【ゆる募】先生の業務分析に向けたエスノグラフィの共同研究
GW後なのに、リハビリなく働いてぐったりしています。皆さんは大丈夫ですか?
前回書いた「先生の働き方改革」の反響が大きかったこともあり、この社会課題への関心の高さを改めて感じました。
今回は「ハチドリのひとしずく」の観点で、先生の働き方改革に関し、自分が貢献できる可能性がありそうなことを書いてみたいと思います。
自民党の特命委員会の提言
この1週間でも大きな動きがあり、自民党の特命委員会から「令和の教育人材確保実現プラン(提言) 」がとりまとめられています。
給特法での教職調整額が4%→10%ということが報道では大きく取り上げられており、その部分だけ摘まんでの反発も出ています。
おお、炎上したら一次情報を辿るか、と思ったのですが、この提言書は公開されていない模様。なぜかこの手の委員会や議連の資料って公表しないことが多いのですよね。リスク管理観点だとしたら、時代に合っていない感じ。
無料の記事で詳細の内容を理解しようと思うと、末富先生や妹尾さんがとても分かりやすくまとめてくれていました。メディアより個人オーサーの方が頼りになります。
ざっくり提言内容を箇条書きすると以下の4つ。
学校における働き方改革の更なる加速化
高度専門職である教室の処遇改善
学校における指導・運営体制の充実
教職の魅力を高め、志ある優れた人材が教師を目指すための支援
教職調整額の4%→10%以上の部分は上記の2の一部。重要だけど一部で、しかも報道だとここの「以上」も抜けちゃっているのですね。
「働き方改革せずに少額増やせば良いと思っているのか」「人手が欲しいのに金か」みたいな声をSNS等で見かけましたが、提言にはその辺りも意識されているようです。
是非、上記のお二人の記事などが広まってくれたら良いな、と思っています。そのうえで、批判するべきところを批判すると建設的。
実行には予算が必要
そして当然お金もかかること。提言案の内容を実行すると5,000億円かかるとのこと。この提言内容と、前回紹介した財務省「財政各論②:人口・地域」を見比べると、何が論点になるのかも見えてくるのかも、です。
5/12の永岡文部科学大臣会見では「提言案や勤務実態調査の結果踏まえ検討する」となっており、政府としても受け止めた格好です。
例年だと6月頃に「骨太の方針」がとりまとめられ、2024年度以降の流れが決まってくるので、気になる方はチェックしてみると良いかも。
処遇改善と働き方改革は並行で進む
報道では処遇改善に焦点あたっていましたが、先ほど箇条書きした通り、当然、働き方改革も更なる加速とされています。
その内容は以下の3つの観点であがっており、
①働き方改革の取組状況の更なる見える化
②校務のDX化による業務効率化
③学校及び教師が担う業務の更なる明確化適正化
となっているようです。
で、最初の話に戻って自分が貢献できそうな部分を考えてみると「②校務のDX化による業務効率化」が近そうです。
ミクロの情報が足りていない?
