秋刀魚の味とポトフ

名作と言われている映画でも見ていないどころか、あらすじさえ知らないものが多い私。
アキ・カウリスマキ監督(この名前は正確に言えているかいつも不安になってしまう)の「枯れ葉」を見た後、小津安二郎の映画を見たことがないなあと思って、少し前に録画していた「秋刀魚の味」を見た。

古い映画、正直なところ退屈するとか、こんな話だったのかとがっかりすることがよくある。私はゲージュツカではないみたい。
いつぞや「ベニスに死す」を見たときは辛かった、こんな話とは想像すらしておらず、最後まで見るのがつらかったくらい。
だから、秋刀魚の味も、途中で退屈してしまうかもなあというくらいの気持ちで見始めたのだった。

始まりから終わりまで、美しさに魅了され続け、退屈どころかこの映画の前と後とでは「私」が変わったといえるほどに印象的だった。
住まいの様子、家具や灯りも好ましく、酒場のネオンですらいい色合い。
人の所作も、誰かを思う優しさも、きれいな空気に満たされるように感じられた。
できることなら結婚する前にみておきたかった。でもきっと20代の私にはここまでの感動はなかったろうな。
最後まで「秋刀魚はいつ出てくるのかな?」と思っていたのは内緒にしておきたい。

先日、「ポトフ」を見てきた。
銀座まで出かけるのは億劫だったが、もうここでしか見られなくなっていたので仕方なく。
なんと観客が私を含め3人だけ。見終わって映画館の外に出ると大勢の観光客でごった返している銀座。きっとあの時間、映画館の中は最も人口密度が低かっただろう。
予告から想像していたのとはこれまた違った展開の映画だった。(私の勝手な想像だったのだが)
当たり前だけど電気オーブンのない時代にブリオッシュみたいなものも作れるのか、と、日頃我が家のオーブンレンジの機能が今一つなのを不平を言ってる自分が恥ずかしくなった。
きめ細やかさと感性。
それから、少女がすっと背を伸ばして食事をする姿がきれいだった。