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生後10ヶ月で断乳したので、パーティした


テン様(息子のあだ名)が生後10ヶ月の頃、私は深刻な睡眠不足に悩まされていた。
生後8ヶ月頃から夜泣きで4回ほど起こされ、添い乳をしては寝かせる生活。

しかし十分に授乳したはずなのに、一向に泣き止まなかったり
寝たと思っても数時間後にはまた起きてしまう日々が続いていた。

そんな時、「夜間授乳をやめると夜泣きが減る」という記事を見て、藁にもすがる思いで実行することにした。結論から言うと、減った。やった!

夜間の断乳の様子や、やり方は別記事にまとめるとして、
今回は断乳パーティをした時のおはなし。




断乳パーティってなんやねん


土曜日の昼、冷蔵庫から豆乳を取り出し、グラスに注いでいる主人に宣言をする。


「今日から夜間授乳しない。というか母乳であげるのやめる」


当たり前だが、主人はテン様に母乳をあげたことはない。「そっか」くらいの返答がくるかなと思いきや、「じゃあ、パーティしよう」と予想外の言葉が返ってきた。


「パーティ?」

「ほら、駅前の交差点のさ、角にある雰囲気のいい居酒屋あるじゃん。あそこでテイクアウトしてさ、ビール飲んで、パーティすんの」


それ、ただ気になっていた居酒屋の料理を食べたいだけでは…?

ツッコミを入れようか迷ったが、焼き鳥をビールで飲んでいる姿を想像していたら、タイミングを逃してしまった。

夕方になり、さっそくパーティ準備に取り掛かることにした。

主人は居酒屋へ行って焼き鳥を購入し、近くの薬局でお酒を買う。その間に私はテン様をお風呂に入れる。

主人が帰ってきたので、テン様を膝の上に乗せてソファーに座る。
傍にはスマホを構えた主人の姿。テン様、最後のおっぱい授乳である。たっぷり味わってくれたまえ。


全然さびしくない


友人Aちゃんの断乳は1歳3ヶ月頃。

「ちょうど昨日、断乳したんだよね」ポツリ、寂しそうに笑っていた。

友人Bちゃんの断乳は1歳半頃。

「断乳がさびしくて、さびしくて…1歳半くらいだったかな。娘ちゃんは求めてなかったけど、無理やりおっぱいで授乳してたなぁ。主人に止められてやっと断乳したけど」


彼女たちのエピソードを聞いていたからか、断乳って寂しいものなのかと思っていた。
服をたくしあげ、テン様の後頭部を支え、胸に近づける。慣れたように吸いついた。


う〜〜〜〜〜ん、

さびしくはないな


「この姿を見るのが今日で最後なんだよ」と脳内の私が言う。けど浮かんだのはさびしさではなく、でっかくなったなぁという感動だけだった。

前にも書いたが、30年前、私は完全ミルクで育てられた。


だからか完全母乳だろうが、混合だろうか、完全ミルクだろうが、なんでもいいという価値観だった。早々に完全ミルクに移行しようかと考えていたが、想像以上に母乳が楽だったのと、経済的な理由で、混合育児にしていただけだった。

こだわりがないのも、さびしくない理由の1つなのかもしれない。

まぁでも一生懸命に吸いつくテン様の姿はかわいかった。薄い髪の毛を撫でながら、見下ろす。この姿を見れただけでも、混合育児にして良かったのかな。


パーティのはじまり


テン様を寝かせて、パーティをはじめることにした。
想像の倍くらい焼き鳥を買ってきてて笑ってしまった。


缶ビールを開けて、乾杯をする。
授乳中も私はお酒を飲んでいたので、感動は別になかった(なんなら3日前にも飲んでた)。アルコールが抜けていない時はミルクにすればいいだけだったので、混合育児は私に合っていたなと思う。

焼き鳥はどれもおいしかった。

小学生の時、塾の帰りにレバーをはじめて食べた時のことを思い出す。高架下に停まったキッチンカーから、夜の空に向かって白い煙がもくもくと立ち上がる。そばを通るといつもいい匂いがして、ずっと気になっていた焼き鳥屋さん。

ある日はじめてキッチンカーに近づいて、無愛想なおっちゃんにレバーを頼んだ。焼き鳥の種類なんて分からなかったので、適当なチョイスだった。

ドキドキしながら食べたレバーは、くっそマズかった。

苦味が舌に残り、鉄の臭みが鼻から抜けていく。こんなマズい食べ物があるのかと絶望して涙が出てきた。

30になった今では、レバーは大好物である。「カシラあげるからレバーちょうだい」と主人に交渉する。舌に残る苦味にうっとりと目を細めた。小学生でレバーはちょっと早すぎたな。


ちゃっかり用意されているお菓子をかじりながら、時計を見る。

これからは時間を気にせず、お酒を飲んでいいんだな。

母乳にアルコールが入るとマズいので、最低でも6時間はあけていた。いつの間にか、お酒を飲んだ瞬間に6時間後を計算するのがクセになっていた。でももうそれも必要ない。

最近は歯が出てきて乳首を噛まれることもあったし、お腹は冷えるし、授乳の際に悩むこともあったが、それらももう気にしなくていいのだ。


ぱいぱいバイバイ


パーティがお開きになり、テン様に関してはおっぱいの役割が終わった。お疲れ様でした。

それから3日間、おっぱいを全くあげなかったが何も問題なかった。
おっぱいのあげ始めはヒイヒイ言っていたのを考えると、終わりには何も起こらなすぎて拍子抜けしてしまった。

おっぱいは、あたたかくて、やわらかくて、ふわふわしたもの……そう想像する人が多いかもしれないけれど、出産するとまるで別のものに変容する。血管は浮き、岩みたいにカチンコチンに凝固する。

体の中で「出産した!母乳をつくれつくれ!」とハイペースで生産するが、反対に、新生児の吸う力は弱い。結果、供給過多になったおっぱいは悲鳴をあげた。

病院から家に帰ってきて3日間は、おっぱいが張って、熱を帯びていた。痛くて痛くて取り外したいと何度思ったか。保冷剤をタオルで巻いて、脇あたりを冷やしたけど気休めにしかならなかった。おっぱいも痛いし、切開した会陰の傷も痛いし、風呂場でしくしく泣いた。


それからテン様の吸う力が徐々に強くなってきて、私の体も母乳の生産の調整を覚えてきて、1週間後には痛みから解放された。

余裕を持って見ていると、「おぉ吸ってる吸ってる」と感動よりも、好奇心がくすぐられるような感情が湧いたのを覚えている。血液から赤血球が取り除かれた栄養たっぷりな液体が生産され、赤ん坊の血肉になる。
すごいな、よくできてる。

同時に、おっぱいを吸うことができる息子にも感心した。まだ生まれて1ヶ月も経ってないのに。どこで覚えたんですかそれ。


そんなこともあったなぁと思い出した断乳パーティのおわり。隣ではスピスピ寝息を立てながらテン様が眠っている。おっぱいの断乳は、やっぱりちょっとだけ寂しかった。


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