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専属のスタイリストを得た【音声と文章】

山田ゆり
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会社の同期の女性社員は入社と同時にパーマをかけ、大人びて見えていた。
それに比べのり子は相変わらず床屋さんで髪を切ってもらっていたから、「美容院」や「パーマ」にとても憧れを抱いていた。

「いつか私もパーマを」と憧れていた。



のり子は意を決して美容院に入り、そして生まれて初めてパーマをかけてみた。


髪をくるくるに巻かれ、炊飯器の釜を逆さまにしたようなものが頭上にあった。

数十分待ち、ドライヤーでセットして出来上がり。

初めてパーマをかけた時の気持ちは「老けたみたい」だった。


髪がただ膨らんだだけのような気がして、自分が思い描いているような、劇的に自分が変わったとはお世辞にも思えなかった。



翌日、会社に行ったら「おっ、髪型変えたんだね」と周りから言われた。
その中で、いつもはっきりものを言う紳士服売り場のA子さんに「老けたね」と言われ、自分が思っていることを直球で受け止め、傷口に塩を塗られた思いがした。

その日は暗い気持ちで一日を過ごしたがもっとつらい現実が待っていた。

のり子はパーマをかけてから初めてシャンプーをした。すると髪がくるくるになり、ドライヤーを使いこなせなかったこともあり、翌日ののり子の髪型は、くるくる巻きのヘアスタイルになってしまった。

漫画で眼鏡を掛けて、ラーメンをすすっているくるくるの髪型の人って見たことがあるでしょうか。

のり子はその漫画の人とそっくりだった。

会社ではのり子の髪を見ても、のり子の失望に追い打ちをかけるようなことをする人はいなかったのが幸せだったと思う。
のり子は数日間暗い気持ちで過ごし、待ち望んだ休日に、今度は別の美容院へ入ってみた。


そして事情を話し、髪型を直していただいた。
その美容院は出来て間もないところだったがのり子には何となく合っていた。

そして、その中で、見習いのナガオさんと特に気が合い、それからは彼女を指名するようになった。

彼女が見習いから正社員になり、その内その支店ができ、そこに異動になった。
そこの異動先は列車に45分くらい揺られていく他市だった。

1時間に1本しか列車がこない地域だったから、その他市にある美容院を利用する場合、休日がまるまる潰れてしまう状態だったが、のり子は彼女の勤務先に出かけることにし、ナガオさんとの交流が深まっていった。

やがて別の支店ができ、そこの店長としてナガオさんが異動になり、のり子は彼女のお店に通うようになった。

彼女がどこに行ってものり子は彼女にヘアスタイルをお願いしていた。


彼女の施術も話術も素晴らしい。のり子と年齢が近かったこともあり、二人の仲はどんどん縮まっていった。


そして数年後にナガオさんは独立され、ご自宅を改装して自分の美容院を立ち上げ、のり子はそこに通うようになった。


のり子は彼女の趣味嗜好に共感でき、彼女の美容師としての腕にも尊敬の念を抱いていた。


のり子のヘアスタイルはいつものり子らしかった。
髪を伸ばす時も、ナガオさんとじっくり話をして、数か月を掛けて綺麗に伸ばしていった。

縮毛矯正やカラーリングにも挑戦してみた。恐らくのり子ひとりの考えではそういうことは出来ずにいたと思う。


彼女はのり子に新しい扉を開いてくれ、のり子は彼女を信じてどんどん良い方向へ変わっていった。




高卒で入社した当時ののり子は、お化粧の仕方も分からず服装もちぐはぐなものだったが、高級ブティックの高橋さんと出会い、TPOに合わせたきちんとした身なりができるようになった。
また、美容院のナガオさんのお陰で髪型もいつも整えられていた。

更にお気に入りの靴・鞄屋さんを見つけることができ、のり子は、自分専属のスタイリストがいるような状態になった。

誰に見られても恥ずかしくない恰好をすることができ、それが仕事にも良い結果をもたらしていった。

自分の恰好に自信を持つと行動にも自信が持てると感じた。


のり子にとっては、「服」「髪」「靴」、この3つがきちんとしていれば堂々といられる。


この専属のスタイリストがいる状態はのり子が結婚するまで続いた。





長くなりましたので、続きは次回にいたします。




※今回はこちらのnoteの続きです。

https://note.com/tukuda/n/n1e35920fa0d3




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