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人事としての2023年をふりかえる

こんにちは。人事のうえむら(@uemura_HR)です。皆さん元気に年末年始してますか?私は引越しの荷詰めで忙しく、家族に怒られつつこの記事を書いています。

本記事では私が2023年に担当した業務をふりかえっていきます。目的は自身の思考整理になりますが、同じテーマに取り組んでいる方との繋がりが生まれると嬉しいです。今後似たようなテーマに取り組む方の参考になればもっと嬉しいです。


2023年の主な取り組み

まずは2023年に取り組んできたことをざっと列挙してみます。

  • 新入社員研修課題の再設計~リリース

  • skills-based-managementに向けたスキル可視化・活用施策

  • 生成AIプロジェクトメンバーとしての活動

  • 人事部内組織開発

  • その他、既存施策の運用

上記は私がメインプレイヤーとして携わった業務です。チーム運営をやりつつ、今年もしっかりプレイすることができました。

私は人材育成・組織開発を担当する部署に所属していますが、育成ど真ん中の研修講師は担当しておらず、経営課題に紐づく組織開発や現場部門との従業員体験づくりに携わっています。そのためプロジェクトベースで動くことが多く、業務内容も多岐に渡りがちなところがあります。

以降の章ではそれぞれの取り組みの詳細を書いていきます。

新入社員研修課題の再設計~リリース

自社では各部門の業務を疑似体験する研修課題を内製しています。新卒新入社員は研修課題に取り組んだ上で配属先部署の希望を出し、彼らの能力適性を加味して配属先が決定されます。

この研修課題は現場部門のリアルを新人が疑似体験できる点、また現場で求められる能力を見極める2点の意図を込めて社員と共に作り上げたものでした。効果測定結果からも狙いは達成できていることが確認できましたが、以下の副作用が生まれていることも明らかになりました。

  • 各部署の研修課題が独立しており、配属後に部署間でどのような連携がされているかのイメージが湧きづらい

  • 自社が顧客にもたらすビジネス提供価値の全体像を解像度高く理解することが難しい

上記をクリアすることで新入社員の現場での早期活躍を支援すべく研修課題をリニューアルすることになりました。私はプロジェクトリーダーとして部門横断でプロジェクト立ち上げ、進行をリードしました。実際に行ったタスクを挙げてみます。

  • インセプションデッキ(≒企画書)を作成しメンバー間でプロジェクト目的・ゴールを揃えた。

  • ファシリテーターとしてプロジェクトに参画し、課題設計や運用の取りまとめを実施した。具体的には以下のタスクに取り組んだ。

    • 研修課題の背景となる顧客ペルソナ・カスタマージャーニー・バリューストリームマップの作成

    • 各部門の研修課題の再設計

    • 能力適性を見極めるための評価観点・評価手法の再設計

    • ロジ周りの取りまとめ

研修は1ヵ月近くかけて行われ、デリバリーフェーズでは数十名の現場社員がトレーナーとして研修に関わってくれました。ほんと良い研修だな。私はというと研修会場の様子をリアルタイムに社内発信していました。

STM=Starter Missionの略です
研修会場近くの港屋2にはお世話になりました

研修後アンケートの結果は上々でしたが、効果については新入社員の配属後に伴走しつつ1年がかりで追いかけている最中です。既に認識している問題もあり、来年に向けて研修課題を改善しています。終わりなきカイゼン・ジャーニー。

skills-based-managementに向けたスキル可視化・活用施策

横文字でカッコつけてますが要はスキル管理をやっていました。スキル管理といえばタレントマネジメント。ではありますが、昨今のグローバル界隈の動きを見ていると従来型のタレマネと異なる流れが発生していることを事前に把握していました。

skills-based-managementとは何か

先日Yahooニュースで「スキル型雇用」なるキーワードの記事が公開されました。私の周辺でも多くの人事パーソンが注目していたように思います。

記事内ではマイクロソフトやアマゾンなどのテック企業を中心にジョブ型雇用からスキル型雇用への移行が進んでおり、AIを活用したプロジェクトと人のマッチング、育成プログラムのレコメンドなどに触れられています。

こうした流れの背景にあるのはUSでの経済成長、少子高齢化による人手不足であり、従来のジョブ型では労働供給が追い付かなくなる未来が迫っていることにあります。このような変化に対応していくための戦略・戦術を全体像として理解する上で「仕事の未来×組織の未来――新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す」という書籍が参考になりました。

ギグワーカー、AI、ロボティクスなど、仕事の進め方の選択肢が増えるなかで、雇用は人と仕事をつなぐ主要な仕組みではなくなりつつある。仕事を雇用という枠組みで捉え、働く個人を被雇用者に限定してしまうと、多様な働き方も、人間と自動化の最適な組み合わせも見えなくなってしまう。

