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BIG神奈川ダービー(横浜0-1川崎)

アンデルソンロペス、ヤンマテウス、エウベル、マルコスジュニオール。
この4人が前線にいるマリノスに比べると川崎はどうしても戦力で見劣りする。
宮代大聖、山田新。まだ覚醒前の若手であり、シーズン二桁得点が計算できるアタッカーではない。

首位マリノス勝ち点43、川崎勝ち点28
戦力差が如実に表れた勝ち点差。

マリノスは前線の選手だけで前半のうちに試合を決められるくらい決定機を作れていたが、大きなポイントになったのが前半、エウベルからのプレゼントクロスをマテウスが押し込むだけの決定機を外してしまったシーン。
誰もが頭を抱えたシーンだが、後で振り返るとここが勝負のあやだった

その後、A・ロペスが中央でボールを受け、右サイドでフリーで待っていたマテウス。彼にパス出しておけば余裕でシュート撃てたのに、A・ロペスは自分で強引にシュート選択(そして得点ならず)。

またまたその後、マテウスが右サイドを爆走し、自分で撃てる状況ながら中央で待つエウベルにパスを選択(そして得点ならず)。

最初の決定機逸失から始まってその後二回、尾を引くような決定機逸失。もしかするとマテウス自身がシュートミスを気にしてパスしてしまい、そしてA・ロペスがマテウスを信用しなかったからパスを出さずに……という影響があったのかもしれない。
前半の内容からしてマリノスが2-0にするような展開だったはずなのにサッカーは本当にわからないものだ。

前半をスコアレスで凌いだ川崎は山田、宮代を早い段階で下げ、疲れの見える瀬古も下げたあたりから一気に川崎の圧が強まり、川崎のターンになった。遠野、橘田、瀬川らがかき回し、90分組の家長、シミッチも強度が落ちず、常にマリノスにとって脅威な存在であり続けた。
フォーメーションと選手、そして監督のコメントを参照したい。

(遠野大弥)
橘田健人と同時投入された際、鬼木達監督から「2人で試合を決めるんだぞ」とゲキを飛ばされた。「やってやるんだ、という気持ちになった」。出場前も、ピッチに立ってからも「負ける気がしなかったんですよね」。

https://hochi.news/articles/20230715-OHT1T51347.html?page=1

(瀬川祐輔)
「シュートを打とうと思って、無理だと思って」。常にシュートがファーストチョイスにあるアタッカーは、鬼の形相で裏に抜け出す大南拓磨と「目が合ったのが全て」。目と目を合わせ、愛あるパスを出した。
「絶対に相手DFの逆がとれると思っていた」

(鬼木監督)
選手には「ここを勝てば一気に情勢は変わる」と話しました。ただ、「負ければ、数字上、優勝の可能性は残るが、厳しくなる覚悟を持って臨まないといけない」とも話しました。

このコメントやフォーメーション変更を見るまでもなく、後半の川崎の怒涛の攻めを見ていた人は川崎の「ここで勝てなければ今季は終わり」とも言うべき執念を感じたはず。

ただし、その攻めを全て絶好調・一森純が跳ね返し続けた。

特に瀬川の縦パスから遠野が抜け出して獲得した川崎のPK。
家長のシュートを弾き出し、日本代表2004アジアカップベスト8ヨルダン戦の川口能活を彷彿とさせる見事なセーブ(家長がPK失敗したのは2021年ACLベスト16の蔚山現代戦ぶりに見た)。
もともと一森がガンバから加入直後の試合を見た時から、チャレンジし続ける姿勢が印象深い選手だけど、この試合での見事なセーブ連発には驚かされた。

しかしさすがにCB大南、CB車屋までもが攻め入ってきてのリスク思いっきりかけた猛攻の前に最後は力尽きた形。

第2節鹿島戦と同様、絶体絶命の状況でこそ突き抜けた力を発揮するのは、さすが川崎、この6年間で6タイトル獲得したクラブ。

個々の選手で特に印象に残ったのは前述の一森と、シミッチと家長。

シミッチは実に良かった。

中盤で闘える上にサイドの裏へ配給できるロングパス、あれは本当にマリノスを苦しめていた。 彼の狙いであるサイドの裏、ここに的確に出してくるパスはマリノスにとって凄く嫌だったと思う。
かつては橘田が爆発的成長してポジションを奪われ、ベンチ外にまでなった選手。しかしまたスタメンの座を勝ち取り、キャプテン橘田をベンチに追いやりこのビッグゲームで活躍という、メンタルの強さとプロとしての矜持を感じさせる。

家長は本当に37歳なのか?

右サイドに張り付き、そこでボールを収めて味方選手の上がりを待つことが可能となる抜群のキープ力。家長があれだけボール持ってくれれば、アタッカー陣や中盤も全速力で走って攻めたり戻ったりを繰り返さずに済み、相当な負担軽減になっていた。
そうかと思うと駆け引きで永戸をサッと抜き去り、中央で待つ瀬古にラストパスという決定機を作り出す。単に身体的な個人技ではなく駆け引きの巧さで相手を翻弄して抜き去る姿、あれは2022年W杯準決勝のアルゼンチン3-0クロアチアにおけるグバルディオルを抜き去ったメッシの姿がフラッシュバックした。

マリノスと川崎、お互いに攻め合う姿勢、内容、個々のクオリティ、劇的な展開、どれをとっても今季ベストであり、世界に誇ることができるトップオブトップの素晴らしいゲーム。
BIG神奈川ダービーという冠以上のハイレベルな試合だった。

最後に、BIG神奈川ダービーという名称について。
冠名を付けるメリットはあるし(一般層へのわかりやすいPR)、メディア主導・クラブ主導でダービー名を付けること自体に違和感を覚える人の気持ちもわかるのだが(東京クラシックや多摩川クラシコ等)、
そもそもこの6年間でこの2クラブがリーグタイトルを独占し続け、鹿島・磐田二強時代に匹敵するレベルの高さを見せつけている以上、呼称云々を超える存在のカードだと認識している。
つまり、わざわざ名称押し付けるまでもなく重要かつ盛り上がる一戦であり、ハイレベルな内容が約束されている一戦。

自分もこの一戦だけは絶対に見たいと思ってスケジュールやりくりして見に来たが、予想以上の壮絶な試合だった。
まだ今は日産が完売にならない状況なので、一般層にアピールするためこのBIG神奈川ダービーという名称を用いていくのは良いと思う。
ただ、今後このリーグタイトル独占状況が続けばダービー名で煽らなくても満席になるカードになるはずだし、その頃には違和感なく自然にこの名称が用いられる状況になると思う。
この6年間、Jリーグにおけるトップはこの2クラブだし、
今後も、この2クラブは強者であり続けるであろうから。

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