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ハイライト

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【あらすじ】 水野和樹は父親の友人が営む写真館でバイトする大学四年生。趣味であるカメラに夢を抱いていた時期もあったが、気付けば社会のレールに乗るように漠然と就職活動に勤しむ毎日を… もっと読む
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#物語

ハイライト改訂版㊱

 あの日から、もう三か月が経過した。もう春がすぐそこまで来ていた。  去年の春から何度も…

ハイライト改訂版㉟

 足を踏み入れた公園は薄暗かった。住宅地の空きスペースに作られた公園は中心部に大きな木が…

ハイライト改訂版㉞

 僕達は電車を乗り継ぎ、宮野写真館のある駅に降り立った。 「ここに来るつもりだった?」 「…

ハイライト改訂版㉝

 彼女と久し振りに会う日、これからの行く末を示しているような雨が降り落ちている。気持ちが…

ハイライト改訂版㉜

 夜の寒さに耐えながら街を歩けば、神の誕生を祝うイルミネーションが、それこそ神々しく輝い…

ハイライト改訂版㉛

 街を歩く多くの人が、マフラーや手袋を身に着けているようになった。本格的な冬の訪れへの準…

ハイライト改訂版⑰

「あの写真、いい写真だな」  誠治の声で僕は鮮やかな思い出から現実に戻った。 「僕もそう思う」  そう言ってから、壁にぶら下げてあるコルクボードを眺めた。そこには誠治たちとの飲み会や大学での日常を切り取った写真が張り付けられている。その真ん中で、あの時撮った写真が一際存在感を放っていた。 「最初のデート、和樹らしくなくて笑ったけどな。でもあれから、茜ちゃんは何かにつけて和樹の写真を褒めてたよな。それに和樹の事をカズ君って呼ぶようになったし、和樹も茜ちゃんって呼ぶようになったし

ハイライト改訂版⑯

 工事の作業現場を横切った時、不意に彼女は懐かしそうな口ぶりで言った。 「あのヘルメット…

ハイライト改訂版⑮

 石畳の道は、ヨーロッパの方が印象的で外国の文化だと思っていた。だけど、初めて見た神楽坂…

ハイライト改訂版⑭

 大学のある駅から乗り換えを含めてニ十分の駅、その最寄り駅から徒歩十七分の場所にある築三…

ハイライト改訂版⑬

 逆転サヨナラ負けを喫した敗戦投手のように肩を落とし、沈んだ気持ちで大学へとやってきた。…

ハイライト改訂版⑫

「私が、御社を志望した理由は御社のカメラを長年愛用し続けており、その性能の良さを日々実感…

ハイライト改訂版⑪

「和樹、お前のお客さんだ」  マスターの声で振り向くと、そこにはリクルートスーツ姿で、長…

ハイライト改訂版⑩

「よぉ、和樹」  店に入ってきたリクルートスーツ姿の男が誠治だと認識するまで時間が掛かった。心のどこかで、誠治たちはここには来ないとタカを括っていた先入観が強く影響した結果だろうか。不意打ちに身体が強張った。 「どうした?」  平静を装いながら声を出し、誠治を見る。誠治の背中に隠れて美沙の姿もあった。この前飲んだ時には茶色だった髪が黒く染まっている。それに格好はリクルートスーツ。そんな二人の姿を見て、どうしてここにやってきたのかを漠然と把握した。 「いやさ、美沙と履歴書に貼る