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所有マイクのお話 編曲の為のマイク遍歴

マイク、そう声とか楽器とかを拾って録音するアレです。レコーディングスタジオではいろんな種類が何本もあり、録音するソースによって様々なチョイスがされ、『どんなマイクが立っているんだろう〜』と眺めるだけでも何かワクワクします。レコーディングスタジオ定番と言われるマイクも、値段がピンキリで数百万円から数千円まであって値段じゃないところもあったり。奥が深いです。

ぶっちゃけアレンジャーとしては歌とかアコギとかを録れるコンデンサーマイクが1本だけあれば戦えます。そこそこマイクを所有している自分でも最低1本でもなんとかなりそうです。アレンジャー駆け出しの頃は機材も少なくそれでやってましたから。

時代の流れもあると思うのですがレコスタも使わずアレンジャーが自宅や自分の作業場でオケを完成させることも多くなった昨今、マイクに関してレコスタで『エンジニアさんに丸投げ〜』とはできなくなる場面が多くなるわけです。

そんな空気がプロとしてアレンジャーを始めた頃からすでにありまして、となるとマイク1本では心細いし、少しでもいい音で録れないだろうかとコツコツとマイクを集め出しました。

そんなわけでこれまでのマイク遍歴などを紹介してみようと思います。

アレンジャー駆け出し期

初めて自分で買った録音用マイクといえばこれも定番SHURE SM57。当時は6,7千円くらいだったかな。アレンジャーとか始める前でとりあえず持ってなきゃって買いました。

SHURE SM57

レコスタのエレキRecのド定番ですからね。もちろん今も使っていてギターアンプに立てる2本のマイクの1つ。浮気もするけど戻ってきちゃうのよね。

ギターアンプはマイク2本立てが好き

そしてアレンジャーや曲書きも始めたころに、デモの歌やアコギ録音に必要になって初めて買ったコンデンサーマイクがRode NT2-A。当時安いコンデンサーマイクの定番っぽくて重宝しました。辛い時代を共にしたマイクで、使わなくなって10年以上経ってるのに手放さず、知り合いがなんでもいいからコンデンサーマイク貸してって時によく貸していましたが、いろいろ巡って一体今どこにあるのでしょうか(笑)

SM57はダイナミックマイクで自宅でアンプ鳴らしたりできない頃だったので実質初期はRode NT2-Aのみで戦っていたようなものでした。

マイク模索期

その後案件に恵まれたりで、もっといいマイクを導入する興味や懐の余裕もできたりしたことに加えて、楽器演奏OKの物件や現在の自宅スタジオに引っ越したりのきっかけでマイクを使う意味も増えて色々導入をするようになりました。
録音するものもギターアンプ、ベースアンプ、他の生楽器など種類が増えてきたことも理由ですね。より自分の作るアレンジにマッチしたベースやギターの音を求めて楽器や、アンプと同等に試行錯誤しながら実践で使いつつ試していました。

模索期に集めたマイクたち

左から、
SENNHEISER e906
ギターアンプを録るのにSM57飽きたな〜他にないかなと探してたところ知り合いのエンジニアが使ってて良くて導入したもの。ロック系と相性が良くてそれ系ではいつも使っていたけど、アンプに立てる2本目のマイクをリボンマイクにした以降、相性の問題かロック系でもSM57にするようになってから出番なし。。

SHURE SM57

SENNHEISER MD421
通称クジラ。これもど定番のダイナミックマイク。ちなみにコネクタが銀の現行ではない古い方。そっちの方が音がいいらしいってことでヤフオクで落としました。ギターアンプやベースアンプに使っていたのですが、そこまで好みでは無かったらしく他に好きなのが合ったので数年でヤフオクに放出しました。ドラムとか録るならタムとかに良さそうだけど、それこそレコスタでしょう。

Electro-Voice RE20
通称DJアカサカ。
ベースをいい感じに録れないかと導入したマイク。見た目がゴツくて好き。レコスタでも使ったことあるし印象が良かったのだけど、自分で使うのはまたちょっと違いました。好みの話だけど悪くないのだけどバチっとこない。以前noteで『ベース録音の音について② アンプ録音』でも書いたのだけど、結局はベースRecの大定番NEUMANN u47 FETを求めていたのでそっちを導入後、別の用途もなくあえなく手放しました。

