見出し画像

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第13話


佳太ー涙の意味

僕たちは、当日
少し早起きをして
車で、紘太さんが眠る墓園へ向かった。

お墓の前で
「初めまして。林佳太です。
今、結里子さんと同じマンションに
住んでいます」と挨拶した。
横で聞いていた結里子ちゃんは
「紘太、色々お世話になっている方なの。わたしと一緒に
佳太さんも空から守ってね」
「はい。よろしくお願いします。
でも、こちらの世界では
僕が結里子ちゃんを守りますから。
安心して下さいね」
何気なく口にしてしまったけど
隣の結里子ちゃんの耳が赤くなったのは
わかった。
そして、ほのかに
彼女のつける香水の匂いが立ちのぼった。
墓参りから帰宅して、スーパーに買い出しし、僕のうちで、ランチの用意をする。姉は、その横でテーブルセッティング。センスは良いから、インスタ映えするような、子供受けするように,飾り付けていた。

まもなく、マンション前に
大地さんの車が到着した。
姉の小躍りする後ろ姿を
キッチンから見送る。
僕もわかりやすいって、言われるけど
姉さんも、わかりやすい性格だよな。

すると結里子ちゃんが
「アキコさん、嬉しそう。
本当に大地さんのこと好きなんだね。
今回,お誘いしてよかった!」

結里子ちゃんも知っていたのか。
今日は、姉さん達へのお膳立てだけど
僕も便乗して、結里子ちゃんと
一緒の時間が過ごせることは
素直に嬉しい。
って言うか、僕も
それ、顔に出ちゃってるのかな?

公園では、姉達は
本当の親子の様に、楽しげだ。
それを眺める僕も、幸せな気分。
保冷ボックスから、飲み物を取ろうと
ふと見た結里子ちゃんの横顔。
頬を伝うものが見えた。
僕は黙って、彼女の抱えてる膝の上に
ハンカチを乗せた。

涙の意味は、分からないけど
とにかく、彼女が笑顔になる事を
一つでも増やして行きたいと
思ったんだ。



#創作大賞2023
#恋愛小説
#墓参り
#頬を伝うもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?