月切 漣

ツキガキリ・レンと申します。 水面に映った月光が、漣(さざなみ)で切られた光になる様を…

月切 漣

ツキガキリ・レンと申します。 水面に映った月光が、漣(さざなみ)で切られた光になる様を、思い描いて付けた名前です。 思うまま、水面に漂う光のように ゆらりと文章を綴っていこうと思っております。

最近の記事

  • 固定された記事

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第1話

【あらすじ】 佳太   高身長で周りからはイケメンと言われるが、いたって平凡に暮らしてきた。 あの日、通勤電車で恋をした相手は、運命の人なのか?闇の中の彼女を、明るく照らしていけたなら…… 結里子   一緒に暮らす紘太との暮らしは、平凡ながら幸せな日々だった。あの日を境に、心砕けた私は闇の中で生きることになる。偶然出会った彼は、私を明るい方へ導いてくれるのだろうか。 それぞれの目線で、物語は進んで行く。 佳太 ー心寄せ 僕は、彼女の本当の顔を知らない。 コロナ禍で、

    • 小説✴︎梅はその日の難逃れ 第35話

      「ぼくのじいちゃんだよ」 「こんにちは」 千鳥は春翔の祖父を見て (あ、確かに似てる。そして木杉さんにもやっぱり似てる) 流石にいとこだなと、思った。 「千鳥ちゃん、じいちゃんも梅干し欲しいらしいから、案内してくれる?僕は凛を探してくるから」 「はい、わかりました」 春翔の祖父は少し気難しそうに見えた。怖い人かな?と思いつつも、春翔の祖父なら大丈夫と勝手な想像で笑顔を見せる千鳥。 「は、初めまして、米村千鳥と言います」 千鳥から挨拶すると、祖父はパッと目を見て千鳥に使って 「

      • 小説✴︎梅はその日の難逃れ 第34話

        「梅干し、旨い?」 後ろから話しかけられた千鳥は 振り向くと駿太郎が立っている。 「わぁ!」千鳥はつい声を出してしまった。 「いや、そんなにびっくりしなくても」駿太郎は、坊主頭を撫でながら千鳥を見た。 「ご、ごめん。来てくれてありがとう」 「おう!一応演劇部の男子にはチラシ配っといたよ。これが噂の米村のばぁちゃんの梅干し?」 「うん、めちゃ美味しいよ。うちの庭の梅の実で作ったの」 「へえー」 「しかも、この梅干しを食べると良いことが起きる!」 「良いこと?マジ?」 「そう、あ

        • 小説✴︎梅はその日の難逃れ 第33話

          『あけぼの』ではイベントの準備をしつつ、一旦閉店の日が決まった。 カフェの営業最終日。 ほとんどの常連が、入れ替わり立ち替わり寄ってくれた。 近隣はもちろん、元この店で働いたことのある人達も駆けつけてくれた。 口々に惜しみながらも、感謝の言葉を聞いた愁は、オープンして8年の月日の中で『あけぼの』が多くの人達のオアシスになり、憩いの時間を作って来たのだと思った。 自身の生活を変えてまで、店を始めたが、失った以上に得たものがあったと実感出来たことは、幸せだった。 夕方の人の出

        • 固定された記事

        小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第1話

        マガジン

        • 記事のご紹介
          37本
        • 写真館
          2本
        • 小説✴︎紘太と結里子
          14本
        • 朔の日のさくら
          3本
        • 小説✴︎月明かりで太陽は輝く
          51本

        記事

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第32話

          「うーん。駄目だなぁ」 春翔は部屋で千鳥の描いた梅干しのラベルをプリントしてみるが、カスレが多くプリンターの調子が悪い。 仕方なく、実家へ行きプリンターを使わせてもらうことにした。 一応、母親に連絡を入れたら 祖父がいるはずだから寄っても大丈夫とのことだった。 「春翔でーす」 呼び鈴は鳴らさず、そのまま玄関を開ける。 祖父の「開いてるぞ」の声を聞きつつ リビングへ行くと、新聞を広げた祖父の姿があった。 春翔はすぐに「書斎のプリンターお借りしまーす」と祖父に話しかける。 「

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第32話

          ドラマ「舟を編む」最終回を観ました。松本先生がリモートで一人一人への言葉かけを、ずっと涙してみていました。言葉って武器にもなるけど、優しく心温めてくれますね。優しい人になりたい。語彙力低いから辞書買いたくなりました。

          ドラマ「舟を編む」最終回を観ました。松本先生がリモートで一人一人への言葉かけを、ずっと涙してみていました。言葉って武器にもなるけど、優しく心温めてくれますね。優しい人になりたい。語彙力低いから辞書買いたくなりました。

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第31話

          千鳥は張り切ってラベルのデザインを考えた。春翔の事を思い浮かべながら 思考する時間は、楽しかった。 小春もまた、自分に出来ることがあるのは嬉しくて、イベントに向けて 張り切っていた。 ある日の夕飯時 小春、千草、千鳥と3人が揃った日だった。 千草が、この所忙しくしていて 久しぶりに3人揃ったのだった。 千草は老人ホームのケアマネ兼副施設長の仕事をしていた。 最近は入居者も多く、従業員は増やすものの千草自体は相変わらずの忙しさだった。 「千草、体は大丈夫?」 「小春さん、

