氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、…

氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、大学教員を経てNPO法人あおぞら理事(多度津町)。無教会主義の吉野作造研究者。考えることと暮らしの新しい接続を試みた『暮らしを哲学する』明日香出版社を刊行。地域再生と福祉の接続を提案中。

マガジン

  • 多度津にいったい何があるというんですか?

    氏家法雄の地域再生の記録。香川県仲多度郡多度津町、芸術喫茶清水温泉、お惣菜処てつや周辺から地域の未来を考える試み。しかし、多度津にいったい何があるというんですか

  • あんときのフィルムカメラ

    最近、趣味のフイルムカメラでの撮影を再開しました。現像代が思った以上に高額なことに驚いていますが、少し古いフィルムカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。

  • あんときのデジカメ

    少し古いデジタルカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。毎週木曜日か水曜日に更新しています。

  • B面のウジケさん

    『朝日新聞』の投書欄や折々のことばに「気づいた」ことに「ツッコミ」をいれていきます。学びや気づきのきっかけを目指します。

最近の記事

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暮らしと学問 1 学問というよろこび

(はじめに)20年以上にわたって学問をやってきましたので、読書は熱心ですし、文献を読み込み、それを精査して論文書いたりしています。すると「そんなに本を読んでばっかりで楽しいの?」と聞かれますが、まあ、「楽しい」ですよね。読書したり、幅広く言えば勉強したりすることの一体、何が「楽しい」のでしょうか? そのひとつを紹介したいと思います。 どうでもいいことを「知る」こと  国語辞典編纂者の飯間浩明さんのコラム「街のB級言葉図鑑」(『朝日新聞』土曜版be連載)が面白く、週に1度の

    • 君たちはどう生きるか

      今日は多度津町立多度津中学校の第69回運動会に参加させて頂きました。 およそ1カ月前に入学された新入生の皆さまの勇姿を拝見することができとても嬉しくなりました。 テーマは、 山〜困難を乗り越えて 広がる可能性~ 校長先生はそのことを「自己実現」と表現されていましたが、中学生の皆さんと手を携えて新しい町を作っていければと思います。 今日はありがとうございました。 君自身が心から感じたことや、しみじみと心を動かされたことを、くれぐれも大切にしなくてはいけない。それを忘

      • 日常生活のなかでは、知識や教養は「役に立たない」のか?

        代わり映えのしない日常生活の中で、そこから逃げ出したくても、人間が生き物として生きている以上、代わり映えのしない日常生活の中からは逃げ出すことはできないので、できれば、なるべくそこに横たわる困難を乗り越えたいと思うが人情だと思います。 では、そこに横たわる困難、そしてその困難が、(本来的には有意味であるはずの)日常生活を「代わり映えのしない」それへとミスリードさせてしまうわけですが、その困難にはいったい、どのようなそれが実在するのでしょうか。 いちいち取り上げるとキリがな

        • 「おまえがなんとかしろ」できなければ「黙れ」

          東京大学大学院教育学研究科教授・本田由紀先生のXでの言葉が非常に得心するものでしたのでのでご紹介します。 いわく、 2000年代中盤からのバックラッシュ現象のなかで常に何かを封じ込める言説として巷間に流布されたキーワードが「対案だせないならば(黙れ)」というものです。 しかし、こうした黙れと言われる「政治への批判的意見」をつぶさに分析するならば、それは「対案を出す以前に、おかしいだろう」という叫びがほとんどであることを勘案するならば、プラトンが描写するソフィストたちが多

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        記事

          「甘えだ」「我慢しろ」という物言いには警戒したほうがいい

          生きづらさやしんどさをなんとかしたいと思い声をあげたり、悪しき慣習を批判すると、それをアシストするよりも、 「甘えだ」 とか 「みんな我慢した」 という声を抑え込んでしまう現象を、昔からよくみられたようで、古代ローマの詩人ホラティウスは、『詩論』のなかで「昔はよかった」という老人について書き綴っています。 すなわち、 「喧嘩腰で、文句を言ってばかりで、自分が少年の時に過ごした時代を褒め称え (laudator temporis acti se puero)、年下の

