Ⅲ章/下【BeastOfTheOpera】
庭園から逃げるように帰ったエステルは、ボックス席のソファで縮こまる。劇場は第二部へ向けての準備中だ。観客達も今か今かと再会を待ち望んでいる。ペトロニーユも、軽食を摘まみながら緞帳が上がるのを待っていた。
左手首に残る感触に、身震いしながら受け取った毛布を握りしめる。
先日地下道に迷い込んだ青年・セザールと再会した。まさか、彼が夢と勘違いしているとはいえ、自分の事を覚えていたとは。天使と呼ばれ、名前を尋ねられた。あの時の真っ直ぐな視線が、今でもどこからか注がれて居るい