【SLAM DUNK GI】182話「共通点」
仙道彰とマリオ・タルデッリの会談は続く。
「アキラ、バスケをやってきたものならお前のセンスを感じることは簡単だ。日本人だと思って甘く見てたら痛い目に合う。」マリオ・タルデッリ
「高校までやっていた。ユース代表に参加したことがあるよ。」仙道
「ユース? 有望な選手じゃないか? なぜ、辞めたんだ?」マリオ・タルデッリ
「なぜ? うーん。マリオはオリンピック予選を見て、希望が湧いたと言ってたな。全てではないが比較すると俺は代表の試合を見て、希望が湧いてこなかったってのも1つかもな。」仙道
「日本は近年、オリンピックに出場することもままならない。プロリーグもない。」マリオ・タルデッリ
「やる理由が見つからなかった。まぁそれで世界を旅していた。」仙道
「でも、今、真剣にバスケをプレーしているだろ? 理由が見つかったんだな。」マリオ・タルデッリ
「まぁ そんなところか。」仙道
「アキラ、教えてくれ。お前のバスケをやる理由を。」マリオ・タルデッリ
仙道は少し間をあけて頭を整理した。
「うーん。話すとながくなるかもな。しかしマリオと共通点がある。」仙道
「共通点だと?」マリオ・タルデッリ
「1つは俺もマリオ同様、死にかけたってこと。2つ目は俺にも命の恩人がいる。」仙道
「それが理由とつながるのか?」マリオ・タルデッリ
「旅を通じて出会った友、ハリーと山に行ったが遭難した。ハリーは俺を助ける代償として片足を失った。幸い俺は何も怪我しなかった。ハリーにバスケを教えたんだ。」仙道
「車いすバスケか?」マリオ・タルデッリ
「ハリーは元々ラグビーで鍛えていた。ある時、オーストラリア代表に選ばれたと訪ねてきた。その時俺は、日本からトライアウトのオファーを受けていた。悩んでいたんだがな、ハリーとオリンピックで会おうと約束したって所かな。」仙道
「いい話だ。」マリオ・タルデッリ
「それにな。ふと思ったんだ。死にかけた奴が死ぬほどやったらどうなるか?ってな。まぁ他にちょいちょいあるが、そんなとこだ。」仙道
「はっはっ アキラ 面白いこと言うな! 死にかけた奴しかわからないだろうよ。」マリオ・タルデッリ
「そういうことだな。」仙道
仙道は笑顔を見せた。
「アキラ、俺にも権利はあるってことだ。」マリオ・タルデッリ
「その通りだ。」仙道
「アキラ、俺は何か具体的な目的があってここアメリカにたどり着いたわけじゃない。その日暮らしだ。アキラはなぜ?アメリカに? さっき言っていた日本でのトライアウトのためか?」マリオ・タルデッリ
「高校卒業から7年経っている。バスケットはたまにはやっていたが、ここでリハビリ中だ。」仙道
「そういうことか。アキラの話を聞いたら、無償にバスケをやりたくなってきたぜ。かつて希望をみていたものをもう一度、やりてえ。」マリオ・タルデッリ
「・・・・」仙道
「アキラ、明日もやるぞ。いいか?」マリオ・タルデッリ
「もちろん。」仙道
「よし! 俺がアキラのリハビリを手伝ってやるぞ! はっはっ」マリオ・タルデッリ
「ふっ マリオについてこれるのか? だいぶブランクがあるだろう!?」仙道
「いや、やってやる!」マリオ・タルデッリ
「第2ラウンドだな。」仙道
「そのとーり! そしてまた俺が勝って飯をご馳走してもらうぞ!」マリオ・タルデッリ
「マリオ。今日は引き分けだ。」仙道
仙道彰とマリオ・タルデッリとの間に存在した共通点、その共通点は二人の距離を近づけた。日本で待ち受けるヴィルフェーダ大阪トライアウトのまでの僅かな日々、二人はバスケットに明け暮れ、リハビリをほどこしていたのであった。
続
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