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日系アメリカ人のカルマ

1980年代、日本人の両親の元、アメリカで生まれ育った。

現地校に通学しながら、日本語学校も週一通っていた。

21歳の短大生の頃、一冊の洋書がきっかけで、日本に移住した。

その本は日本帝国軍が中国で輪姦・大虐殺した内容を英語で発表したニューヨーク・タイムズ・ベストセラー『The Rape of Nanking: The Forgotten Holocaust of World War II(ザ・レイプ・オブ・南京:第二次世界大戦の忘れられたホロコースト)』。

アメリカで、ナチスがユダヤ人を大虐殺した事実を否定したとしたら大問題になるほどセンシティブな歴史なのに、その悪名高いナチスも比較にならないほどの残虐行為を日本軍がアジア諸国で犯した。しかも、その事実さえ教えない認知度のギャップが不自然すぎて、気持ち悪くなった。

アメリカ社会でも日本社会でも「異邦人」扱いだったが、どちらかというと「日本人」と見られてきて、私もそれに応えようとしてきた部分もある。でも手探りに構築してきた「日本人」というアイデンティティが、ガラガラと音をたてて崩れてゆくのを感じた。

当時、アメリカを早く出て、世界中を旅しがら「幸せ」というものを探し当てたいと思っていた。でも、その本を読み終えて、自分の考えにゾッとした。

アメリカ出身であれ「日本人」として見られるにもかかわらず、「祖国」の歴史も知らずに、世界中の国にお邪魔したとき、どれほど恥晒しになるか。日本人のイメージ、ひいては自分の印象をどれほど悪くするかということが容易に想像できたからだ。

国際人としての一般教養......。少なくとも日系人として知るべく加害者としての歴史を、人並み以上の教育を受けていた私が21年間、全く教わる機会がなかった事実に衝撃を受けた。

日本という国が一体どういう状況で、教育がどうなっていて、なんで被害者の歴史は教えるのに、加害者の歴史を教えないのか。

アメリカにいては、日本の中で何が起きているのかわからないと思い、私は東京にある大学に入学したのだった。

つづく

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