【詩の刺繍】愛してるけど、好きじゃない

ぬぎっぱなしのくつ下
水につけてないお茶碗

愛を誓ったあの日から
たくさんの壁を破ってきた

一緒に乗り越えたかった壁は
あなたには見えてないみたい


隣の家から聞こえる「ただいま」の声
カーテンからこぼれるオレンジ色の光

記念日に貰ったピアスを カランと棚に置く

「何時に帰る？」そう送ったメッセージは
２時間経っても未読のまま


何度も何度も許してきた
何度も何度もやり直してきた

愛をもって、広い心で、優しさを呼び起こす


怒りなんてない 悲しみなんてない

ただ目の前に一つずつ
小さなレンガが積み重なるだけ

あと数ヶ月もすれば きっと立派な壁になる

たったそれだけ
たったそれだけ


脱ぎ捨てられたくつ下をひろい

カピカピのお茶碗を洗う

水がお湯になるのを待つ前に
お茶碗を洗い終える

今日の疲れを和らげて
明日が来る前に眠りにつく

物音で起きると
疲れたあなたがソファで寝てる

今日もまた 床に落ちたくつ下を拾う

目の前に積まれたレンガが めりっと音を立てる

終わりのない感情 諦めかけた未来

「今日も、お疲れさま」
いつものセリフで　あなたを癒す

愛してるけど、好きじゃない
愛してるけど、好きじゃない