NEUMANN u87ai
駆け出し期に使っていたRode NT2-Aから流石にちゃんとした物買わなきゃってことで導入したこれまたスタジオ定番でナレーション録りではド定番のマイク。歌やアコギで使ってましたが導入時、高音の伸びはもちろんですが中低域のきめ細かさに驚いたのを覚えてます。今となっては味気ないな〜とも思いますがプロクオリティの初めてのコンデンサーマイクで、所有したことに謎の達成感がありました(笑)
そして本体とは別のマイクサスペンションだけで3万もすることにビビりました。
ちなみに当時でも同等価格でもたくさん他にもいいのが合ったのですが、どうせこれ以上のハイクラスのマイクはレコスタにあるし、ど定番の音を知る事が大事というのもu87aiを導入した理由の一つです。
ただ、現在6年以上デシケーターの中で眠ったままです。知り合いのエンジニアが『何かと便利であると重宝するから持ってた方がいい!』という言葉を信じて手放していませんが、昨今の物価高もあって手放したら二度と買う気にならなそうです。

Soundelux U195
知り合いの輸入代理店の人が『いいから試してみて!』とデモ機を送ってくれたコンデンサーマイクで、当時15万くらいの廉価だけどNEUMANN u87並かそれ以上に良い!みたいな触れ込みだったかで、実際その辺はNEUMANN u87aiの方が良かったのだけどこのマイク、めちゃくちゃ大きい音量を受けられるというイケてる仕様で導入して気に入ってました。実際エンジニア界隈でも気に入ってる人もいて、『バスドラに容赦なく立てられるマイク』と言っていたり。廉価なことも相まって導入する人がそれなりにいたようです。
なかなかベースアンプみたいな大音量を受けられるコンデンサーマイクってなくて先述しているNEUMANN u47 FETに近い印象もあってベースアンプやギターアンプに立てて使っていました。
これもNEUMANN u47 FETを導入して割とすぐ手放したのだけど、NEUMANN u87aiがなかったら頼りになるサブコンデンサーマイクとして持っていたのかと思います。

TELEFUNKEN M82

TELEFUNKEN M82

他にもこれも所有していました。キック用で、うちではベースアンプ用に。黒塗りのNEUMANN u47 FETみたいなルックスのくせに指向性が上からと言うのがなんか気に入らなかったけど一時期使ってました。

現在

Chandler Limited REDD Microphone

我が家の真打。歌録りに絶対の信頼を置いているチューブのコンデンサーマイクです。結構思いきりましたが導入して良かったマイクです。それまでぶっちゃけ自分の環境の歌録りってあくまで”デモの歌入れ"の役割がほとんどで、本番歌Recはスタジオのマイクを使うから廉価なマイクでも良かったんですけどね。
まあコーラスやハモも本ちゃんをうちで録る事あるし何より使いたい!って思いで導入しました。不思議なもんで、その後自分がスタジオでProToolsを回しながらディレクションするというレコーディングエンジニア不在の現場も出てきて、このマイクを持ち出して本番歌Recをするのがここ数年増えました。
結構エンジニアさんが自分で良いマイクを持ち込んでくれることが多いですし、自分でも良いマイクを持っているアドバンテージを感じました。
このマイク、プリアンプも内蔵されていてそれなりに色があり、Neve系のマイクプリだと倍音がキツすぎたりするのでナチュラル系のプリがおすすめです。自分の場合はもう内蔵のプリアンプだけにしてそのままコンプに繋いで使っています。
特に女性シンガーで使うのが抜群。

NEUMANN u47 FET i

真打その2。まぁこれなんです。ベースはコレなんですよ。これを求めて色々遠回りしてきたけど"u47 fetっぽい"では結局ダメでそのものを手にすることでモヤモヤが一気に晴れました。おかげで先述したようにこの導入でたくさんのマイクを手放しました。
音はまさに自分が聞いてきた音で、スタジオではローがちゃんと録れるマイクって印象だったけど自分で使って思うのはローミッドの密度の高さでした。ベースはローミッドで音抜けするのが一番という自分の理念にバッチリ。
ベースで使うのが主だけど、ソロヴァイオリンだったり他も色々良い感じになるのでますます87aiの出番は無くなります。
ちなみにヴィンテージではなく復刻です。自分で所有するものにメンテの心配はできるだけ減らしたいので。
アレンジャー自身がこのマイクを所有するのは稀かもだけど、導入して自分のスタイルが確定されたので悔いはありません。

