便利な世の中

便利な世の中になったよなあ。
ADHDも、ASDも、HSPも、性別違和も、他人と違う異端さも、
ぜーんぶ「個性」で片付けられる世の中になったんだから。

トランスジェンダーは、別に珍しい話じゃなくて、
今となっては受け入れやすい障害になったよね。
そう。受け入れなきゃいけない、障害になったよね。

だって僕まだずっと心が痛むのに、
どうしても納得なんてできないのに、
「仕方ない」「個性だから」「多様性」って言葉で、
全部片付けなきゃいけないんだもの。

大人達はそうやって、普通と少しズレた子供達を
最も簡単にまとめられるようになったんだから
便利な世の中だよね。


僕ずっと納得なんてできてないのに、
僕ずっと怒ってるのに、憎くて憎くてたまらないのに、
誰も悪くないから、どうしようもなく仕方のない事だって
自分が1番わかってるから、どうしようもないんだ。

だって本当に、
性別なんてどうしようもないんだもの。
生まれ持った障害も、生まれ持った価値観も、生まれ持った性別も容姿も、
全部どうしようもないこと。そこに全然納得行かないのに、
納得しなかったら「過去に縋っていては何も生まれないよ」と
一見明るく優しい後押しに見える言葉も、
その後押しの先がだーれも崖になってるだなんて気がついちゃいやしない。

前を向いて、受け入れて生きていくことが、全部の幸せだと思ってる。
実際その未来もあると思うよ。
でも、何年経っても、何年経っても、
胸がジクジクいたんで、蓋をして腐り切った呪いのようなそれが、
ずっと僕の後ろで叫ぶんだ。

「どうして僕を無視するの」
「どうして僕は納得しなきゃいけないの」
「どうして生まれてきただけなのに、
 誰かと違うからって言って合わせなきゃいけなくて、
 歯を食いしばってそうしたら
 もう今更戻れないところまで来た時に
 ‘‘合わせなくていいんじゃないの?‘’なんていうの。
 僕の努力全部無駄だったってこと?
 僕の血の滲む呪いすらも全部意味なかったってこと?」

最初から我慢しなくていいならそう言って欲しかった。
上手く言えなかったんだ。上手く言えなかっただけなんだ。
でも人はそれで、「わかってあげられなくてごめんね」って僕に笑った。謝った。
ほらまた、同じだ。まるで僕が悪者みたいに。

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