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長期投資の複利効果とNISAの使用例

*内容は100%私見です。資産の築き方は一つではないので、一例として読んでいただければ幸いです。このnoteは学生さんや家庭内金融教育を考える保護者さんが読むことを想定して書いてます。


はじめに

最近、妻の友人で社会人2年目の子に新NISAを使ってどのような投資信託を買えばよいか相談された時に回答として使用したメモです。インデックス投信の組み合わせ例についても後半で紹介していますが、このnoteの内容は長期の複利効果の説明に重点を置いたものになっています。長期投資を考える上で本質的に一番重要な部分です。

結論

手数料が安く分散が効いているインデックス投資信託であれば「どのタイミングで投資するか」より「長く持つ」という事の方がより重要。社会人になり最初の10年でどのように資産形成をスタートするかで人生において少なくとも数千万、もしくは億円レベルで資産形成に差が出る可能性があります。時間は一旦過ぎると取り戻せませないので、20代で資産運用を始めるのと30-40代から始めるのではかなり差が出ます(やらないよりはやった方がいいので、いつ始めても遅すぎるという事はありませんが)

新NISAの概要

  • 新NISAの年間投資枠の上限は360万円(内成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)。現在の生涯通算非課税枠は1800万円と最短だと5年で投資枠を全て使い切れます。つみたて投資枠だけを利用する、成長投資枠だけを利用する、両方の枠を一緒に使うなど様々な選択肢があります。

  • 成長枠(年間240万円)とつみたて投資枠(年間120万円)の大きな違いは投資の自由度です。成長投資枠では国内外の株式やETF、投資信託(パッシブ、アクティブ)、株以外の資産クラス(債券、コモディティ等)への投資にも使用できます。2024年1月時点では、つみたて投資枠で投資できる商品は金融庁が選別した272本の投資信託と8本のETFに限られ、長期・積立・分散投資に適し、かつ手数料の安い商品となっています。金融庁が厳選しているので、投資初心者にとっては選びやすいですとも言えます。

  • 後ほど触れるeMAXISSlimシリーズの投資信託(インデックス連動)は分散が効いていて手数料も安いので使いやすいと思います。また、eMAXISSlimシリーズは成長投資枠とつみたて投資枠のどちらからでも投資できます。

長期の複利効果の例 1:

長期の資産運用を考える上で一番重要なのは複利効果を最大限享受する事です。具体的には、新NISAの年間360万円の上限枠をできるだけ早く活用し、投資金額を積み上げ、複利効果を長期間に渡り享受できる体制を整えることです。

複利効果の例を紹介します。1000万円の元本を年間7%で30年間運用すると30年後には7612万円になります。同じ元本を同じ利回りで40年間運用すると40年後には運用資産は1億4974万円と倍近い差がでます。この差の考え方としては、最初のケースでは運用資産が30年後に7612万円になり終了しますが、40年の例では10年間余分に7%の利回りで運用できます。膨れ上がった運用資産のおかげで、最初の30年に積み上げた運用資産と同額程のリターンを次の10年で得られるようになります。20代から資産運用を始める事の最大のメリットがここにあります。時間は一旦過ぎると取り戻せないので、(他の経済条件が同等であれば)この差を後から埋めるのは容易ではありません。

長期の複利効果の例 2:

もう一つ複利効果の理解を深めるためのケースを紹介します。二人の投資家が以下のような条件で65歳まで資産運用を行うと想定します。

Investor 1: 25歳から投資を始め、毎年5000ドルを最初の10年間積立し、その後は積立を行わない。65歳まで、年間8%の利回りで40年間運用。

Investor 2: 35歳から投資を始め、毎年5000ドルを30年間(65歳になるまで)積立する。65歳まで、年間8%の利回りで30年間運用。

結果: Investor 1の積立てた元本は10年間で5万ドル。一方、Investor 2が積立てた元本はその3倍の15万ドル。どちらも年間8%のリターンで65歳になるまで運用します。Investor 1はInvestor 2の三分の一の元本しか入れてないにも関わらず、10年早く投資を始めたおかげで65歳時点での運用資産が
$787,180とInvestor 2($611,730)上回っています。長期の複利効果で、時間の経過と共に同世代でもキャッチアップするのが不可能なほど差がつく事があります。