上から

Samar Audio Design VL37A
リボンマイク。パッシブとアクティブを試してアクティブの方を気に入ったのでそちらを導入。前々からリボンマイク欲しいとは思っていて、定番のRoyer R121も候補に上がったのだけど縁あってSamar Audioに。他のリボンマイクをたくさん知っているわけではないのだけどとりあえず見た目が好き。
リボンらしい嫌なピークのない音でナチュラルで、かつレンジの広い音が録れるのがめっちゃお気に入りです。
これを導入してからアコギはリボンマイクで録るようになりました。ナチュラルに録れる分、実はコンデンサーマイクより収録時にEQで音作りしてやる必要があるり、自分の場合はChandler Limited Little Devil EQで豊富なローやローミッド辺りを抑えて心地よい高音域を足しと、割としっかり音作りしてから録音するのだけどその音が好き。
またうちでソロヴァイオリンやトランペットなんかを録る時もファーストチョイスで大抵そのまま良い仕事をしてくれます。

Earthworks QTC50mp
オンマイクだけじゃなくてオフとかいろんな空間を録りたいと思うようになって導入したマイク。マッチドペアで。
アコギやソロヴァイオリン、トランペットとかのオンマイクから離したポジションでステレオで狙うとちょっとした空間の音も拾えてオンと混ぜるとリバーブでは得られない微量の響きが混ざって太さと奥行きが出て良い感じ。
またコーラスやガヤとかで人数感を出したい時に、オンマイクで無駄にトラックを重ねていくよりQTC50を遠くに立ててそこに向かって歌えば距離感と違う響きも足せてより人数感が出てお気に入り。
QTC50をステレオで遠く立てて二人で同時にコーラスを立ち位置を変えながら何トラックか録ればかなり効果的にコーラス、ガヤとかも録れます。録音中もキャッキャして楽しいです。広い空間で10人以上で一斉に録ってみたい。


アコギのセッティング、手前VL37A 奥QTC50

上記に加えて生き残った
SHURE SM57
SENNHEISER e906
NEUMANN u87ai

で今戦っている感じです。
(といっても下二つは何年も使ってませんが)

こんな感じで色々試し現在は少数精鋭、厳選されたもので戦ってます。うちの1ブースで自分が作るオケに必要な用途としては十分な感じです。うちの小さいデシケーターになんとか収まる量で十分。

実際ここ数年入れ替わりがないと言うのは昨今の機材高騰もありますが、そもそも入れ替えしたいマイクもないってところです。
はっきり言えることは今の機材高騰の前に揃えられてほんと良かったってことです。昔の値段を知っていると現在の値段じゃコスパ悪すぎてなんだかな〜って正直思ってしまいますね。


デシケーター

まとめ

とまあ、こんなマイク遍歴でした。自分は割と出来るだけ良いものを先に導入するタイプなので寄り道は少ない方ですがそれでも結構身を切ってますね〜。
自分で納得いっているので構いませんが。

とは言え、これからって人に『アレンジャーはマイクいっぱい持ってた方がいいですよね?』って聞かれたら答えは『好きだったら持っててもいいけど、無理して買うもんじゃないのでは?』って答えます。もちろん否定はしませんけどね。

一つ言えることは『どんなマイクを使おうが良い音楽を生み出すのは別のベクトル』ってことですね。
生まれた音楽を収録してくれるのがマイクですから、ク○曲を200万円のマイクで最高の音で歌ってもク○曲ですし。その辺は心得ていることが大事。
ぶっちゃけると自分にとって良い楽器とか機材導入は音楽をやる、制作する事への一種の刺激材みたいなところがあるのかも知れませんね。

と言うわけでマイク遍歴という体の雑談でした。
写真を探していたら、昔の部屋で洗濯機置き場を改造してアンプブースを作っていた時の写真があったので次回かどこかでその事について描こうかななんて思いました。

ついでに最後に宣伝をば

自作ベース音源作りました。
ジャズベース(指弾き、ピック弾き&スラップ!)プレシジョンベース(ミュート機能、サスティーンコントロール付き)多くの人に導入していただいて嬉しい限りです。誰かの制作の力になれたら幸いです。

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