見出し画像

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第3話

佳太ー奏との再会

奏と、久しぶりに会った。
同じ中高の同級生だ。
出席番号が並んでいたので
入学してすぐ、仲良くなった奴。

コロナ禍で、飲みは自粛していたのだが
お互いの休みの日に、昼のみをした。

気になる彼女の話を打ち明けると、すぐ
やっぱりと言うか、からかわれた。
でも、面白がって話を聞いてくれた。

僕たちは同じバレーボール部だった。
奏がアタッカーで、僕はセッター。
高校生の時は、都大会では優勝し
関東大会まで行った仲だ。

学生の頃は、奏の方が背が高かったが
今では僕の方が少し高くなっていた。
奏は僕より、ジャンプ力があって
背も高いからアタッカー。
まあ性格も、強気だしな。
僕は、瞬発力が必要で、いつでも冷静にトスを
上げなければいけないセッター。
確かに、割と
何かあっても慌てる方じゃないかも。
監督はそんな性格を
上手く使っていたかもな。

お互いの近況なんか話しているうち
昼飲みは、つい飲み過ぎるみたいだ。

特に、彼女と上手く行ってない
奏は相当酔ってしまった。

もうそろそろヤバいと思い
帰ろうと声をかけた。
足元がふらつく奏を抱え、駅へ向かう。

お互い背丈が同じ位だが
お腹の出が気になり出した奏は
だいぶ重くて、支えるのに苦労した。

階段を10段ぐらい上がった時に
奏の足がもつれて、階段から落ちてしまった。
支えきれなかった僕も、肘を強打。

「奏!大丈夫か?」
「痛っえぇ!足がぁぁ」
立ち上がれない奏は
駅員が呼んだ救急車で、病院に運ばれる事に。
幸い、頭を打ったりしてないみたいだけど
相当足を痛がっている。
そして僕も、初めて救急車に乗り込んだ。
♢♢♢♢♢

森中病院という、救急病院に
連れて行かれた。
僕も肘を打撲していたので、処置を受けた。
結局、奏は足首骨折でそのまま入院となった。

奏の彼女が、駆けつけて来た。
「ごめん。歌織ちゃん。
俺がついていながら」
「謝らなくて良いよ。
奏が勝手に飲みすぎたんでしょ?どうせ」
「最近、君の笑顔が少なくて寂しいって
言ってたよ」
「……ごめん。色々あってさ。
後は、わたし見るから。ありがとう」
「うん、また、来るから」

病室へ向かった奏の彼女が
少し嬉しそうに見えたのは
気のせいだろうか?

救急車は、乗って連れて行かれても
帰りは自腹なんだよね。
(当たり前なんだろうけど、初めて知った)
僕は軽症なので
最寄りの駅から自宅へ帰ることになる。

あれ?ここ
あの彼女が降りる駅だ。

降りたことなかったけど
駅ナカは、結構お店入ってるんだね。

ここのパン屋、うちの近くにもあるな。
塩パンがうまいんだよね。
明日の朝飯用に、買っていくかな?

僕は三つ上の姉と、二人暮らし。
ネイリストをしている姉は家事はやるが
料理だけは、デコった爪では出来ないと言う。

食事は、当番制にしてるが
姉は大概、デパ地下の惣菜屋で
買ったものを皿に並べる。
今時は、惣菜も栄養や素材にこだわっていて
体に良いものも多いが
流石に、メニューには限りある。
僕が当番の時に
クックパッドで見つけたレシピで
作ってみたら、意外にも面白かった。
最近は、料理が趣味とも
言えるくらいになって来た。
特にパスタは、好物なのもあるが
姉が機嫌悪い時に
カルボナーラを、作って出した時は
大概ご機嫌になる。
僕のカルボナーラは
かなり旨いらしい。

塩パンを買って、電車に乗り込み
いつもと同じ道を
痛む肘をさすりながら歩いた。

♢♢♢♢♢

2日後、奏の入院した
病院へ行った。

ここ最近は、コロナで見舞いには
親族でも出来ないらしいが
僕も、肘の怪我をしていたので
この病院の整形外科で
再診してもらう事にした。
レントゲンを撮ってみたら
意外にひどくて
骨に小さなヒビも入ってた。

ドクターから、しばらくリハビリに
通うことを勧められた。
たしかに、腕の曲げ伸ばしは出来ない。
このまま固まってしまう事もあるらしい。

だが、リハビリ室では
少し向こうで、松葉杖をつきながら
リハビリしている奏を
目にすることができた。
お互い姿を確認すると
後で電話で、話すようになった。

奏は、痛みあるが
病院での生活も、悪くもないらしい。
担当のナースが、どの人も気さくで
気が利くし、厳しくも優しい人達だとか。

それに、入院したおかげで
奏は彼女とも、うまく行きだしたそうだ。
お互い忙しくて、すれ違っていた為
意思が伝わらない事も多かったが
病室から電話で、話す時間が増えて
分かり合えたと言っていた。

怪我の功名とはこの事だ。

僕の怪我は
利き腕では無かったので
仕事は休まず行けるが
腕を固定する装具を
付けているので
結構、大怪我に見える。


#創作大賞2023
#恋愛小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?