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【読書メモ】『夜市』(著:恒川光太郎)

5月も半ば、とはいえ、春はどこに行ったのかという位の暑さになっていて、はやくも熱中症の心配をしていたりも(6月からは職場でも公共向け避暑スペースの提供も始まります)。

一昔前は、怪談話で涼をとるなんてのもよく聞きましたが、最近はどうなんだろうなぁ、なんて考えながら思い出したのが『夜市』との物語、表紙の金魚がなんとも印象的な一冊となります。

題名が示す通りに、舞台は秋祭りの雰囲気に包まれる夜の市なのですが、一つかわっているのは、その市が開かれるのは、現世ではない異世界、幽世とも言うべき、トコロ、であること。

そこには、様々な世界からの稀人が集まってきます。何かを買うために、何かを売るために、、そして。

主人公は一組の男女と、そして二人の道先案内人となる老人。男は過去にもこの夜市を訪れたことがあり、その時には「弟」を対価としてとある才能を手に入れました。

10年振りの来訪となる今回の目的はその弟を取り戻すこと。さて弟を取り戻すために、今度は「何を」対価とするのでしょうか。

日本に古来からある、神隠しと帰り(返り)人の物語ですが、このパターンはなかなかに面白く、グッと引き込まれました。

どこか秋の気配を感じさせる夜の市の物語、ささやかながらも「涼」を感じさせてくれる、そんな一冊です。

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