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小説精読 少年の日の思い出3

 客は自分が十歳の頃の話を始めます。客の一人称は「ぼく」です。ぼくは蝶集めに夢中です。

 子供の頃のある時期、何かに夢中になるのはよくあることです。仮面ライダーカード。ビッグリマンシール。筋肉マン消しゴム。遊戯王やらポケモンやら、なんだかんだ、今でもあります。その昔は昆虫採取なんですね。そうそう切手集めなんてのもありました。私が小学生の頃は、切手の一大ブームで、みんな集めてましたな。なんかそれ用の本とかあって、「見返り美人」が何千円とか、取引き時価が載ってたりしました。  

 私ん家は貧乏なんで、そんな高価な切手なんて集められません。当時、デパートに行くと、切手コーナーなんかがあって、いろいろ高価な切手とか売ってましたが、お小遣いが少ないんで、使用済み切手パック200円なんか買ってましたな。月に一度。勿論、クズ切手ばっかりなんですが、それを本と首っ引きで、時価を調べたりなんかして。

 でも、ほとんどの切手の時価って、未使用のものなんですな。たまに、明治大正時代とかのふるーい切手は、使用済みの方が高かったりするんで、この使用済み切手もいつか値段が上がるかもなんて、妄想を逞しくして、大事に、菓子箱に入れてましたな。そうです、うちの親は高価な切手収集帳なんか買ってくれなかったんです。

 でも、切手って、色々図案が面白くて、毎日毎日眺めたり、並べたりしてると、どうしても切手収集帳が欲しくて欲しくてたまらなくなりました。友達は皆んな持ってるのに(実際は皆んなじゃないですけど)、何で自分だけ菓子箱なんだ。意を決して、母親におねだりしました。答えは即答。「いらん」。

 泣きましたな。泣いて泣いて泣きました。あんまり泣くんで、泣き落としに負けた母がやっすい切手収集帳を買ってくれました。そのチンケな収集帳を手にしたとき、どんなに嬉しかったか。

 今はもう、とっくの昔に熱も冷めてしまいましたが、家にありますね、収集帳が。あれからお小遣いも増え、未使用切手も買えるようになり、コツコツ、コツコツ収集してたものです。記念切手といえども特別珍しいもんじゃないんで、今売ってもほぼ額面通りみたいです。

 手紙も葉書も出す習慣もなくなり、何年に一回あるかないかの出番を、ただ待っている状況ですな。切手だけは一生分ありますな。

お話に、全然入れませんでした。すまんことです。



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