②校務のDX化による業務効率化をやろうとすると、自分ならより詳細の業務分析が必要になってきます。
「教員の勤務実態調査」でもどの業務にどれぐらいの時間がかかっているかは把握できます。
さらに経済産業省「未来の教室」の関連で、ボストンコンサルティングのリサーチはさらに詳細と真因分析、対策まで記載されています。
一方で良く言われる「トイレに行く暇もない」みたいな細かさとか、心情まで調査されている感じが無さそうで、もう少し具象が知りたいところです。
入力・処理・出力の詳細が知りたい
色々と論文とかも漁ってみたのですが、長期でどっぷり入り込むような調査研究が見つけられませんでした。調べ方が悪いのかも。もしご存じの方がいれば教えて欲しいです。
20年前ではありますが「落合美貴子 教師バーンアウトのメカニズム(コミュニティ心理学研究, 2003, 第6巻第2号, 72-89)」とかは近そうでした。1日の行動の詳細が記録されたりもしています。
この研究ではバーンアウト=燃え尽き症候群の要因を探る研究ということもあり、業務分類までになっています。
そのため「パソコンに向かい、資料作り」と1行あっても「何の資料を・どんな方法で・どのような配慮をしながら・誰と分担して」みたいな超具体が見えてきません。
以前書いた「日本の学校教育でDXが難しい理由?松林図屏風からDXの方向性を考える。」でも以下のようなことを書きましたが、業務分析をするなら入力・処理・出力の詳細が知りたくなります。
エスノグラフィ調査をやるのはどうか
また、アンケートやヒアリングような調査手法だと、回答する先生の解釈が入ってしまい、言語化できない本人も気づいていない要因が見つけられなくなることもあるのですよね。
そんな課題から、商品開発の分野では「エスノグラフィ」と言われる手法が使われることが多くなってきています。
本来は文化人類学とか民族学などの調査手法で、対象者と一緒に生活して文化や慣習などを理解し、在りのままを観察し、心情を含めて把握し、本人も言語化できない要因を発見するなどを目指す調査手法です。
上記記事でも、AppleのiPodがエスノグラフィを通じた発見で開発されたことなんかが紹介されていますね。
実は私がプロダクトオーナーをしている「まなびポケット」も、最初は複数の学校に2日間ずつ入らせていただき、あらゆる業務を記録してその内容を分析したりしてプロダクトづくりの材料にしたりもしていました。
以下のサイボウズさんの取り組みとかは求めているものに近い感じ。
最近では教頭先生にGo-Proつける取り組みもやっていたり。
私も働き方改革=サイボウズと連想しちゃったりするので、行動もブランディングもさすがです。
でも、1日じゃなくて長期の情報も欲しいのですよね(欲張り)。学校は時期によって業務負荷も内容がかなり変わるので。
「事務作業なんでもやるマン」での参与型観察
でも、良く分からん観察だけする人が、職員室にいるのって鬱陶しいですよね。しかも色々聞いてくることになるし。
例えば以下のような参与型観察の方法とかだと、どうでしょうか?
事務処理とか資料作成とかが得意で何でもしてくれる人を学校に派遣
先生方が困っていること・やって欲しいことを何でも依頼してOKにする
依頼内容(入力)と作業内容(処理)と成果物(出力)はつぶさに記録
3か月ぐらい(学期末も入れる)毎日常駐して上記をひたすらやる
観察者を別に配置し、定期的なヒアリングを行っておく
ざっくり図示するとこんな感じでしょうか。
これだと、事務処理などが大変な先生は業務をアウトソースできて、こちらは業務の入力・処理・出力を把握できそうで、両得な感じがします。
長期で学校に入ることで、初期の探り探り部分のロスも段々効率もあがって回収できそうなので学校も受入れやすいのでは、と。
また長期常駐すると、ある程度文化や慣習なども見えてくるはず。前提となる空気感を理解できないと「価値が小さいから止めましょう」とか言っても実態は芯を食わない提案である、みたいなことを避けられるかも、とも。
【ゆる募】共同で研究してくれる方
実行しようとすると費用かかりますが、事務作業なんでもやるマン(と書いていますが男性である必要はないです)の人件費をなんとか確保した場合、協力してくださる方いますかね。
業務分析とかはこちらでもある程度できそうですが、予算確保の方法によっては成果をオープンにし辛くなることもありそうで、この分野の研究している方と共同研究とかができると、研究成果も論文化して公共財にできるのでは、と思ったりしました。
本当はこの手のものこそ、国の調査研究とかでやると良いのかも、ですが。
もし興味があってこの手の分析やろうとしている研究者の方がいれば、緩くお声がけいただけたらと。
稲田 友 | Facebook
Yu Inada(@YuInada2) / Twitter
おわりに
今回は先生の業務分析について、実はかなり昔からやってみたいと思っていたエスノグラフィ調査について書いてみました。
改めてですが、ドンピシャの先行研究があってご存じの方がいらっしゃれば、是非教えていただけたらと。まずはそっちを読み込んでみたいと思いますので。
ここ最近は先生の働き方改革関連の報道が多かったので、その手の話題を続けましたが、次は少し違った観点で書いてみようかとも思います。
と言っても、いつもその場その場で書いているので、全く見通したっていませんが、、、
では今日はこの辺で。
今日は母の日なので、実母・義母にはお花ギフト済ですが、妻にも日頃の感謝(娘の母としてめっちゃ頑張っている)を行動で示せるよう頑張ってみます。
ではまたー。
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