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イザベラ・バード

明治11年に日本の東北から北海道にかけて探検したイザベラ・バードさんの「日本奥地紀行」を題材にしたコミック。

この時代に、この地を歩くのは日本人でも少なかった。維新があり東北でも戦争があった激動の時代に、ヨーロッパから冒険者として、列強の植民地政策の調査という側面も描かれている。

異文化だけでなく、貧困、混乱、天変地異などさまざまな出来事が描かれているが、目を引いたのが

「人々の考え方なのよ。自分の街が廃墟になっても泣き叫ぶものもなく、誰もが平然と笑っている。こんな不思議な光景は見たことがありません。まるで、滅んだら滅んだで全てすっぱりと受け入れるのが当然のような。これは火事に限ったことではなく、文明の深淵のような価値観の話だと思うのです」

これは先日読んだ、瀬戸内寂照さんとドナルド・キーンの対談でも話されていた内容に重なる。つまり、明治時代にはすでにスクラップアンドビルドということが、日本の文明として確立していることでもあると思う。

ゴジラ映画が受けるのも、海から現れ、破壊の限りを尽くされても、そこで立ち止まることなくまた創る姿を見ることができるからかもしれない。

もう一つ。紙漉きのエピソードにて。
「我々紙漉きにとっていちばんの楽しみはなんだと思う?一枚一枚心を込めて漉いた紙を、どんな人が、いかに使い、何を記し描くのか、それを百年後1000年後に人々が、いかに見て、何を思うのか、それを想像することだ」
枕草子や、源氏物語が残ったのも、こうした技術と、思いをもつ文化があってこそなのだと思う。

旅路はついに、蝦夷地につき、これからアイヌとの交流が始まる。次の巻が早くも楽しみ。

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街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな