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【全曲解説】凵 -ukebako- 1st album「切望町」について

はじめまして、ボカロPの凵 -ukebako-と申します。
先日、ボーマス53にて「切望町」という13曲入りのフルアルバムをリリースしました。
https://ukebako.booth.pm/items/5275157

凵 -ukebako- 1st album「切望町」

自分は1リスナーとして、アルバムの楽曲解説みたいなものを見るのがとても好きなのですが、
作り手側に回ると自分の楽曲を解説するのは、なんだかちょっと恥ずかしい感じがします。

自分は毎平日の昼休みに、Xにて「しゃべりばこ」という名前でスペースを立てており、
その場にいた方に「楽曲解説とか、興味ある人多いのかな~」と相談してみたりもしました。
比較的需要がありそうだったので、やってみよう!と思い執筆に至っております。

凵 -ukebako- のX(Twitter)
https://twitter.com/ukebakop

noteを執筆するのは初めてなのですが、なるべく読みやすくて見ごたえのある感じで執筆しましたので、よければ最後までお付き合いください〜。


アルバムの概要とコンセプト

普段自分は、YouTubeやニコニコ動画・各種サブスクに単発で楽曲をアップすることが多いです。
その中で「才能市場」という楽曲があり、この楽曲をアップしてから今のスタイルが確立されたように思っております。

「才能市場」は、本アルバムにも収録されており、「才能を買える架空の市場」をテーマにした楽曲なのですが、
この楽曲を思いついたときに

「このテイストでいろんな建物や施設を楽曲名にしたら、面白いかも・・・」
「全部同じ町にある建物や施設、出来事の話で、アルバムに出来るのでは?」

と、本アルバムの制作を思いつきました。
楽曲で起こっている内容は、全て「切望町」で起こっている出来事です。

才能市場のリリースは2023年1月なので、かなり前から構想自体はあったのです。
その後に「慟哭公園」という曲を単発でリリースしたりしていますが、この楽曲のタイトルも切望町を制作する前提でタイトルだけ先に決まっていた楽曲になります。

「切望町」という町の名前を選んだ理由としては、自分は楽曲の中に「人生で感じる痛みや辛さ」「その救いとなる要素」
の両方を入れることを常に心がけているので
「幸せを切望する町」というイメージでつけています。
よって、全楽曲コンセプトはそれに沿った形になっております。

あとは、実在する町の「神保町」の響きがなんか好きなので、それに響きが似てるというのもあります。笑

01.切望第一小学校

VOCAL:歌愛ユキ
BPM:148
登場する拍子:4/4

1曲目、切望小です(長いので自分はそう呼んでます)。無色透名祭Ⅱにて初公開した楽曲です。
音楽的な面に関しては、いわゆる「ボカロっぽい」と言われるような雰囲気を目指しました。
友人のボカロPに言わせるとまだぽさは足りないとも言われてしまいましたが。。

自分はリスナーとしてボカロにガッツリハマっていた時期があまりなく、Pになってからいろいろ勉強したタイプなのでなんとなくそこにコンプレックスがあり、自分がアルバムを出したら絶対に

「俺はボカロPに、なったぞー!」

という決意表明のようなものになるような、ボカロらしい曲を1曲入れたかったんですよね。
そういった経緯で制作しはじめた楽曲です。

歌詞やストーリーの面では、どこか憂鬱で笑顔や幸せを忘れてしまった小学校、といったものですね。
この後の楽曲にも通ずる「痛みと救い」といったフォーマットを、わかりやすく伝えられれば思い作詞しています。なのであまり難しい単語は使っておりません。
また、「切望町」という町の存在をくっきりさせたかったので、町名が入る施設として「小学校」を選びました。

02.アングリーストリート

VOCAL:可不
BPM:188
登場する拍子:7/4, 3/4, 4/4

2曲目は7拍子のイントロからはじまる「アングリーストリート」。
僕の楽曲は変拍子を使っていることがとても多いので、この後も全楽曲登場拍子を書いておきます。
アングリーストリートは、帰り道にとある家から夫婦喧嘩のけたたましい声を聴いたときに思いついた曲です。
そのまま「怒りに溢れた道」の話ですね。ただ、道の名前になってるぐらいなんでどの家も全員怒鳴ってるかもしれません笑
登場する少年やそれを俯瞰する主人公は怒っているわけではなく、どちらかというと巻き込まれている感じですね。
音楽的な面に関しては、2曲目というのもあり「うけばこっぽいけど、サビにOP感や疾走感がある曲」を目指しました。
なのでサビは4拍子です。

03.才能市場

VOCAL:知声
BPM:162(126〜162)
登場する拍子:3/4, 4/4

冒頭で名前を挙げた「才能市場」です。
音楽的な面では、「Maison book girl」の楽曲にとても影響を受けている楽曲ですね。
めちゃめちゃブクガばっかり聴いている時期にできた気がします。