仕事を進めるうえで、すべての関係者のあいだのやり取りを、シームレス、効率的、公平、そして透明にするための社会施策を定着させる鍵は、仕事の脱構築にある。通常のフルタイム雇用も、ますます新しいワークOSの特長を帯びていくだろう。仕事の基本単位を職務とし、職務を担うのは雇用関係のある労働者(従業員あるいは業務契約者)だけという考えから離れることができれば、伝統的なOSでは得られなかった洞察と選択肢を得ることができる。

仕事の未来×組織の未来――新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す

本書では上記のような世界観に近づく上で「現在や将来の職務ではなく、まず仕事から考える」という原則を挙げています。仕事をタスクや活動に分解し、個人をスキルや能力に分解した上で、タスクとスキルをマッチングしていくことで労働力を最適化していく。これがskills-based-managementの要諦だと私は理解しています。

一方で日本企業はというと、個人の職務遂行能力によって従業員を評価し、賃金体系の基となる等級を定める職能資格制度を古くから運用してきました。またメンバーシップ型雇用により長い雇用期間での人材育成を強みとし、ゼネラリスト型の人材を中心に企業力を高めてきました。実はスキルベースの考え方は職能資格制度に近いのではないかという見方もあります。私もそうした側面はあると考えています。

メンバーシップ型雇用におけるスキル可視化・活用施策

前置きが長くなりました。ここまでの背景を踏まえ、メンバーシップ型雇用におけるskills-based-managementを探るべく我々はアマゾンの奥地へまずはスキル可視化・活用を進めることにしました。取り組みの詳細はまた別記事に書くことにして、ここではざっくりと要点を挙げてみます。

現場と共に小さくはじめる
事前ヒアリングで職種別に状況が異なる点が分かったため、職種を絞ってスモールスタートすることにしました。部長級をはじめ現場社員と共にプロジェクト体制を構築し、私はファシリテーターとして施策全体や議論のフレームをつくる役割を果たしてきました。

スキル活用の目的を明確にする
スキル管理は特に導入時に運用工数のかかる施策となるため、従業員が効果を認識した上で施策をスタートできるように導入目的を明確に定めました。主に「業務アサインメントへの活用」「キャリア自律を促進するOpportunity Matching」の2点を挙げ、マネジメントプロセスや他の人事施策についても合わせてアップデートしていくことを宣言。事前に複数回の説明会を実施するなど双方向性を担保して理解を醸成していきました。

変わりゆくスキルを継続的にメンテナンスする
ビジネスや業務と共に必要なスキルは移り変わっていきます。そのため現在のスキルを可視化して終わることはなく、マスタデータ、従業員のスキル情報共に継続的なメンテナンスが前提となります。工数面でも現実的な運用が作れなければ廃れていってしまうためHRテックやAIの活用は必要不可欠。この点について、まずは土台となるデータ設計を行いシステム上で継続的なメンテナンスが行える基盤を構築しました。設計にあたりエンジニア部門の協力が得られたことは強力な追い風になりました💪

結果として2023年中に施策を一周回すことができ、スキル情報の可視化、分析を実施することができました。

約500名分のスキル情報を集計・分析した

スキル情報の可視化に留まらず、当初の目的であった活用フェーズに着手できたことも良かったです。この結果を踏まえて来年は全社施策化に向けて実施範囲を徐々に拡大していく予定です。

生成AI推進プロジェクトメンバーとしての活動

生成AI推進プロジェクトメンバーとして、ChatGPTを安全に業務利用できる基盤の普及に務めました。社内PoCでの効果検証を経て現在は全社展開を開始しています。

なぜ人事が生成AI推進を?と思われるかもしれません。私もそう思います。忘れもしない3/14、GPT-4モデルが発表された日に私はChatGPTに初めて触れました。「これは世界が変わるかもしれない」と思い、すぐにOpenAI APIを使って久しぶりの個人開発に没頭。LlamaIndexを使って簡易的なRAGを実装し、ゲームの攻略記事を集めてユーザーの質問に回答する攻略Botを開発しました。

この様子を新入社員研修の傍ら社内発信していたところ、生成AI推進プロジェクトのリーダーから「一緒にやらない?」と声をかけられプロジェクトにJoinすることになりました。相変わらず風通しの良い会社だな。

プロジェクトにおいて主に私が貢献したのは事務局としてのオペレーションに加え、生成AIの基礎知識や活用知識をラーニングパスとして従業員に提供した点となります。UdemyやGLOBIS学び放題のコンテンツを活用しつつ、内製コンテンツと組み合わせてE-learning形式で時間や場所を選ばず学べるようにしました。

