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小説✴︎月明かりで太陽は輝く

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こちらにまとめてみました。 完読頂けたら嬉しいです。
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最近noteで読みがいのあった小説を紹介します2023.7

最近noteで読みがいのあった小説を紹介します2023.7

読んだ順です。

オフロスキーさんの「慟哭と改悛」
汗など身体に関する表現が印象に残りました。
https://note.com/ofuro_scheit/n/nbf10bd8d4808

kajiさんの「妄想と欲望という名の夢か誠か」
地の文が多いのにスピード感があります。序章は別にありますが、第一話のURLです。
https://note.com/hiroshi__next/n/n27c766

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第1話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第1話

【あらすじ】
佳太  
高身長で周りからはイケメンと言われるが、いたって平凡に暮らしてきた。
あの日、通勤電車で恋をした相手は、運命の人なのか?闇の中の彼女を、明るく照らしていけたなら……

結里子  
一緒に暮らす紘太との暮らしは、平凡ながら幸せな日々だった。あの日を境に、心砕けた私は闇の中で生きることになる。偶然出会った彼は、私を明るい方へ導いてくれるのだろうか。

それぞれの目線で、物語は進

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第2話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第2話

結里子ー心静か

私がいつも乗る
通勤の電車の中
同じ時間
同じ車両
同じ顔ぶれ

誰一人として
知り合いは居ないけれど
みんな知ってる。

いつも杖に顎を乗せてる
おじいさん。
お化粧の仕上げする
スーツの女性。
音漏れしてる音楽は
ヒップホップの高校生。
分厚い参考書を
開いてるけど
いつも居眠りの中学生。
スマホから目を離さない
サラリーマン。
体より大きなランドセルで
Suicaを握りしめ

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第3話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第3話

佳太ー奏との再会

奏と、久しぶりに会った。
同じ中高の同級生だ。
出席番号が並んでいたので
入学してすぐ、仲良くなった奴。

コロナ禍で、飲みは自粛していたのだが
お互いの休みの日に、昼のみをした。

気になる彼女の話を打ち明けると、すぐ
やっぱりと言うか、からかわれた。
でも、面白がって話を聞いてくれた。

僕たちは同じバレーボール部だった。
奏がアタッカーで、僕はセッター。
高校生の時は、都

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第4話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第4話

結里子ーただ生きる

紘太の助けた男の子の父親は
葬儀には来ていたけれど
私もまだ、顔を合わせることも出来ないし
気持ちの整理もつかない状態で
その場に立っていることさえやっとだった。

同僚のめぐみが、ずっと寄り添ってくれたから
めぐみの方に、後日改めてお詫びを
させてほしいと、名刺が渡されていて
落ち着いたら、連絡が欲しいとも。

最初は躊躇ったが
私からも、伝えたいことがあり
ようやく日常に

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第5話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第5話

佳太ー怪我の功名

その日の朝
いつもは座っている、行きの電車で
たまたま座る事が出来ずに
吊革の上のバーにつかまり立っていた。
僕は、身長が188センチある。
吊革よりも、上のバーが安定するし
掴みやすい。

やがて彼女が、いつものドアから
乗り込んできた。
そして、僕の隣に立つ。いつもの位置に。
僕の左側に立とうとしたが
腕に気が付いたのか
すぐに回り込んで、右側に立つ。
怪我している方に、ぶ

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第6話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第6話

結里子ー似ている彼

土曜日出勤の日。
患者さんは平日より
少な目なので、少しのんびりな受付業務。
病棟担当の時は
曜日なんて関係なく忙しかった。
その頃に、担当していた奏くんが
松葉杖をつきながら
外来にやってきたのが、遠くから見えた。
そちらに気を取られていると
目の前で診察券を出す人がいて
少しビックリしながら
受け取ると2枚ある。
「おふたり共ですね?」と
顔を上げたら
あの電車で出会った

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第7話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第7話

佳太ー彼女の真実

土曜日
奏と待ち合わせて、病院に向かった。

結里子さんのいない受付。
並んで待合室で待っていると
少し恰幅のいいナースが
「久しぶりね〜。奏ちゃんー!」
と言いながら、話しかけてきた。
「あ!師長さん!」と奏は答えた。
この人も、奏が入院していた時
お世話になっていたナースだそうだ。

「今日はリハビリ?」
「はい」
「クラッチ(松葉杖)外せたんだ」
「お陰様で!でも今日は結

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第8話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第8話

結里子ー心許す場所

大地さんから紹介された
オフィスビルの中の、ネイルサロン。
こじんまりとしたお店だけど
センスのいい壁紙と装飾品。
照明も温かみのある柔らかい光を差す。
ちょっと緊張気味で、待っていると
名前を呼ばれた。

「初めまして。ご来店いただき
ありがとうございます。本日より私が
担当させて頂きます」
切長のはっきりとした二重。
目の色が薄茶色の、綺麗なネイリストさん。
マスクで隠れ

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第9話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第9話

佳太ー素顔の笑顔

奏達の引っ越しも、無事終わり
いよいよ結里子さんを招く日。
僕はアクリル板の衝立を手作りして
パーティションを分けてた。
そこには“喋る時はマスクをしよう‼️”と
付箋も貼った。
全てのテーブルは、消毒済み。

部屋に通され、間隔を空けて
並べた椅子を見た結里子さんは
「こんなにしっかり対策していただけて
ありがたいです。
下手な飲食店より万全ですね」
マスクの上の目は笑ってい

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第10話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第10話

結里子ー前を向いて

紘太のお墓に花を供えて
手を合わせるけど
なんだか気持ちが落ち着かない。
いつまでも忘れられないはずと
思っていたけれど、紘太との記憶が
少しづつふんわり薄れていく気がする。
日常の事で、記憶が上書きされて
しまう感覚かな。

金曜日の夜は、アキコさんのサロンで
ネイルをしていただきながら
いつも色々な話をする。
思い切って話してみた。
紘太と背格好の同じ人が、気になっている

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第11話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第11話

佳太ー思い出の物

姉さんが急に
「今度、事情があってお店のお客様の 
猫をちょっと預かるんだけど良いよね?」
と聞いてきた。
この部屋でも以前
一年程、保護猫を世話したことある。
「別に良いけど」

来週末、連れてくるとの事で
ちょうど僕も休みだし、手伝えると言った。
僕と姉さんは
別に仲が悪いわけでもないが
流石に、男女の姉弟だと
家でもそんなに話はしない。
お互い勤務形態も違うし
すれ違いも

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第12話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第12話

結里子ーホワイトリリー

こうして、猫との暮らしを始めたけれど
この子のおかげで、家族のように
寄り添ってくれる人達に出会えた。
猫には、前の飼い主のおばあちゃんが
つけた名前がある。
「チョビちゃん」という
鼻の下にチョビ髭みたいな模様が
ついているから。
チョビは、猫のわりには人懐こくて
すぐにウチにも馴染んでくれた。

引っ越しの日
捨てられずにいた紘太の荷物。

紘太が抱きしめてくれた

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小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第13話

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第13話

佳太ー涙の意味

僕たちは、当日
少し早起きをして
車で、紘太さんが眠る墓園へ向かった。

お墓の前で
「初めまして。林佳太です。
今、結里子さんと同じマンションに
住んでいます」と挨拶した。
横で聞いていた結里子ちゃんは
「紘太、色々お世話になっている方なの。わたしと一緒に
佳太さんも空から守ってね」
「はい。よろしくお願いします。
でも、こちらの世界では
僕が結里子ちゃんを守りますから。
安心

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