歌詞やストーリーの面では、Xでとある絵師さんの画像を無断で自分が描いたことにして公開している方がいたみたいな話が当時炎上していて、それを見てストーリーを思いついた感じでした。
いわゆる「ズル」はよくないしなーんも残らんよ、みたいな昔話的なストーリーです。
これは自分の経験からも言えることではありますが、結局自分の力で何でもやった方が楽しいんですよね。残るものって何もない。という僕の説教臭い考えをふわっと伝えようとした曲です。

04.ジェラシーハイツ

VOCAL:可不
BPM:178
登場する拍子:7/4, 4/4

ちょっと一風変わった曲?みたいな雰囲気がある曲「ジェラシーハイツ」です。
余談ですが、このアルバムはカタカナ始まりの楽曲は偶数のトラックとして配置しています(なんか並べたとき見栄えが綺麗なので)。
音楽的な面では、7/4拍子と4/4拍子が出てくるのですが、自分の楽曲の中ではトップクラスに自然な変拍子にできたんじゃないかなと気に入っております。
歌詞やストーリーの面は、サウンドがコミカルというかゆる~い雰囲気があったので、あまり深刻な重い歌詞にならないようにしました。
嫉妬などについて描いた曲なのですが、僕自身嫉妬心を持つことが少ない方なので、いらんいらん!そんなん捨てちゃえ!的なテイストになっており、そういう悩みを持つ人にはちょっと寄り添え切れてないかもしれないです。笑
あと歌詞に登場する「イビツモノサシ」「ブコツテンビン」は、架空の道具です。なんとなく名前が気に入ってます。

05.あなたの形が変わっても

VOCAL:可不
BPM:102
登場する拍子:4/4

「あなたの形が変わっても」は、昔書いたバラードのリメイクです。
アルバム制作にあたり、バラードは絶対に入れたかったのと、この曲を作った時組んでいたバンドが、この楽曲を演奏することのないまま解散してしまったので、いつか絶対出したかったのもあり今回収録することにしました。

歌詞に関しては、実話がモデルなのですが、モデルとなった人物の許可も取ってないのでちょっとここでは詳細を伏せさせていただきます。
強いて言うなら、「恋愛や男女関係を描いた楽曲ではない」です。

06.ロンリーツリー

VOCAL:知声
BPM:122
登場する拍子:6/8

6/8の民族調っぽい感じ?の曲です。
切望町に生えてるドデカい木の話ですね(裏ジャケットにイラストがあります)

切望町の地図

歌詞のテーマは「孤独」。
昔対人トラブルが立て続けにおこり、昔からの友人や家族に対してもなんかよそよそしくなって、軽い人間不信みたいになったことがあるんですが、その時の気持ちをこの木に託して書いております。
音楽的な面では、僕の大好きな6/8でズンズン進む感じの曲を1曲入れたかったので、採用してます。
また、今回の新曲の中ではドラムも1番暴れてる気がしますね。あんまりドラマーじゃないと知らないようなフィルとかも使ってます。

07.光芒

VOCAL:はな
BPM:143
登場する拍子:4/4, 6/8

ボカデュオにて、「文月の匣」というチームとして出した楽曲です。
ボーカルははなさん、MVイラストはとあすさん、楽曲と動画制作はうけばこという3人のチームで作りました。
はなさんのことはボカデュオ以前から知っていたので、はなさんの声や特長が活きる曲作りを目指しました。
また、作詞やタイトル決めの前に2人に楽曲デモのイメージをヒアリングしてから作詞に入ったりと、自分一人と言うより3人だからできた作品感が強いです。
ただ、楽曲のコンセプトの「痛みと救い」はこの楽曲にもあるので、アルバム収録曲として採用しました。

08.メモリア

VOCAL:可不
BPM:96(192)
登場する拍子:3/4, 4/4, 7/4, 6/8, 7/8

このアルバムの中では、最も古い楽曲です(2022年12月公開)
サウンドとして「うけばこっぽい」が初めて確立したのはこの曲だと勝手に思っております。
僕がよく使う派手なドラムパターン(一部の人はうけばこビートと呼んでます)をはじめて使ったのもこの曲。サビの部分ですね。
歌詞のテーマは「もう会えない人との決別」みたいな感じです。
祖母が亡くなった少し後に歌詞を書きました。

09.美しい墜落

VOCAL:可不, 知声
BPM:148, 100, 150
登場する拍子:3/4, 4/4, 6/8

ボカコレ2023夏、ルーキーにて発表した楽曲です。
出した時には切望町に収録することは決めてました。
歌詞のテーマは「挫折」。
挫折と墜落をなぞらえて、MVでも落ち続ける演出を入れてます。
ちなみに美しい墜落のMVには、先行して「切望第一小学校」が映ってます。

