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先生の働き方改革。鍵は文科省や教育委員会ではなく、ハチドリのひとしずく。

ゴールデンウィークは秋田・岩手を旅行中で、今は盛岡のホテルで書いています。角館(比内地鶏・日本酒)→遠野(ひっつみ汁・ビール)→花巻・盛岡(冷麺・ビール)と巡って今日帰宅予定。GW終盤、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

先週4月28日に文部科学省「教員の勤務実態調査」の速報値が発表されたこと、財務省 財政制度分科会で「財政各論」として先生の働き方改革と待遇改善について取り上げられています。
なので今回はいわゆる「先生の働き方改革」について、以前から考えていたこと、話していたこと、を書いてみたいと思います。
いくつか論点が分かれるので、何回かに分けて書いてみたいと思います。専門ではないのでリサーチ不足・考慮不足が露呈しそうですが、何かひとしずくでも意味があればと書いてみたいと思います。

勤務実態調査結果

「先生の働き方改革」って良く言われますが、なんか抽象度が高い言葉でしっくりこないのですよね。何をすると達成するのかが明確でないことがモヤモヤするのかも、です。
ただ、数ある教育政策のなかでも、現時点ではこの政策が最も大事(あらゆる施策の前提条件になるべき)だと感じています。

勤務時間抑制と業務の見直しのセットが主の1つなのだと理解しており、その意味で先週発表された「教員の勤務実態調査」がそれをマクロで表すものになっています。
詳細は上記リンクの1次情報を、概要は下記の記事などが参考になりそうです。

内容を本当にざっくり3行で書くと

  • 2016年と2022年を比較すると、勤務時間は若干の減少トレンド

  • それでも長時間労働の割合はかなり高いまま

  • 授業にはやりがいや意味を感じるが、事務処理にはどっちも感じない

という感じです。
TALIS調査で「日本の先生は世界で一番忙しい」となった影響もあってか、若干勤務時間に改善が見られるが、まだまだ厳しい現状が浮き彫りになっています。

財務省 財政制度分科会のまとめ

上記の勤務実態調査を受けて、同日に財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でも「少⼦化が進展する中での教育の質の向上」という章題で資料がUPされています。
恐らくこれを読んでいる方は、以下の記事は読まれた方も多いと思いますが、是非、原文も読んでもらえたらと思います。

以下、1次情報のリンクです(なんでこの手の記事って1次情報のリンク張らないのかいつも疑問)。

上記リンクにある「財政各論②:人口・地域」を読むと、記事のタイトルからくる印象とは少し違うものに見えそうです。
財務省の資料では、人口減少社会での課題を多角度で考察しています。4つ目の議題で「教育」で、それ以外も見所ありますし、それこそ教材になりそうだな、と思ったりもしました。

教育については「先生の働き方改革と待遇改善こそが「教育の質」に寄与する施策である」とされています。
財務省の資料なので、一番言いたいことは「教員の定数増はしないぞ(少子化による減少率より教員の減少率は低いぞ)」感はありますが(なので最初にそれが書いてある)、給特法の課題も諸外国比較や、より根本的な課題である給与負担者と服務監督者が同⼀でないことなどもあげられています。
そのうえで

教員が担う必要の無い業務については、⽂部科学省・ 教育委員会が強制的にでも教員の業務としない整理とするなど踏み込んだ業務の適正化を⾏うべき

という至極まっとうなことをやろう(お金がかからないことでもあるし)、というまとめになっている感じです。

教員が担う必要の無い業務とは?

では、教員が担う必要の無い業務(かつ実際はやっている業務)とは?
平成31年の中央教育審議会から以下の答申が出ており、その業務が記載されています。

具体的にはこんな内容です。

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体 制の構築のための学校における働き方改革に関する総合 的な方策について(答申)」より

左が「基本的には学校以外が担うべき業務」、真ん中は「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」です。
左は「そもそも学校以外がやるべきなのでそう整理しようね」、真ん中は「学校がやるにしても先生以外がやれるようにしようね」ということなんだと思います。

これ、本当に文部科学省や教育委員会が全部強制的に整理できますかね?