余談ですが、先日、サイバーエージェントが生成AIのリスキリングについてのニュースリリースを発表していました。日本語LLMを自社開発する企業とあって、全社員必修でやり切る姿は圧巻でした。

社内ChatGPTの全社展開後は人事部内での生成AI活用を推進しています。多くの人事部員がそれぞれの業務領域でAIを使って試行錯誤しており、業務改善に繋がるアイデアが日々生まれつつある状況です。

もちろん、まだまだ道半ばの取り組み。来年も引き続き生成AIと向き合っていくことになりそうです。最近忙しくてChatGPTの課金を辞めてしまっていたので、まずは年末年始を使ってキャッチアップし直してきます。(余談ですが、本記事のヘッダー画像は画像生成エンジンのDALL-E 3を使って生成してみました。細かな指定にも答えつつあっという間に画像が生成されるのは凄い体験ですね。)

人事部内組織開発

以前、人事組織の課題解決を試みて失敗した話をnoteに書きました。人事全体で価値提供していくために組織間の関係の質を高めていくというものでしたが、時期尚早だったというお話。

私は諦めが悪いところがあり、実はその後も同じ課題認識を持ち続けていました。当時の反省を踏まえて機が熟すのを伺っていたところ、人事制度設計を担当するマネージャーとの1on1の中で「チーム連携を高めていきたいよね」という話を聞いたことがきっかけで、チーム間の雑談会を企画することに。上半期の半年を使って少人数でトライアルを実施後、両チーム全員(約15名)で毎月の雑談会を企画・運営してきました。

雑談会の様子をXにて発信する様子

雑談会を通じてメンバーからは「組織間のコミュニケーションのハードルが下がった」「未来のことに目を向けるきっかけとなり良い機会だった」「もっと多くの人と雑な話がしたい」といった前向きな意見を得ることができ、当初の目的が達成されたことを確認することができました。

またリモートワーク下での雑談においてはメンバー1人あたりの発話量や多くの人と対話する時間をいかに確保するかという課題がありますが、ブレイクアウトルームを活用したワールドカフェ形式を採用することで大人数でも安定して濃厚な時間を生み出すことができたことは良い発見だったように思います。

こうした雑談会の取り組みを人事部長にも伝えていたところ、組織目標が切り替わるタイミングで人事Mgr同士の関係構築も強化したいとの相談を受けました。すぐさま組織開発プロフェッショナルである師匠と共に場を設計。ひとり一人が腹を割って組織と向き合う時間を生み出し、良い形で1年を締めくくることができました。

自社では人事組織を組成して間もなく5年を迎えます。創業当初は人材確保が難しく、まずはひとり一人が担当領域で安定して成果を出すことに注力してきました。その後、徐々に組織や人材が成熟してきたこともあり、人事として次のフェーズに挑戦する時が来ています。担当領域を超えて人事としてのイノベーションを起こせる組織を目指していきたいと思っています。

その他、既存施策の運用

チームとしていくつかの継続施策を持っているため、その運用にもあたりました。と言っても私の担当領域についてはシステム化、自動化しているため、自身が手を動かす場面はあまりありません。今期も安定して施策をデリバリすることができたと思います。

キャリア自律施策
年2回、上司部下間でキャリアの棚卸しと面談を行う全社イベントを実施。キャリアシートの提出率は95%以上で推移しており、キャリア自律の浸透が進んでいます。

書籍購入支援制度

上記リンク記事で作った制度をその後も運用しています。現在は年間3000冊近くが利用されており、書籍を通じて学び合う文化が醸成されています。半期毎に制度をアップデートしており、従業員からも良い反応が得られています。

職種別研修
プロジェクトマネジメント力を高める研修を企画実施。延べ300名超が研修参加し、PMスキルを集中強化。IPAが主催するプロジェクトマネージャ試験など難関資格を取得する流れも生まれつつあります。

おわりに

2023年はこれまで撒いてきた種が次々と芽を出し、多くのワクワクに出会えた1年でした。どの取り組みもこれから育てていくフェーズとなりますが、頼れる仲間と共に歩みを進めていきます。

そして敢えて取り組めなかったことをひとつ挙げると、社外の方々との繋がりを増やすことになるかと思います。この記事と同じテーマに取り組んでいる方がいたら、ゆるやかに情報交換しましょう。Xもやっていますのでお気軽にお声がけください。

それでは2023年もお疲れ様でした。
皆様よいお年を🎍

おまけ
プライベートのふりかえりをしずかなインターネットに書きました。お時間のある方は立ち寄ってみてもらえると嬉しいです。


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