図は借り物です

手数料の低いインデックスファンドの紹介

手数料の低いインデックスファンドの例

楽天証券が扱っているインデックスファンドを見てみましたが、やはりeMAXISSlimシリーズが純資産も大きく、手数料も安いようです。上の図でそれぞれのインデックスファンドの国・地域別投資先を比較しています。ブルーでハイライトした投資信託が手数料も低く使いやすいかなと感じました。

S&P500の商品(テーブルの一番上)の商品をハイライトしていない理由を説明します。S&P500やNasdaqなど米国の主要インデックス連動ファンドは米国に投資するには一番安くて簡単な方法ですが現時点ではいくつか注意点があります。過去15年間のパフォーマンスが先進国で突出して高く、バリュエーション指標が歴史的にも高い水準にある。米国は継続して技術革新が起きる国なので、そのまま高いまま突き抜けていく可能性も無くはないですが、歴史的なバリュエーションサイクルを考えるとここに100%ベットすることはおすすめできません。また、現在はマグニフィセントセブン(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)という7社に集中していて、以外と分散が効いていません。

eMAXIS Slim 全世界株式(通称「オルカン」)は米国以外に、日本、その他先進国、新興国なども入っているので、S&Pより分散が効いています。難点があるとしたら、(相対的に高い)米国のウェイトが6割とまだ結構高く、割安な日本への配分が5%と少ない事です。

eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)は、オルカンから日本を除いたものです。日本の投資信託と組み合わせるのに一番相性がいいと思います。

eMAXIS Slim 新興国株式インデックス: 新興国は相対的に割安ですが、中国(9% )、台湾(14%)など政治リスクが高い国が含まれているのには注意が必要です。このファンドに50-100%の資金を投資するのは個人的にはおすすめできません。

今回選んだファンドは全て「為替ヘッジ無し」です。米国など日本より高金利通貨を通して投資をする場合、両国間の金利差がざっくりとした為替ヘッジの年間コストとなります。現在の米国の金利は5.25-5.50%で日本は-0.1%なので、年間のヘッジコストは5%台半ばと大変高くなってしまいます(年間のリターンがそれだけ飛びます)。長期で投資する場合は為替ヘッジ無しを選んでください。

複数のインデックスファンド組み合わせパターンの比較

3つの組み合わせパターンを紹介します。いずれも、相対的に割高な米国株式への配分をオルカンより低めに設定し、相対的に割安な日本や他の先進国、新興国への配分を増やし、より分散を効かせた組み合わせになっています。マグニフィセントセブンなど一部の銘柄への集中が気にならず、米国株への比重を増やしたい場合は全世界株式(除く日本)の割合を増やすかS&P500連動ファンドを組み入れてみてもよいと思います。

インデックス商品組み合わせ比較(国・地域別アロケーション)

パターン1の特徴は米国の比重が31%と一番低く、日本と日米以外の先進国の割合が53%と高く、新興国(16%)へのアロケーションも高くなっています。新興国ファンドの約四分の一はテールリスク(例:台湾有事)のある中国・台湾株に投資されています(9.6%が中国、台湾が14.6%)。戦争が起きても株がすぐゼロになる事は無いと思いますが、数日で50%の暴落はあるかもしれません。中国、台湾への投資分が50%下落すると想定した場合でも、運用資産全体への影響は2%弱とリスクは大きくありません。

あえてデメリット挙げると、3つの投資信託を組み入れるので合計のエクスポージャーをしっかり把握する事が少し難しいです。また、3つのファンドでリターンが大きく変わってくる場合(例えば日本が他の2つより大きく上がる場合)、アロケーションのミックスをどこかで見直す必要が出てくるかもしれません。また、新興国のファンドは若干手数料が高いです(それでも安いですが)。

パターン2:  パターン1と比較すると、新興国が少なめでその分米国と日本+他の先進国へのアロケーションが増えています。割安だが 中国などの政治リスクもある新興国を取るか、政治リスクはより少ないが相対的に割高の米国に投資するかという好みの違いだと思います。

パターン3: パターン2と比較して、より米国偏重。新興国向けはほぼ同じ。この3つの組み合わせの中では、日本と日本以外の先進国へのエクスポージャーが一番低いが、それでも48%とオルカンに比べ高い水準であり、(マグニフィセントセブンなどのウェイトが高い)オルカンより分散も効いています。


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