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小説✳︎「紘太と結里子」 第2話

こちらは
「月明かりで太陽は輝く」
のサイドストーリーです。
宜しければ、まずは本編を
読んで頂けたらうれしいです。



「紘太と結里子」第2話


新婚旅行から戻った沙有里から
お土産を渡したいからと結里子に連絡が入った。

よく行くカフェで結里子が待っていると
「お待たせ」
沙有里が店のドアを開け、入ってくる。
「どうだった?旅行は」
「うん、楽しかったよ。めちゃ疲れたけど。颯人もずいぶん語学力上げてたから」
「え?颯人くん、英語話せるんだ」
「うん。勉強してる。あとイタリア語もね。はい、お土産。ニューヨークで人気のオーガニックコスメ」
「わぁ,これ最近話題だよね!ブロードウェイはどうだった?」
「最高だったよー!2公演行けたー!」
「良かったねえ」
「そうそう。それよりさ、結里子。
実はさ、颯人が今度イタリアに留学するのよ。理学療法の勉強で。私もついて行こうと思ってるんだ」
「えっ?短期じゃなくて?」
「そう。何ヶ月か行くらしい。病院も辞めるの」
「結婚したばかりなのに、良いの?
大丈夫なの?」
「でもね,本当は結婚決める前から、いつか行くけど良い?って聞かれていたし、ついて行くって決めてたから」

沙有里は昔から思い切り良いところはあったけど、あっさりとイタリアに旅立つことになった。

3週間後。

空港で、結里子は二人を見送るため電車に乗り込んでいた。

沙有里からのお願いで、颯人は紘太に
空港に見送りを頼んでいた。

「おー!紘太!こっちこっち」
颯人が紘太を見つけて手を振る。
「颯人!沙有里ちゃん!」
「悪いなぁ、忙しいのに来てもらって」
「いや、頼まれなくても見送りするつもりはあったけどね。わざわざ声かけてくれたのはなんで?」
沙有里が言った。
「紘太くん。イタリア行く前にどうしてもやっておきたいことあってね。私が颯人に頼んだの」
「やっておきたいこと?」
「そうなの。ちょっと待ってて」

沙有里はスマホで、誰かに電話をする。

「あ、結里子?今向かってる?
ホームにいるの?話せる?うん。うん。」
沙有里は、スマホを遠ざけて紘太に言う。
「紘太くん、私がスマホ渡したら
黙って聞いていてくれる?」
「え?良いの?」
「うん。ちょっと待ってて」
不思議な提案に、紘太は戸惑っていた。

スマホを持ち直し沙有里は
結里子に向けて話す。
「結里子、私はイタリアに行くけど
一つ気になってて、今日はそれを済ませてから行こうと思ってるのよ。
結里子の気持ち知ってるから
どうにかしてあげたいと持ってたけど
私も出国準備でバタバタだったから
紘太くんを紹介出来なくてごめんね」
「沙有里、何言っての?」
「今日はここに、紘太くんも呼んでるから
絶対会ってね」
「さ、沙有里!ちょっと、急に」
「事前に言うと、恥ずかしがって来ないかもって思ってさ」
「心の準備が、出来てないよー」
「ごめんごめん。でもさ、結里子
紘太くんに会いたいでしょ?」
「そうだけど……」
「結里子は紘太くんのどこが気に入ったの?」

そう言うと沙有里は、スマホを黙って紘太に渡した。
それを知らない結里子は話し続けた。

「コウタさんは、沙有里の結婚式で初めてあったけど、実は受付している姿を見かけた時、すごく背が高くてスマートでカッコイイ!って思ったけど、どうせ結婚してたり彼女とかいるよなぁって思って見てたの。
あのブーケのハプニングで、ボール投げる姿も本当かっこよくて、もう心が奪われちゃって。そうしたら沙有里が彼女居ないよって言うから、その日から、頭の中に結婚式での姿と、ブーケを,受け取った私に向かって見てせくれた笑顔が、忘れられなくて。でも、今日,そっちにいるの?会えるの?嬉しいけど、緊張する!
あれ?沙有里?聞いてる?」

紘太が聞いてるとは知らずに
結里子は思いを話していた。

紘太は慌てて、沙有里にスマホを戻した。
「あ、ごめんごめん。ちゃんと聞いてた。
結里子、とにかく来てね。待ってるから」

「って言うことで、紘太くん。結里子をお願いします。私もこれで安心して行けるわ」 
沙有里は頭を下げた。
颯人も
「沙有里がさ、結里子ちゃんはきっと
お膳立てしないと何もしないって
言うもんだから」
紘太は照れながら
「僕もなんだか、いきなりで驚いてるけど、二人の計らいを無駄にはしないようにするよ」

数十分して、結里子も空港ロビーに到着した。

「結里子!」
「沙有里!待たせちゃってごめーん」
「紘太さんも来てくれてるよ」
「あぁ。初めまして……じゃないのか、花岡《はなおか》結里子と申します」
「白土《しらと》紘太です。よろしくお願いします」
「……」

「もう、二人とも何黙ってんよ!」
沙有里は笑いながら話しかける。

そのあと四人でラウンジに行き談笑。
あっという間に、出発の時間となった。

「しっかり勉強してくるんだぞ」
紘太は颯人の肩を叩く。
「あぁ。沙有里が居れば大丈夫」
紘太に微笑む颯人。
「体には気をつけてね」
結里子は沙有里を抱きしめた。
「結里子もね。紘太くん、結里子をよろしくお願いします」
沙有里は結里子の体を、紘太に突き出しながら言った。

照れてる二人を残して
沙有里と颯人は搭乗口へ向かった。

残された紘太と結里子。
手を振る結里子に紘太が
「花岡さん。この後、お時間ありますか?」
紘太は思い切って声をかけた。
「え?は、はい」
「少しお茶でもしませんか?」

内心はドキドキの紘太。
嬉しすぎて泣きそうな結里子。

並んで歩く二人。
ぎこちないけれど、話は途切れる事なく続いていた。

空港近くのスタバでは
期間限定のフラペチーノの看板が出ていた。
何気なく見ていた結里子に
「ここ入りますか?」
紘太は声をかける。
「あ、どこでもいいんですけど、期間限定に、ちょっと弱くて」
「いいと思いますよ。今じゃなきゃ食べられない。時を逃さないことも大切です」
「いや、そんな大袈裟じゃないんですけどね」
「あははは、そうですよね」
「うふふ」

二人はやっと、普通に笑い合えた。

白土さんの笑顔。やっぱり素敵……
結里子は目を合わせることが
ようやく出来た。

身長差は、30センチ以上ありそうで
見上げると、目が合って
はにかむ結里子に、紘太も
優しい眼差しを向けた。

思いの外混んでいる店内。
カウンターならば、いくつか空いている。
「花岡さん、ここでもいいですか?」
「あ、はい」
向かい合わせの席よりも
かえって話しやすいかもしれないと
結里子も思った。
並んで座った後、紘太がオーダーを
頼みに行ってくる間、何を話そうかそわそわしながら待っていた。

紘太の方も、結里子の気持ちを知ってしまっている分、どんな風に話しかけたら良いか、一生懸命考えていた。

「お待たせしました」
紘太がフラペチーノを渡すと
結里子も
「ありがとうございます」と
笑顔で答える。

その後は、専ら
沙有里と颯人の結婚式での事や
二人の話題で、楽しく過ごすことが出来た。

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