保護者や地域、社会全体の理解が必要

上記の通り、文科省は既に一定の業務区分の整理・公表していて、地方分権という構造から手を出し辛い状態にあります。地方分権自体は筋の通ったものなので、言い訳だと断じるのは少し酷な感じです。
地方自治体として予算を用意し、外部委託によって整理できる範囲もあります。が、地方自治体の予算は当然ながら潤沢ではなく、ほとんどで前年比での削減を強いられる状況。そしてその予算の配分は地方議会が決めます。結果として、社会の理解が必要になってきます。

文部科学省や教育委員会ができることは当然ありますが、最重要の解決手段なのかは疑問があります。

以前書いた通り、妻は現役の教員で、母は元校長でした。
子どもが本屋で万引きした場合、家の電話が繋がらないと通っている学校に電話がかかってくるそうです。
地域のボランティアが、率先して学校の清掃ってしてくれるのでしょうか?校長先生とかが地域の皆さん回って、お願いすることが期待されているのでしょうかね(母はそれをやっていましたが苦笑)。

学校・先生という役割が、社会においてどのような位置づけなのか。
それを社会全体で、せめてこの答申での区分を把握し、今の実態とのギャップを理解することから始める必要があるのでは。
めっちゃ遠回り感ありますが、それを抜きにして学校関係者だけに責を負わすのは間違っているように感じています。

社会への情報伝達はメディアの仕事

文部科学省もこんな資料を出しています。でもこれを読んだことがある保護者や地域の人って少ないのじゃないでしょうか。

これも広報の仕方が悪いと言えばそれまでですが、、失礼な言い分ですが、それはそれで文科省に期待し過ぎ感もあります。

仕組みとしては現場=校長へかなりの権限移譲がされている(これ自体は地方分権同様にステキなことだと思っています)ので、現場で保護者や地域と対話しようぜ、は至極真っ当ですが、学校も意識のズレの是正から始めないといけないのは相当な労力のはず。
母が一般教員のときも管理職のときも、それを懸命にやって一定の成果をあげていましたが、その為かほぼ家にはいませんでした。なので自分はのび太くん並みのお婆ちゃん子になりました。

まずは社会全体でもっと、学校や教員の役割が何かを改めて合意していく必要があるはず。
社会全体への情報伝達が本業であり社会的使命にしているのは、メディアです。人口減少社会において、政府が4つに絞り込んだ議題の1つが「先生の働き方改革」だった訳で、それを社会全体に伝えることはまさにメディアの社会的使命と言えるのでは、と。

社会的課題を自分事にすること

とまあ、メディア批判っぽいこと書くだけだと、それも他人事にしているだけ。「教員の働き方改革」というと、学校現場や文部科学省や教育委員会の問題としてしまい、当事者のみに責を負わしても解決しないな、ということを書きたかっただけなのかも。

個人的には、こういう社会課題があったときに「それはお上がどうにかせい」という意見が多く表出してくることこそ、問題の根底なんじゃないかとも感じています。
なので、自分でできることからということで、メディアだってTVや新聞、ネットニュースだけじゃないぞ、ということで意味が小さくても個人でも書いきつつ、公務員として、ビジネスとしてできることをやっていけたらと思っています。

教員の働き方改革って、社会全体に長期に渡って強く大きな影響を与える課題です。誰もが「関係者」で、悪い方にも良い方にも影響を及ぼすことができる課題でもあります。
ハチドリのひとしずくに倣って、自分のできる範囲でこの課題に向き合い、行動したいと思います。

おわりに

「先生の働き方改革」で思っていたこと、その1でした。

他にも勤務実態調査もマクロのトレンドを把握するものなので、もっとミクロでの「トイレに行く暇がない」先生の現状を詳らかにするようなエスノグラフィ調査の必要性や、先生が少なすぎるという意見に対して感じていることなど、次回以降で需要ありそうであれば書いてみたいと思います。

ちなみに今日は、妻の誕生日でもあるので、ここからの時間はそっちに全振りしたいと思います。
ではまたー。

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