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映画三本「夜明けのすべて」「マダム・ウェブ」「ジャン・リュック・ゴダール/遺言」のこと、

2月×日
新宿バルト9で「夜明けのすべて」(三宅唱監督)

PMS(月経前症候群)の若い女性と、パニック障害の若い男性。
同じ職場で働く二人とその周りの人々の交流を描いた作品。

作品のすみずみまで心配りのされた、非常に丁寧に作られた映画、という印象。
あまりに丁寧すぎて逆に物足りなさを感じるほど。
しかし丁寧なのはもちろん悪いことではない。
特に音の使い方、それから脇役の描き方が良かった。
そんなに出番の多くない脇役でも、その人が主役の映画が撮れるくらい・・・その映画を容易に想像できるくらい厚みがある描き方がされている。
特にパニック障害を患う男性の、恋人の描き方が良い。

そして、嫌なヤツが一人も出てこない、社会的偏見なども描かれない、のも印象的。
ちょっと優しい世界すぎるんじゃないの?
とも思ったが、むしろ
「そういう人や偏見がなければ上手くいくのに」
と思わせない。どんなに周りが優しくても簡単に病気が治ったり生きやすくなったりはしない、ということで、ある意味シビアなのかも。

もう一回観たらもっと味わい深くなるような気がするが、もう一回観に行く時間が取れるかどうか・・・。

2月×日
新宿ピカデリーで「マダム・ウェブ」(S・J・クラークソン監督)

マーベルの「スパーダ―マン」に関係する作品。
かなり酷評されていて、アメリカでは大コケ、という話を聞いたのだが、世間で酷評されていて興行成績も良くないけれど面白い映画なんていっぱいあるのでわりと期待して見に行った。

ニューヨークで救命士をしている女性が、ある事故をきっかけに未来の光景を垣間見るようになり・・・という感じで始まる序盤は悪くない。
なかなかいいじゃない、アベンジャーズみたいにいろんなヒーローを一緒くたにして無理くりストーリーをひねり出したような映画よりこういう方が良いんだよ、と思いながら見ていたのだが、中盤辺りからダレて来る。

結局そのままどうにも乗れず、終盤にはそれなりのアクションシーンもあるが気持ちは盛り上がらないまま終了。
これは酷評されても仕方がないか。
「味のある小品」になる可能性もあったと思うので残念。
あ、猫は可愛かったな。

2月×日
新宿武蔵野館で「ジャン・リュック・ゴダール/遺言」(ジャン・リュック・ゴダール監督)

2022年9月に91歳で死んだ(スイスで合法化されている安楽死的制度を利用しての死だとのこと)この監督の遺作、ということだが、これから撮られる映画に関するメモ、のような作品(上映時間20分)。
映像はほとんどなく、写真や絵、それに手書きの文字、などにナレーションや音楽がかぶさるだけ。
ファン向けのポーナストラックみたいな感じ。
音楽の使い方などいかにも後期ゴダールって感じでそれなりに面白がれるところもあるものの、正直、作品と言っていいのかもわからず、観ている間も観終わった時もポカーンとしてしまったが、考えてみればある時期以降のこの監督の作品はみんな観ている間も観終わった時もポカーンとしてしまうようなものだったので(その中にハッとするような瞬間が有ったり無かったりするのだが)、ある意味ゴダールっぽいと言えば言えるか。

まあ上映時間が20分なので退屈するまではいかないし腹も立たない。
いっそのことこれから撮られる映画はすべて上映時間20分にすることにしたら良いんじゃないだろうか。
「マダム・ウェブ」だって最初の20分は面白かったしな。

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