あたたかさで溶けてしまうような恋を。 いつか運命のひとが現れるのだと、そう信じて、私は待ちました。きっと心から好きになれるひとが現れるのだと。 よくもまあ、三十も手前になるまで待ったものだと、我ながら感心します。 そうして、待って待って待った先には、運命のひとがいました。 電撃の走るような、一目惚
2021年2月12日 09:58
彼は安易に「死ね」と口にする輩が嫌いだった。 言霊という概念を信じているのだ。 良いことも悪いことも関係なく、実際に口にすることで事実になってしまうこともある。 例えば「テストでいい点を取るぞ」と目標を口にすることで気力が満ち、努力するという過程が生まれ結果的に良い点数を取れたりだとか。 「今日は悪いことが起こる気がする」と口にすることで悲観的な気持ちになり、消極的に取り組む姿勢になって
2021年2月12日 10:04
よくある話だ。けれど、つまらない話ではない。 これは、私が子供のころに体験した、恐ろしい体験談だ。 この掲示板に書き込むことで、二度と同じ過ちを他の人が繰り返さないことを願う。 〇 その年の夏も、僕は例年通り田舎の父方の祖父母の家に両親とともに帰省していた。 お盆とお正月の年二回、私たち家族は山の中にある小さな集落に集まることになっている。父の実家、つまり母にとっては義理の
2021年2月12日 11:34
一人目 三浦大助 曇りの日は憂鬱だ。 憂鬱で憂鬱で、仕方がない。 天気ぐらいで大げさな、何がそんなに厭なんだと言う者もあるかもしれない。しかし僕は「天気ぐらい」で気分が変わるのだ。変わってしまうのだ。こればかりはどうしようもないのである。「晴れない顔をしてんな」 友人はいつもそう軽々しく言ってくる。「天気が悪いからだよ」 僕はいつもそう決まって答える。 そう、僕の顔が晴れな