ショートショート『あした天気になあれ』

「あーしたてんきになーあれ」

まだこの世の全てが大きく見えた頃、靴を蹴飛ばして天気が分かることなどありえないことを知らなかった純粋な気持ちに戻りたいと思うことがある。
今思えば無駄な遊びだなと思ってしまう大人の自分が醜く感じるのも、夜の景色を知ってからだ。

暗い景色にくらくら、それに疑問を持つことなども当たり前になっていく。
太陽が沈んでいるのだとは分かっているものの、昼間の空は何色にも変わる。きらきら。

今は、水彩絵の具の混ざり具合のように、みずみずしい想いが弾けて一日の型が出来上がったときの心の清々しさを感じるために呼吸をする。

そんな風に感じていくたびに、緑の優しさは増して見守ってもらえているたびに雫は落ちていくのだろうか。額には、思い出に溢れた虹が映っていた。

年をとっても、きっとどこかの誰かがもう一回言っているのだろう。

「あしたてんきになあれ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?