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東京で一番好きなところ/そして、母になる

東京で一番好きなところはどこ?と聞かれたら、ここだと答えるだろうなぁと思いつつ、ゆっくりと紅葉の終わりの中を歩いていた。もう12月も半ばで、銀杏も紅葉も少しずつ葉を落としていた。風がさぁっと吹いて、銀杏がはらはらと舞っていく姿が美しくて、しばらく銀杏の木を眺めていた。

今年もここで四季折々の美しさを楽しんだな。そういえば、幼馴染と10年ぶりの再会をしたのも、新宿御苑の紅葉が美しい時期だったな。あの頃はいくつだったっけ。幼馴染は母になり、私ももうすぐ母になろうとしている。時の流れは留まることを知らない。否応なく楽しかった思い出も悲しかった思い出も全てを飲み込んで、先へ先へと流れていく。

ぼんやりと歩いていたら、写真を頼まれて、三人家族の写真を撮った。冬の、だけれども心地よい気候でみな穏やかな顔をしている。素敵な写真になったかな。そうだといいな。今日は良い日だ。

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11月下旬頃に書いていた文章を読み返していたら、だいぶ気持ちが変化していてびっくりした。もう少し落ち着いたら公開しようと思っていたのだけれど、こんな数週間で人の気持ちって移り変わっていくものなのだなぁと我ながら驚いて、そっとしまっておくことにした。

先月末は、何だかまだ出産への心の準備が出来ていなかったようで「私が母になるのか?大丈夫なのか?」みたいなことばかり書いていたのだけれど、今や「どんとこい!」という気持ちになりつつある。まあ不安がないといえば嘘なんだけど。とはいえ、いくつか今も変わらず持ち続けている思いみたいなものもあったので、それだけ残しておこうと思う。

子にはまずは健康であってほしいし、家族や家庭というものが子どもにとって安心できる場所であってほしい。弱音を吐いたり、思う存分泣いたりすることのできる場所であってほしい。

これは、ずーっと前から思っていることで、変わらない気持ち。いくつになっても泣きたいときに思いっきり泣くことができる場所が家庭であればいいし、そんな安心感を与えていきたいと思う。

どうしたら、そんな場所になってあげられるだろう?とよく考えるけれど、子どもの感情をありのままに受け止めてあげる、親も自分のセルフケアをきちんとしてメンタルを整える、夫婦のパートナーシップがしっかりしている、あたりなのかなぁと思っている。まずは私や夫に余裕がないと、子どもも思いっきり甘えられないよねえ。意外と、子どもってよく周りを見ていて、実は親にすごく気を使って無理をしてしまったりするのよね…。メンタルケアとパートナーシップはここ数年のもっぱらの個人的なテーマなんだけど、引き続きのテーマになりそう。

大人になるにつれてネガティブな気持ちは増えるのに、大人になってもネガティブの扱い方を知らないのは、泣かないほうが褒められると思い込んできたせいかもしれない。泣くと誰かを困らせる。「明るい状態」が善で、「暗い状態」は悪いもの、と思ってしまったせいかもしれない。「泣いていいんだよ、いっぱい泣いちゃえよ」って励まされたら、どれだけ楽になれるだろう。

夏生さえり

ふと開いたエッセイで、夏生さえりさんがこんなことを書いていた。そうそう、私が言いたかったことってこれなのよね…と思いながらメモした文章。もう30歳になるけれど、やっぱり涙が止まらないときは、その場をなだめるための言葉をかけられるよりも、ありのままの感情を認めてほしいって思うし、それは子どもも大人も変わらないんじゃあないだろうか。子どもも泣きたいから泣いてるんであって、そこにはちゃんと理由があるのかもしれない。

私は「ネガティブな気持ちも大切だよ。その気持ちも、全部あなたなんだから」と伝えられる親になりたい。天気が移ろうように、ネガティブな気持ちもいつかちゃんと流れていく。

夏生さえり

これは自分のためにも心に留めておきたいな、と思った言葉。ネガティブな気持ちになってしまったとき、ついつい「あー、やってしまった」みたいな気持ちになってしまうことがある。よくよく考えてみると、ネガティブな気持ちがずーっと続くことなんてなくって、数時間経ったり、次の日になったりするともう気持ちなんて変わっていたりすることがほとんど。「ちゃんと流れていく」ものなのだから、無理にどうこうしたりせず、まずはちゃんと自分の気持ちをありのままに受け止めていきたいよね。ネガティブな気持ちも全部ひっくるめての自分。まあ、そんなとこもいいよねって許してあげたい。

当たり前だけれど、私は急に明日から「母」になるわけでもなく、あくまで続くのは私という人間の延長線でしかないのである。その過程でゆるゆると変わっていったり変わらない部分があったり、でもやっぱり子育てする上でだんだんと自然に親の顔になっていくのかもしれない。

自分で書いたのだけれど、後から読んで「ああそうだよね!」とひとり頷いてしまった。妊娠初期が終わり、中期に入って心の余裕が出来てきたと思ったら、急に体の変化が大きくなってきた。大きくなるお腹を眺めながら「本当に大丈夫なんだろうか…」と思うときもあったのだけれど、みんな始めはそんなもんなんだよなぁ、母になったことがある人なんていなくて、みんな試行錯誤しながら成長していくんだよなぁ、とひとりしみじみした冬の日。

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Twitter(と言い続けるよまだ)で、「子どもに育ててもらいつつ、新米両親共に成長していければ…」とつぶやいていらっしゃる方がいて、子どもに育ててもらうって素敵な考え方だなぁと思うと同時に、目の前が開けた感じがした。

親は、子にとって絶対的な、何でも知っている、正しい存在でなければならないと思い込んでしまっていたのだけれど、そんなわけはなく、実は子どもに教えてもらうことばかりなのかもしれないな。というか、親もひとりの人間だしな。そりゃそうなのよね。娘よ、何もかも分からないことばかりだけど、私も夫も頑張るよ。まずはちゃんと自分の心と体を整えて、お迎えできるようにしておくよ。だからもう少し、お腹の中でゆっくりのびのび過ごしておくれよ。


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