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無印良品の愛しき『脚付(あしつき)達』に学ぶ。 無印良品が目指す「ふつうの家具」の話

「なら脚付(あしつき)がおすすめです」

無印良品に勤めていた頃でも、辞めてしまった今でも。
お客様、友達、親族問わず、無印良品でおすすめのベッドはどれかを聞かれると「脚付マットレス」をおすすめしてきた。

無印良品のベッドの中でも、1991年から販売されてきた30年近いロングセラーなアイテム。
ベッドのマットレスに「脚を付けただけ」というとことんシンプルなこのアイテムは、新社会人をむかえた多くの人がお世話になってきたと思う。
狭い1ルームでも、脚の高さを低くすれば圧迫感を減らせるし、ヘッドボードなどもついていないのでソファのようにも使えて便利。
商品名にわざわざ「ベッド」とつけていないのも、
でも、そんな簡素なベッドをたくさんの人にすすめるのはなぜ?・・・と疑問に思う人も多いと思う。

それは10年間自分が働いていた中でも、見た目はそのままに何度も何度も改善されてきたことを知っているからだ。

寝心地の決め手となるバネこと「コイル」の種類の改善。
衛生面を清潔に保つための側生地の交換機能の追加。
カビ等の温床とならないように湿気を逃すために底面の構造変更。
スモールサイズからダブルサイズまで、様々な用途に合わせられるサイズ展開。
環境への配慮を考えて、解体できる構造に変更した・・・など。

見た目にはあらわれないものの、その中身は十分に最前線で活躍してくれるクオリティに仕上がっているのだ。
ほとんどの人はこのベッドで事足りるし、このベッドを参考に追加でほしい機能を考えていくことで、どんなベッドがほしいのかも見えてくる。
誰もが憧れを抱く「名作家具」とは呼べなくとも、ベッドのひとつのスタンダードな形として、この「脚付」の存在は自分の中でひとつの水準となっている。

そして、そんな「脚付」の流れを汲んだ商品が無印良品を運営する株式会社良品計画から先日発表された。

その名も「板と脚でできた家具」
テーブル、ベッド、ソファと家具シリーズとしてラインナップが発表されるのは実に12年ぶり。
その割にはインパクトが薄い・・・と一瞬感じたのだけれど、詳しく商品のことを見ていくと、そのこだわりは脚付マットレスの系譜を受けたとてもおもしろいものに仕上がっていた。

新型コロナウイルスの影響の中で、「ふつう」という基準が揺れ動く今。
今回は、「ふつう」なものをたくさん世の中に提案している無印良品の新たなる取り組みをご紹介させてもらいたい。

板と脚でできた家具ってどんなものなの?

板と脚でできた家具は、その名の通り。
シンプルな板と脚を組み合わせることで成り立っている。

そして、最大の特徴としては様々な長さの脚パーツと組み合わせることができるようになっている。
テーブルは椅子に座って使ったり、低めの脚でローテーブルとして使ったり。
ベッドやソファも使いたい状況に合わせて使い分けられるようになっている。
その様子は下の動画を見てもらえるとイメージしやすいと思う。

脚付マットレス自体も、脚の長さが10cm、12cm、20cm、26cmと様々な高さの脚を用意し、部屋に圧迫感がないように低めにして使ったり、高さを出して下に収納ケースを入れたりといった用途に対応してきた。

確かにこの構造であれば、ローテーブルとして使っていたテーブル天板を、違う長さの脚だけを追加購入して取り付けるだけで用途を変更することもできるようになる。
無印良品のイベントで触れられた内容によると、特にテーブルについてはこの簡単な構造で強度をきちんと出すことが難しかったそうだ。
だれでも簡単に作れるように見えるものほど、きちんと成立させることが難しいことは理解できるし、あれだけ脚付マットレスを改善しまくってきた無印良品のことを思えばそのこだわりはかなり強いものなのだと推察される。

子供が小さい時に乗り降りしやすいベッドの高さと、子供が成長した後に親だけで使用したいベッドの高さは確かに違う。
これまでも無印良品では一部の家具で脚の長さをカットするサービスを提供してきたけれど、カットするのには手間もかかるし、長くすることも難しい。
脚を簡単に差し替えることで高さを変えられる仕組みを本格的な家具のシリーズに仕組みとして取り入れていくことは、安っぽい造りにしない必要性も考えながら慎重にすすめなければならなかったことだろうと思う。

新型コロナウイルスで「ふつう」の暮らしという水準が揺さぶられる中で、様々なライフステージに対応していける家具のありかたを追求した無印良品の姿勢というのはなかなかにおもしろいと思う。

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更に個人的におもしろいと感じているのは、脚付マットレスに使用している脚パーツが板と脚シリーズのベッドとソファ(テーブルを除く)には基本的に全て共通利用することができているところ。

この展開によって、新しいパーツをたくさん作ることなく選べる脚の高さに幅をもたせることができているし、新しい高さの脚パーツ(5cmタイプ)も既存の商品で使うことができるためにお客様の選択肢を増やすことにも繋がる。
更には倉庫での商品管理などにも効率的になるので、お店で販売してきた身からするととても興味深い試みに感じられる。

これまでもソファのシリーズや、脚付きマットレスからの派生で誕生したソファベンチにも脚付マットレスの脚パーツは共通利用できるように変更されてきたけれど、その範囲がさらに広がっていっている。
その流れは、脚付マットレス好きな私にとってはなんだか嬉しい。

「無印良品が目指すふつうの家具」

「無印良品が目指すふつうの家具」と題して行われたイベントの様子は、YOUTUBEで見られるようになっている。

そこで提示されている「ふつう」というのは、世間を賑わせている「ニューノーマル」といったコロナ後の世界を予測し、需要喚起を行うようなものとはちがって比較的「地味」ですらある。
しかし、それこそが脚付マットレスをひたすら改善し進化させてきた無印良品ならではの「ふつう」に対する答えであるようにも思える。

イベントにも登壇されているプロダクトデザイナーの深澤直人さんは「ふつう」とこれまでも向き合ってきたデザイナーとして有名だけど、そんな深澤さんですらこの板と脚でできた家具のテーブルの構造は実現不能と思ったと述べられていた。

でもそうやって、地味な顔をしてとんでもないことをやっているブランドである無印良品って改めてすごいなと思うし、そのスタンスを新型コロナウイルスで右往左往しがちな自分にとっても必要なものだなと思った。
そして、なかなかショッピングにも気軽に出かけにくい世の中だけど、こちらのnoteが今後無印良品で家具を買う時の参考になったりすると嬉しく思う。

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