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『ユーリー・ノルシュテイン傑作選』

ロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインの短編6作品をまとめたもの。
修復し復刻させる人たちのおかげで、日本でも観ることができる。


25日・最初の日」(1968)
1917年のロシア革命が題材。歴史に疎く前提知識がほぼないが、切り絵と文字に最後は記録映像も用いて、直接的に描く。


ケルジェネツの戦い」(1971)
14~16世紀のフレスコ画を用いたとある。
侵略を避けるべく湖の底に都市を作ったという伝説が、交響曲を背景に語られる。


キツネとウサギ」(1973)
ここで表現様式が確立したようで、飛躍が見て取れる。
動く絵本のように、動物たちも生き生きとしている。
物語はどんな教訓かよく分からないが…。
家をキツネに乗っ取られた主人公のウサギが悲嘆に暮れる。
自分より強そうなオオカミ、クマ、ウシに頼むも、返り討ちに遭う。
最後に、雄鶏に一縷の望みを託すが…。


アオサギとツル」(1974)
秘かに好き合っていても心を開けない2話が、付かず離れずを繰り返す。
どこかコミカルな動き。
背景の花火も美しい。


霧の中のハリネズミ」(1975)
この短編集の中では一番好きな作品。
ここでも動物が主役なのだが、表情も豊かでどこか人間臭く親しみが湧く。
友だちのところへ出かける道すがら、深い白い霧が立ち込め、方向感覚を失ってしまう。
鋭敏になったハリネズミにとっては、白馬や犬、フクロウや落ち葉でさえも驚きの対象となる。
おそらく実写の水面なども取り込み、この短い間の大冒険を演出する。


話の話」(1979)
これだけ少し長めで30分ほど尺がある。
珍しく人間が多く出てくるが、やはり主役は動物でまだ小さい狼。
戦争反対の寓話なのか、映像詩のような不思議な味わい。
子どもの頃の淡い記憶を具現化したような質感もある。

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