          「甘えだ」「我慢しろ」という物言いには警戒したほうがいい

          空き家対策に必要な視点としての隈研吾『負ける建築』

          県内空き家率最高18.5% 『四国新聞』2024年5月21日(火曜日)付報道によれば、「(香川県の)順位は全国ワースト10位」、「香川県の空き家は増え続けており、1993年の3万9400戸(空き家率10・8%)が今回は9万1千戸(同18・5%)と、30年間で戸数は2・3倍に膨らんだ」とのことです。 県内での対策事例 県内での空き家問題解決に向けた事例・施策としては、 ◆高松市 高松市は2022年度から、所有者と宅建業者をつなぐマッチング事業を始めた。市が窓口となって所

          空き家対策に必要な視点としての隈研吾『負ける建築』

          重伝建がなかったらどうなるか--廃墟になっていた

          昨日は、多度津町教育委員会の「重要伝統的建造物群保存地区視察研修事業」に参加しまして、「美馬市脇町南町」(徳島県美馬市)の重伝建の先進地を視察して参りました。 重伝建地区とは「城下町・宿場町・門前町・寺内町・港町・農村・漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存」(文化庁)するための制度で、歴史的な景観を保存しながら地域の活性化を目指す取り組みです。 美馬市脇町は、昭和63年に28番目に制定され、すでに30年以上の実績を持つ先進地で

          重伝建がなかったらどうなるか--廃墟になっていた

          腰を据えて仕事をする時間なんて最初から実在しない

          最近思うのだけれども、腰を据えて仕事をしたいと思ってもやること自体が多すぎてなかなか「腰を据える」ということがかなわないのですが、(ちょっとだけ村上春樹さんふうに言及するならば) だいたい、腰をすえる時間というものは最初から無くって、そういう時間があると錯覚しているのが人間という生き物かもしれない。むしろ、そう自覚して、眼の前の仕事に対して精確に向き合っていくほうが、人生は少しだけベターな方へ向かっていく。 なんて考えることのほうが、むしろ合理的かも知れないなんて考えると

          腰を据えて仕事をする時間なんて最初から実在しない

          「楽しさ」のために学問をしていた人=南方熊楠から学ぶこと

          書評を書いていたので痛いほど分かるのだけど、書評子にとって最も嬉しいことは、その文章を読んでももらって実際にその本を手にとっていただくことです。 これがなかなか難しいのですが、読み手に回って書評を手に取ると、2024年5月12日(日)付『四国新聞』に掲載された松居竜五さんの『熊楠さん、世界を歩く。』(岩波書店)は、その好事例で、さっそく、同書を注文してしまった次第です。 明治から戦前昭和にかけて活躍した博物学者(というのが正確であるのかどうかについてはいったん横に置きます

          「楽しさ」のために学問をしていた人=南方熊楠から学ぶこと

          人間はひとりでいるということは良くない=ゲーテ。

          本日は、こども食堂に大勢に方にお集まりいただき、また新しくご支援いただける方にもご参加頂き、本当にありがとうございました。 久しぶりに来てくれた子どもさんや、遠方からはるばる毎回来てくださる方、新しく利用される方など、本当に顔を見ると安心します。 次回もがんばりますので、宜しくお願いします。 さて、今回のこども食堂で嬉しかったこと。 ひとつは、関わりをお願いしていてそのスキルを活かしてほしいと望んでいた若者さんが、お休みにも関わらず、ボランティアさんとして参加してくだ

