澄幹 露乃(Sumiki Tsuyuno)

2004年生まれ。作家志望の大学2年生。 主に短編を書いています。学生製作ですが毎週更…

澄幹 露乃(Sumiki Tsuyuno)

2004年生まれ。作家志望の大学2年生。 主に短編を書いています。学生製作ですが毎週更新をしていますので、少しでも頭の片隅に入れて頂けると嬉しいです。 X(contact,message)···▸https://twitter.com/Tsuyunote

最近の記事

短編小説「カレーライスのはなし」(過去作)

老若男女問わず愛されるカレーライス。 日曜日のお昼より少し早い時間からその匂いがするのが、一種の日常のような感覚でいた。 3歳の時からずっと動き続ける換気扇と、グルメ番組、炊飯のタイマー、この3つがだいたい組み合わさっていた。しかしながらお腹は鳴らない。可笑しい。 唐突だが、私はちっちゃい時不思議だったことがある。 給食のカレーがお米と分けられていたこと。 地域によって異なるが、私の地域では、半々に分けられたおかず、汁物、缶に入ったご飯、森永牛乳、時々デザートと分けられてい

    • ショートショート『ON THE STAGE』

      「もうすぐ開場でーす」 この言葉は、いい意味でぴりりと空気を整わせる作用がある。 「出られる人から出ちゃってくださいねー」 この言葉は、1番心をほぐして、且つさびしくさせる言葉のひとつ。 練習は何日、何カ月もあるのに、リハーサルや本番は数日しかない現実そのものにつまらなくなったことは無いだろうか。 「トリプルベジタブル」通称トリベジを結成して半年が経ったころ、僕はなぜだかそんな感情を抱いていた。コントで、まっすぐじゃないいろいろな系統のやつ。いかにもやりがちだよねと思うよう

      • 短編小説『そよ風』

         植物が芽吹き、暖かくなってきたと同時に人としての心が目覚めようとする頃に、いつしか描いていた願いが叶う日はいつなのだろうかと思う。  テレビをつけると必ず悪いニュースが流れる社会に生まれてしまったからには生まれてしまっただけでとても重いものを背負っているような感覚が幼少のころから襲いかかって、それは続いている。 田畑が長い道のりを歩いて帰っていると、必ずこんなことを想うのだ。  「ねえいとちゃん、ひろーい空ってどこまで続くのかな」  私の隣には、ふうかちゃんという子がい

        • ショートショート『あした天気になあれ』

          「あーしたてんきになーあれ」 まだこの世の全てが大きく見えた頃、靴を蹴飛ばして天気が分かることなどありえないことを知らなかった純粋な気持ちに戻りたいと思うことがある。 今思えば無駄な遊びだなと思ってしまう大人の自分が醜く感じるのも、夜の景色を知ってからだ。 暗い景色にくらくら、それに疑問を持つことなども当たり前になっていく。 太陽が沈んでいるのだとは分かっているものの、昼間の空は何色にも変わる。きらきら。 今は、水彩絵の具の混ざり具合のように、みずみずしい想いが弾けて一

        短編小説「カレーライスのはなし」(過去作)

          ショートショート『さわがしいとき』

          曇りの日が続いている頃、温もりの中を駆け巡っていた。 足に傷をつけて、白いスカートは汚れたままの足取りになりながらもとにかく早く今はどこかへ消えてしまおうと駆け出していた。 しばらくすると森の中の湖に来た。 ほんとうに、ほんとうに、透き通っていた。 鳥の声しか聞こえないような中で傷んだ髪の毛を結わえ直していっそ溺れてみたいと思ってつま先を付けてみる。 おばあちゃんちには、埃まみれの水晶玉があった。 「あれは私たちを守ってくれる神様なのさ」 といいながら触らなかったもの。 な

          ショートショート『さわがしいとき』

          ショートショート『コバルトブルーに溺れる』

          「え?え、しんだ?せんせー、赤点って30点みまん?いじょー?」 日常茶飯事のやり取りをつまみに騒がしい教室の中でこっそり自動販売機で買った缶ジュースを飲み干す。スーガク、という絶対苦手な人は一人存在する教科のテスト返却の時間は、中間期末ともにやけにデシベルが大きくなるのだ。 とりあえず私もぐしゃりとしまい込んだ用紙をもう一度確認する。 58点、良いのか悪いのか。 私はとりあえず、椅子を思いっきり背中で倒しながら伸びをする。 一番後ろの席になってから、この景色を眺めるのが楽し

          ショートショート『コバルトブルーに溺れる』

          vlog 未来を怖がることを辞めた

           4月ももうすぐ終わり。  ミモザが揺れる季節になったこの頃、いかがお過ごしでしょうか。  世間はGWです、私も明日帰省する予定です。  今日は久しぶりに朝帰りという悪いことをしました。  今も気分が高揚しているんですよね、ドーパミンの影響かもしれないですがそれよりも「とあること」を名乗れるようになったことが嬉しくて仕方がないのです。  私、澄幹露乃、突然ですが大学2年生になってからとあるサークルに所属させていただくことになりました。 『お笑い』サークルです。  両親の

          vlog 未来を怖がることを辞めた

          ショートショート『寝る子は育つ』

           「あ」  自分の住む町には、高い建物はないけれど、草花を程よく揺らす風と共に生き物たちは各々音をたてて今日も歩き続けている。  「優奈ちゃん、今日もよろしくお願いします。」といういつものバイトの連絡とともに、長い道を歩きながら私は常に景色を良い意味でにらみつけている。  住まいというものは多少不便なところなところがあるくらいがちょうどいいし、ビルの光よりも星の明かりの方がこころを穏やかに生きられることができているこの生活を選んで、喜び、という意識をまた高められるようにはな