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第31話

          ご近所で、ここからは少し離れた場所に土地をお持ちの方がいる。竹林なのでこの時期、たけのこを取りに行くと掘りたてをお裾分け頂く。ぬかで茹で上げアクを抜いた所。手間はかかるが美味しい。いただきます。

          ご近所で、ここからは少し離れた場所に土地をお持ちの方がいる。竹林なのでこの時期、たけのこを取りに行くと掘りたてをお裾分け頂く。ぬかで茹で上げアクを抜いた所。手間はかかるが美味しい。いただきます。

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第30話

          千鳥は張り切ってラベルのデザインを考えた。春翔の事を思い浮かべながら 思考する時間は、楽しかった。 小春もまた、自分に出来ることがあるのは嬉しくて、イベントに向けて 張り切っていた。 ある日の夕飯時 小春、千草、千鳥と3人が揃った日だった。 千草が、この所忙しくしていて 久しぶりに3人揃ったのだった。 千草は老人ホームのケアマネ兼副施設長の仕事をしていた。 最近は入居者も多く、従業員は増やすものの、千草自体は相変わらずの忙しさだった。 「千草、体は大丈夫?」 「小春さん

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第30話

          舟を編むを観て、追記。読書はあまり好きではなくて、絵を描いたりする方が好きな子供だった。読書感想文が苦手。それが中一で仲良くなった子が語彙力が高い子で、大人のような話し方をする。彼女の話す単語が分からず、広辞苑をひっくり返すようになった。この辺りはまさにこの話のようだった。

          舟を編むを観て、追記。読書はあまり好きではなくて、絵を描いたりする方が好きな子供だった。読書感想文が苦手。それが中一で仲良くなった子が語彙力が高い子で、大人のような話し方をする。彼女の話す単語が分からず、広辞苑をひっくり返すようになった。この辺りはまさにこの話のようだった。

          ドラマ「舟を編む」を観ている。原作は読んでいなかったので、いずれ読むつもり。先日の話の中で似たくだりが。 https://note.com/tukigakiri_ren/n/n3d0c78fcbf9c そして、最終話はコロナが出てくるようだ。ちょっぴりリンクしてるなと思った。

          ドラマ「舟を編む」を観ている。原作は読んでいなかったので、いずれ読むつもり。先日の話の中で似たくだりが。 https://note.com/tukigakiri_ren/n/n3d0c78fcbf9c そして、最終話はコロナが出てくるようだ。ちょっぴりリンクしてるなと思った。

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第29話

          カフェ『あけぼの』のイベントというのは 『あけぼの』閉店に向けての 準備だった。 『あけぼの』が借りている古民家の 大家が急逝したとの知らせが届いた。 以前から大家の具合があまり良くないとは聞いていたので ここでいつまで続けられるかマスターも 心で覚悟はしてはいた。 先日、親族から この古民家も含め資産を売却する話が上がったとの不動産屋から連絡が とうとう来てしまった。 マスターの人柄やコーヒーの美味さで人気のカフェだが 古民家のこの雰囲気が好きだと 足を運ぶ常連も多

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第29話

          旬のホタルイカが、安い。美味しい。週一食べてる気がする。あなたは、目玉取る派?食べちゃう派?私は食べちゃう派。ただ硬いので、半分くらいは外します。 酢味噌の時とわさび醤油の時と交互で食べます。

          旬のホタルイカが、安い。美味しい。週一食べてる気がする。あなたは、目玉取る派?食べちゃう派?私は食べちゃう派。ただ硬いので、半分くらいは外します。 酢味噌の時とわさび醤油の時と交互で食べます。

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第28話

          春翔が梅干しを切らしていた頃の事。 『バイト先の包丁で指を切る』 『財布を無くす』 『天気予報を確認して 折りたたみ傘を用意したのに いざ開いてみると骨が折れていた』 『ホットコーヒーって頼んだ客がアイスコーヒー頼んだと言い張ってくる』 なんだか事がうまく運ばない。 小春の梅干しを食べてからは、市販の梅干しをどうも買う気にはならない。 かと言って、小春さんに欲しいとも言いにくい。 たまたま上手くいかないからと言って 梅干しのせいにしている自分もなんだか滑稽に思う

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第28話

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第27話

          春翔は凛に、何度か会おうと試みたが 電話は出ないし、家に行っても 出てきてはくれなかった。 叔母である凛の母親に 会って、話がしたいと伝えはしたが 「ごめんね。なんかね春くんには 当分会わないって言ってるのよ。 何があったのか知らないけど。 いきなり受験勉強を猛烈に始めちゃってね」 「そうなんですね。勉強の邪魔にならない様、時期が過ぎたらまた 連絡させてもらいます」 そう言って春翔は、手紙だけを手渡して凛の家を後にした。 『凛へ。読む気になったら封を開けて』 手紙の表にはそ

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第27話

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第26話

          それから無事、千鳥と春翔は LINEで繋がることができ お互いパンダ情報など時々 やり取りするようになった。 ある日、千鳥のスマホに 春翔からのLINEが入った。 今度、『あけぼの』で イベントを開催するのだが そこで小春さんの梅干しを 販売しようと思うので 千鳥にも手伝ってもらえないか?との事だった。 春翔と会える理由が出来て 心弾んだ千鳥。 すぐに小春の部屋へ行くと 「千鳥ちゃんにも連絡来た?」 「うん、来た。小春さんの梅干し売るの?」 「そうなのよ。こんな素人ので

          小説✴︎梅はその日の難逃れ 第26話