          人間はひとりでいるということは良くない=ゲーテ。

          「間違いについての記憶」こそ「人間の真の宝」

          個々人の有限な生を、どのように普遍的な次元に統合していけばよいのか。あるいは、個別性と共通性をどう紡ぎ合わせていけばよいのか? 現代の生という現場で格闘しながら思索を紡ぎ続けいった偉大な思想のひとりが、ホセ・オルテガ・イ・ガゼットです。 1883年の今日5月9日がオルテガの誕生日です。1955年に亡くなるまで、ふたつの世界大戦とスペイン内戦という動乱期を誠実に生き抜いたその軌跡を深く憧憬するのは、思うに僕一人ではないかと思います。 オルテガといえば、主著『大衆の反逆』が

          「間違いについての記憶」こそ「人間の真の宝」

          わからないものに囲まれたときに、わからないままにそれらとどう向き合うか

          暮らしのなかで注意深く退けていかなければならないことが2つあります。 1つはハッタリを言うこと。 1つは知ったかぶりをすること。 当たり前の基本的なルールのように聞こえそうですが、実際のところ、知らないうちにハッタリを言ったり、知ったかぶりをしてしまうことはよくあります。なので、自戒を込めてという話でもあります。 思えば、知っていることと、知っていそうだけど実際にはあまりよく知らないことを腑分けしたうえでなければ、真の知への探求は始まらないと喝破したのは、ソクラテスそ

          わからないものに囲まれたときに、わからないままにそれらとどう向き合うか

          憲法記念日に寄せて

          5月6日は、アメリカの思想家H.D.ソロー(1817年7月12日 - 1862年5月6日)の命日です。 1846年、合衆国はメキシコ戦争を始めますが、戦争に反対の立場から人頭税の支払いを拒否し投獄されたことで知られています。その思索と実践は、「市民的不服従」の思想としてガンディーのインド独立や、マーティン・ルーサー・キングの公民権運動に大きな影響を与えたことでも有名です。 人間の良心こそあらゆる外在的権威に優先されるべきという考え方が20世紀の流れを変えたと言っても過言で

          憲法記念日に寄せて

          関係人口創出の場としてのこども食堂

          今日は、多度津町のRITA学園高等学校、桃陵クリニック主催の重機体験・医療体験マルシェに出張こども食堂として参加しました。 金剛禅総本山少林寺さんの駐車場をお借りして、おはぎづくりを体験してもらいました。こども食堂を知らない方には案内となり、いつもご利用してくださっている方にもこどもの日を楽しむ体験ができたのではないかと考えています。 また、いつも親子でこども食堂に参加してくださっている遠方の方も、わざわざお越し下さいまして、ご家族でご一緒に超巨大なおはぎづくりを楽しんで

          関係人口創出の場としてのこども食堂

          等身大の人口減少対策

          自治体の消滅防げ 県内危機感対策を加速 人口戦略会議「可能性」指摘=『四国新聞』2024年5月2日(木)付。 報道では、「(消滅可能性自治体を脱却した)5市町を含む他の自治体も人口減少には歯止めがかかっておらず、各市町は地域の維持に向けて対策を加速させる」とあります。 「子ども時代に『善通寺は面白い』と感じれば、長く暮らしたくなるはず」=善通寺市 「町の事業として宅地の造成や賃貸住宅の整備を進めて定住を後押し」=直島町 若者が帰ってきたくなる工夫として「東京圏の学生が

          等身大の人口減少対策

          地域のセーフティネットとしてのこども食堂

          こども食堂ひみつきちてつやは、多世代交流型の居場所として運営しておりますが、その魅力の1つは、関わるひとのすべての活力向上につながっているというところです。 多世代ですので、小さなお子さんからお年寄りの方や保護者の方など様々な世代が集います。福祉という枠組みで杓子定規に捉えると、通常は、こどもや高齢者は、どうしてもサービスの受給者として設定され、常に受け身になってしまう感が否めません。 しかし、「かくあらねばならぬ」という外発的な規範がこども食堂にはありませんので、お互い

          地域のセーフティネットとしてのこども食堂