          ショートショート『寝る子は育つ』

          vlog 志賀玲太先生の「病葉」を拝見して、改めて自分について。

          勝手ながら、初めてnoteの記事についての感想を書かせていただく。 志賀先生はこの記事を書いたとき、怖くはなかったのだろうか。 自分の内面をこんなにもはっきりと写る硝子のように書き連ねることができること、私はできるだけ自分の内面だとか本音だとかを直接言うことのできない人間だからなのか、どう表現すれば良いのか分からないが、ぱっと感じたのは「羨ましい」という感情だった。 自分には○○があって、それを改善するために○○していること、という表面上では見えない部分が書けること。 自

          vlog 志賀玲太先生の「病葉」を拝見して、改めて自分について。

          ショートショート『試験期間中』

          常に感覚というものは使い・使われすぎている。 そのほとんどは意識的ではなく無意識であるし、苦痛すらも感じることも無くて何が普通というものなのかさえもわからなくなる。それが、この日常。 とりあえずルーティーンで何か機械をつけることにしよう。 音が、とりあえずないとむなしい。 いざ作業に取り組むことにしたのは良いものの、ふと疑問に感じる部分がこんな時に限ってたくさん見つかる。 今聞こえているのは毎日同じ時間に想像力で溢れに溢れた、番組の流れ星たち。視覚を使わずに画面なしで頭の中

          ショートショート『試験期間中』

          ショートショート『スーヴェニア』

          中庭にはにかっと笑った人たちが駆け回り、周りを照らし始めている。 それに対して、暖かな澄んだ空気を吸う力がだんだんと弱くなっていく姿が窓際に映る。 そろそろ、シロツメクサの茂る季節だ。 心なしか点滴の落ちる速度は増して、サッカーボールが知らないところへスキップしている。 今見える景色は箱型で、小さな植物と、一番星たちが見えるくらいだ。 私は一生懸命生きる彼らにもう追い付けはしないと覚悟はしていた。 日差しや月の光、蛍光灯がないと目が輝くことすら求めなくなっている現実に、強い

          ショートショート『スーヴェニア』

          vlog 第2回 SCHOOL OF LOCK!Creation Academy in 東洋学園大学 の振り返り

          たぶん、この記事を見て頂いてるなかには、私のことを知っていますという人も少なからずいると思う。 私はラジオの中の学校、SCHOOL OF LOCK!の生徒のひとりだ。 まずは簡単に、このラジオ番組についての説明をさせていただく。 この番組は「ラジオの中の学校」として、平日22:00~TOKYO FMから全国ネットで放送されている番組である。 「生徒」とはSCHOOL OF LOCK!のリスナーのこと。 パーソナリティは、こもり校長こと、GENERATIONSの小森

          vlog 第2回 SCHOOL OF LOCK!Creation Academy in 東洋学園大学 の振り返り

          短編小説『花束』

          仮に、何もない荒野に突然オアシスが現れることはきっとないとしても 春になって、周りに花が咲くように規則性のあるものは存在して それはいずれにせよ人々を喜ばせるものへと変わっていく。 人間は季節の変わり目に、旅立つケースが多いらしい。 「ゆうくん、私、お葬式は静かなところがいいな」 緩和ケア病棟に入った直後のこと。彼女は窓の向こうを見つめながら、向こうに行く前提のことを呟くことになった。 「大切な人にだけ、見てもらいたいの。街の方じゃあ、集中できないでしょう、いろいろと。」

          ショートショート『I WANNA BE』

          誰もいない道で、私はターンする。 1,2,3,・・・と数は増えていく。 靴のメロディーに乗せて、フリルは風に揺られ、花々と香水の香りが交じる。 絵本の中でしか見ないような装いが好きだから、自分もそうなりたいと思った。 ぬいぐるみがないと眠れないから、自分の部屋は別世界のようにした。 本当の私は恥ずかしいままだから、あこがれがたくさん詰まった宝石でいっぱいのクローゼットに隠したままだけど、それでも愛しい存在でいたいのは変わらないのよ。 ずっと前に、私は人形の存在に強い羨まし

          ショートショート『I WANNA BE』

          こんにちは。現在、雨です。 もうそろそろ春の陽気が欲しいと思うこの頃ですが現実はそうはいかないものですね。手がかじかむ寒さです。 話は変わりまして、近々Xのアカウントを作成することにしました。 ペンネームも決定し、作品の更新のお知らせを主にします。 何卒よろしくお願いいたします。

          こんにちは。現在、雨です。 もうそろそろ春の陽気が欲しいと思うこの頃ですが現実はそうはいかないものですね。手がかじかむ寒さです。 話は変わりまして、近々Xのアカウントを作成することにしました。 ペンネームも決定し、作品の更新のお知らせを主にします。 何卒よろしくお願いいたします。

          ショートショート『はなまるびより』

          保健室のベッドだけが守ってくれた日々がかつて存在した。 自分の知っている保健室の話だが、なぜか声がやけに聞こえやすい場所にどこも存在していた。 ただ、もちろん壁は存在していたのだから、どんな音もちょうどよく聞こえたのだ。 校庭の端っこで枝やら草やらをつついているような気分になる、これが無心なのだろうと思った。 短く小さいショートパンツと、派手なニーハイソックスにスニーカー。 見た目を気にせずに無造作に結った髪をかき上げていた姿の自分が思い浮かぶ。 やけに点々の付いた天井を見

          ショートショート『はなまるびより』