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相談事例と天風哲学(事例-9) 13

(観光旅館の例-9)
 観光地に立地するホテルSは十数年前の過大な投資額によって採算が厳しくなってきた。そこでメーン金融機関に出向き相談をしたところ、条件によっては債権免除に応じても良いとのこと。必須条件は経営者の社会的責任(減資及び役員辞任)を取ること、公的な支援機関を通すことなどであった。

 しかし、この席上で夫婦喧嘩、関係ない事柄などを持ち出し大騒ぎである。時と場所を見極めない経営者の資質が問われる場面が以前にもたびたびであった。このような窮境状況に追い込まれたのも経営者たる人間性の問題であることを痛感した。

 一方、ホテル業は常に投資が必要であり、当館もリニューアルの時期に差しかかり、さらなる資金が必要となっていた。しかし、現在の月約100万円の返済を減額して、改修工事代にあてる資金捻出が必要であり、この件をクリアーしなくてはならない。
 また、経営者夫妻はかなり高齢であることから、次の後継者を見つけなければならず、そこで浮上したのが18歳のお孫さんだった。専門学校の学生であることから、こんな大きな荷物を抱えさせても良いのだろうか迷った。

 顧客は減少の一途、今後の計画を策定中に夫婦間で折り合いがつかなくなり、計画の進展はとん挫、結局は金融機関からも飽きられ破産の道となった。当館の問題点はいくつも挙げられるが、何といっても経営者の資質の問題である。
 自分達夫婦間の問題も解決できずに、接客業などが務まるわけがない。まず、商売の基本である顧客を大切にする気持ちと心構え、経営者としての自覚と経営哲学をしっかりと持つことが必要である。
 天風氏がいうように「事業の前に人をつくれ」が先決問題なのである。そして他人や社会に対する貢献や役割を重視する必要があることを悟らなければならない。

 老舗に生まれた後継者は往々にして親の経営を単に引き継ぐという傾向があるのか、2代目は意外と経営感覚や危機感を持つ人は少ないように思える。
 今の時代、経営者たる人間性と経営感覚を持ち合わせていない以上、維持発展していくのは難しいことを肝に銘じなければならない。

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