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谷川俊太郎/ 「楽園」まで①

谷川俊太郎さんが70年前に撮った写真と若書きの詩が1冊に。

2023年3月17日(金)に発売した谷川俊太郎さんの最新刊「楽園」ができるまでのストーリーをお伝えします!

今回の「楽園」は写真集「lost&found」詩集「shuffle」の2冊を函に入れ、部数限定で出版します。第1回目は本書籍の編集を担当された編集者の尾崎靖(Dear Film Project)さんのメッセージをお届けします。

■「楽園」の始まり

 
始まりは小さなキッカケだった。写真家のキャビネットに眠っているフィルムを発掘して、再構成してZINEにまとめ、今の人たちにフィルム写真の素晴らしさを再発見してもらおうと、編集者2人とアート・ディレクター1人で始めた「Dear Film Project」の最初の試みに、一昨年前、谷川俊太郎さんが参加して、70年間、引き出しに眠っていたネガを貸してくださることになった。

2021年はコロナ禍真っ只中で谷川さんには直接お会いできず、谷川さんのお孫さんの夢佳さんが、原宿にある「Dear film Project」の事務所までワイシャツの箱3箱にきちんと整理されて日付も書いてある6×6のネガを持って来てくださった。そうして、500部限定のZINE「二眼レフの日々」が出来上がった。


ZINE「二眼レフの日々」谷川俊太郎(発行:Dear Film Project)
A5判/ 32ページ/ Edition500/ 2021年


発売記念の新宿の「BEAMS JAPAN」のギャラリーの写真展にいらした名だたるプロの写真家の方たちがこぞって、「こういう写真はプロに撮れないよ」、「かなわないなあ」と言っていたのが印象的だった。

            若かりし頃、谷川俊太郎さんが撮影した1枚 ©Shuntaro Tanikawa


      18歳の谷川俊太郎さんのポートレイト。リコーフレックスの二眼レフで撮影された
                                  ©Shuntaro Tanikawa


しばらくして、お茶の水にあるgallery bauhausで、たまたま「二眼レフの日々」を見たオーナーで写真家の小瀧達郎さんが、「本当に素晴らしい。まるでラルティーグのようだ。ウチのギャラリーで谷川さんの展示ができないだろうか?」とおっしゃった言葉を間に受け、そのまま谷川さんにお伝えしたら、谷川さんは少し笑って、「いいですよ。写真展、進めてください」とのことだった。

小瀧さんに谷川さんのお返事を伝えると、「谷川さんのネガを借りられたら、自分でプリントします」とのことで,谷川事務所からネガをお借りして、小瀧さんにお渡しした。
 
小瀧さんは、今も二眼レフカメラでも撮影する写真家で,谷川さんの写真の魅力をこう語っている。
「本当に自由に楽しんで撮影を続けていてもプロにならなかったラルティーグの写真とすごく似ている。作為のない純粋さが本当に魅力的です」。
ところで、なぜアマチュアのラルティーグの写真を現代の私たちが見れるかと言えば、リチャード・アヴェドンという日本でも著名な写真家が,ラルティーグの膨大な写真を発見し、そのみずみずしさに惚れ込んで写真集にまとめたからだそう。
 
小瀧さんがプリントして写真展が開かれるなら、来場された方が記念に持ち帰れる写真集や図録があるといいなあと思い、谷川さんにご相談したら、「写真集、進めていいですよ」とのこと。「Dear Film Project」をいつも応援してくれている出版社「TWO VIRGINS」の後藤佑介社長にご相談したら、「谷川さんの本に関われるなんて光栄です。出しましょう!」とのことで、あっという間に出版が決まってしまった。
 
後藤さんとの打ち合わせで「詩人の谷川さんと写真家の谷川さんとの2冊にしたらどうだろう?」というアイディアが出て、またまた谷川さんにご相談したら、「それなら、私が写真を撮っていた頃の詩を選ぶので、詩集は新たに編み直すのがいいでしょう」と、いきなり2冊組の出版が実現することに。「楽園」への道は、どこに続く?



                 Dear Film Project  尾崎 靖


「楽園」まで①はここまで。続きはこちらから


■「楽園」 谷川俊太郎 

写真集「lost&found」・詩集「Shuffle」

「楽園」は、谷川俊太郎が詩人・写真家としてまだ世に出る前の18歳から21歳の時期に、二眼レフカメラで身の回りの日常を捉えた写真を収めた写真集「lost & found」と、友人に勧められて詩作を始めたころの詩を中心に谷川氏自身が選び、編んだ詩集「shuffle」の2冊をリソグラフ装の函に収めた「谷川俊太郎の原点」とも言える作品集です。


18歳から21歳のころの谷川氏が愛した日常の光景を収めた写真と、社会への距離感と自由への憧れを感じながら生きる心象を描いた詩を併せて味わうと、写真が持つ含意がより深まるように感じられ、70年前の谷川氏の作品が、時を超えて今も、豊かな時間と空間を湛えていることに驚かされます。「楽園」は、谷川俊太郎氏のアーリー・ワークスであると同時に、70年早くに生まれた「永遠の少年」の魂のタイムカプセルとも言えるでしょう。


■谷川俊太郎

1931年東京生まれ。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。詩作のほか、エッセイ、絵本、翻訳、作詞など、常に詩の可能性や領域を広げる新たな試みを続け、写真家としても書籍を刊行するなど、幅広く作品を発表している。著書・受賞多数。海外での人気や評価も高く、日本を代表する詩人である。
 

<本書の仕様について>
楽園(2冊組函入り) 
写真集「lost & found」B5判変 上製(布装) ダブルトーン 80ページ
詩集「shuffle」B5判変 上製(布装) 1色刷 80ページ
定価 10,000円(税別)
発行:株式会社トゥーヴァージンズ
 

本書に関するお問い合わせは、株式会社トゥーヴァージンズまでメールにてお願いいたします。info@twovirgins.jp

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