説得することと信じることの話

巷では「ビリーバーは説得できない」と言う。
主に似非科学やカルトの話題で出ることが多い。私の周りに似非科学やカルトにハマった人はいない。だが、テレビやネットで調べただけで、説得するのはものすごく難しいことだろうな、と思う。

私は元々、人の言うことや誰かの個人に共鳴したり盲信するタイプではない。どちらかと言えば、いちいちなんでも突っかかって疑うタイプだ。
人の考えに納得したり、役立ちそうな考え方を流用することはあるが、思考や思想の分野でこの人の言うことなら間違いないと思うことはあまりない。
思考や思想の範囲でも、あまりに興味がない場合はあり得るが。

私は「科学で全てを証明できる」と考えている。ただし、今の科学で解き明かせないことがあるのはわかっているし、私にも証明はできない。今はわからなくても、いつか遠い未来には科学で証明できる日が来るはずだ、と信じている。
もし、私が「遠い未来になっても人間には手の届かない領域があり、そこに科学は立ち入れない」と説得をされたところで、おそらく考えは変えないだろう。

私が「科学で全てを証明できる」と信じることには根拠がないからだ。ただの願望だ。
私の場合、未来の科学を信じたところで誰に迷惑をかけるわけでもない。だから誰からも説得はされないが、されたとて根拠のない信仰は簡単には打ち壊すことができない。
似非科学やカルトにハマった人の家族は、さぞ大変だろう。

そんなことを考えながらネットサーフィンをしていて「トゥルービリーバーシンドローム」という言葉を見つけた。超常現象を信じた人が超能力者本人からトリックを聞いてもなお信じ続けることだそうだ。
どうやらインチキ超能力者本人がインチキを告白した体験から書かれた本があるようだ。検索しても日本語訳の本が見つからなかったので、本は読んでいない。もし読んだことのある方は感想を教えてほしい。

似非科学やカルト以外でも、ビリーバーは共通言語で話し合うことすら難しい。この記事でも書いたが、似非科学やスピリチュアルにハマる人は、客観的事実を必要としない解釈の世界にいる。
その世界は理屈や根拠や事実は通用しない。だから会話が噛み合わない。説得どころか、その話題でまともな会話をすること自体が難しいのだ。

説得には、共感と信頼と論理が必要なのだそうだ。
共感と信頼と論理を兼ね備えるのは、並大抵のことではない。普通の相手を説得すること自体が難しいのだ。ビリーバー相手なら至難の業だろう。
相手の世界を木っ端微塵にすることは、説得するためには悪手だ。私はやりかねない。説得役には不向きな人間だろう。

私は先にも書いたが、いちいちなんでも疑うし、調べたい。調べ方は甘いし、正確な情報を調べられているかはわからないが、自分で納得できる答えを出したいと思っている。
たとえ間違っても自分の納得した答えで間違えたい。そういう意味では、私は自分へのビリーバーとも言える。

もし、自分自身を説得することができたら、私はビリーバー説得専門家になれるかもしれない。

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