MVに映る切望第一小学校

楽曲はとにかく展開が激しく、どのセクションも自分ぽい感じがあると思ってます。
後半の4拍子のセクションがコメントでは人気でした、ありがとうございます。

10.エモーショナルチップス

VOCAL:知声
BPM:124
登場する拍子:4/4

このアルバムは、展開が激しくハイカロリーな曲が後半に多いため、1つ後半にストレートに聴きやすい楽曲を入れたいという思いがありました。それでできたのが「エモーショナルチップス」です。
歌詞のストーリーとしては、昔からの友人が急に姿を消してしまった、といったものになります。
子どものころにその友人と食べたお菓子「エモーショナルチップス」や、最後に会ったときに食べた「焼肉」など、食べ物の話が多く出てきます。作っているときにお腹がすいた記憶があります笑
僕の実話がベースになっており、実際にその友人と会うときはほぼ必ず焼肉に行っていたので、そうした経緯でこのワードを思いつきました。
音楽的な面では、先ほどもいった通りストレートな感じではあるものの、Bメロ前半~サビにかけての転調は比較的うまくいったかなと気に入っております。
また、サビメロが印象に残りやすいのか、仕事中などに最もメロディを思い出す機会が多かったのもこの楽曲でした。

11.慟哭公園

VOCAL:可不
BPM:128
登場する拍子:7/4, 6/8, 7/8, 9/4

冒頭でも少しお話に出した「慟哭公園」。
楽曲に一切4拍子が出てこない変拍子曲です。
この楽曲、8年ほど前になんとなく頭の中で作ってたんですよね。Bメロや歌詞、細かいアレンジ以外はほぼほぼ当時のアイデアです。
ただ、当時は作曲もしていなかったし(ドラムはやってました)、特に形にする機会がなかったので制作すらしてない状況でした。
月日が経ち、ボカロPとしてデビューしてから「今ならこの楽曲、形にできるかな?」と思い着手した楽曲です。
歌詞は自分の楽曲の中では暗めかなと思います。押韻も結構気にしています。
本当につらいときって、がんばれよ!って曲よりちょっと暗すぎるぐらいの曲の方が寄り添ってくれるときがあるんですよね。
そういうポジションの曲が自分にはあまりなかったので、必要かなと思い制作したのがこの曲です。

12.バケモノと花束

VOCAL:可不
BPM:150, 104.333
登場する拍子:11/8, 5/8, 6/8, 3/4, 4/4

ボカコレ2023春ルーキーにて初ランクインを果たした「バケモノと花束」です。
自分にとっては、この楽曲を作ってから友人が増えたり知名度も少し上がったので、とても特別な楽曲となっています。
楽曲としては拍子や展開、雰囲気がコロコロ変わる楽曲です。プログレですね。
また、先述のうけばこビートも出てきます。この楽曲でドラムについては褒めていただくことが多く、とてもありがたかったです・・・。
変拍子は大好きですが、いつも自然に聴こえるように心がけています。この楽曲もかなりトリッキーではあるものの、聴きやすさは常に考えながら作りました。
歌詞については、マイノリティのための歌になっております。
自分は子どもの頃からマイノリティ意識がとても強かったため、生き辛さを感じていた時期もあります。
そういう人のために、その存在をバケモノと花束という形で表現いたしました。

13.さようなら、切望町

VOCAL:初音ミク
BPM:78〜80.8
登場する拍子:4/4

アルバムを締めくくる楽曲「さようなら、切望町」です。
僕の普段のスタイルからすると、最も意外な雰囲気の楽曲かもしれませんね。ミクちゃんとアコギのみです。
切望町の駅前で演奏するストリートミュージシャンみたいな設定を思い浮かべながら作りました。
歌詞には切望町の風景や、他の楽曲で登場したものや場所が出てきます。
イメージとしては、アニメこち亀の「葛飾ラプソディー」が好きなので、そういう感じにしたいと思いこの形になりました。
コードやリズムも難しいものは使わず、転調もせず、シンプルに「いい歌だな~」ってなるようなものを目指しました。
また、出来るだけ打ち込みでも生演奏感が出るように努めております。BPMをほんのちょっとずつ上がるように設定して、走ってる感じにしてみたり。微量な設定なので、気づいた人はめちゃめちゃリズム感が良いと思います。
また、久しぶりにミクちゃんに登場していただきました。なんかこの曲は直感でミクちゃんじゃないとダメな気がしたんですよね。理想通りの形で歌ってくれました。

コンセプト的には「また辛くなったら、切望町に戻っておいで」みたいなメッセ―ジで終わりたかったのです。
切望町は、辛い時に寄り添ってくれる町。
このアルバム自体がそういう存在になればいいな~と願っております(絶対大げさですが。笑)。

おわりに

恥ずかしいとか言ってた割にはかなりの文量になってしまいました。
最後まで読んでくださった方は本当にありがとうございます。

まだまだ今後も頑張っていきたいですし、次のアルバムもまた作りたいです。
これからも応援いただけたら幸いです。

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