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スマホで良い音を聴くはなし【後編】

今回の後編ではデジタルオーディオの再生の仕組みと種類について説明します。
人の耳と音の関係、また音源のデータ化を説明した前編も是非ご参照下さい。


高音質データを復元するDACアンプ

音源を作る時にアナログからデジタルに変換したように、再生(復元)するにはデジタルからアナログに変換するプロセスが必要になります。
その機能を受け持つのがDigital to Analog Converter (DAC)アンプです。

図5は各音源ファイルをどのようなDACで復元するとハイレゾ再生やロスレス再生になるのかをまとめています。

図5 再生品質とDAC性能の関係

①ハイレゾ音源のスペック(例:96kHz / 24bit)と同等性能のDACを使うとハイレゾオーディオとなります。
②ハイレゾ音源のスペック(例:96kHz / 24bit)以下の性能のDAC(48kHz / 24bitなど)を使うと元の品質は再現できませんが依然としてCDスペック以上であればハイレゾオーディオとなります。
③ロスレス音源のスペック(44.1kHz / 16bit)と同等性能のDACを使うとロスレスオーディオとなります。
④ロスレス音源のスペック以下の性能のDACを使うとその性能で再生できる品質にダウングレードされ標準品質オーディオとなります。
⑤元データが標準音源の場合はその品質に見合った標準品質オーディオになります。

例えば元の音楽ファイルがMP3形式であれば、再生可能な最大周波数は16kHz程度、AACの場合は18.5kHz程度となります。ロスレス形式の20kHzに比べると高周波数の成分が欠ける分、原音に比べると高域の再生能力は落ちますが、音程や音色が損なわれることはないので通常の音楽鑑賞は問題なく行えます。

スマートホンを再生機器とする場合

これらの高音質ファイルがスマホの中にある場合、または配信サービスの高音質音源をスマートホン経由で聴くにはどのようにすれば良いでのしょうか。

図6は音楽配信サービスでハイレゾ音源やロスレス音源を再生する時のプロセスを表しています。スマートホンはデジタルデータの送信元としてDACアンプがデータを受け取り、ヘッドホン、イヤホン、スピーカーなどで音(アナログ)に変換します。

ここで大切なことは、①スマートホンがハイレゾオーディオの出力に対応しているか、②外付けのDACアンプには必要な復元能力があるか、そして③ヘッドホンやイヤホン、スピーカーなど最終的に音を出す装置がハイレゾ対応しているか、という3点です。

①例えばiPhoneは3GSの頃からApple Lossless Audio Codecには対応していたものの外部インターフェイスがDOCKコネクターですが、外付けDACもしくは変換アダプタ型のインラインDACはUSB-Cもしくはligntningコネクタしか存在しないため、実質的にはiPhone 5以降の機種がハイレゾ再生対応機器となります。

Androidスマホの多くはUSB-typeCタイプのDACが利用できます。

②DACアンプは、数百円の変換アダプタ型から数十万円の「ヘッドホンアンプ」と呼ばれる据え置き型までまでピンキリで選び方も難しいのですが、世の中に数多あるDACアンプの価格差はほぼアンプ性能の差に拠るものです。

電気的増幅には周波数特性がつきものですが、小さな音から大きな音までどの周波数もバランス良く同じように増幅できるアンプほど大きく重くなり、そして高価格になります。

図中に「変換アダプタ」と赤点線で囲ったところがありますが、3.5mmのイヤホンジャック変換アダプタの形状の場合、DACチップ内蔵のものとオーディオ出力変換のみのものがあるので注意して下さい。アップル純正の3.5mm変換アダプタは48kHz / 24bit対応のDACチップを内蔵しています。(但し公式には非開示)

③ヘッドホン、イヤホン、スピーカーがハイレゾ対応かどうかは、カタログや製品仕様の中で、再生できる最大周波数が確認できます。最大周波数が前編で説明した人間の可聴域20kHzを超えて26kHz, 40kHzなどであればハイレゾ対応、最大が20kHz以下であればハイレゾ非対応です。

図中に「3.5mmジャック」と記載しましたが、DACによっては2.5mmジャック、もしくはバランス型の4.4mmジャックという規格があります。有線タイプのヘッドホンやイヤホンはケーブルコネクタの規格がDACの出力に合っているか確認が必要です。

現状ではハイレゾオーディオを楽しみたい場合にはスピーカーでもヘッドホン/イヤホンでも1つの例外を除いて有線接続する必要があります。

ワイヤレス接続型の制約

最後になぜハイレゾオーディオは有線接続する必要があり、ブルートゥース接続のデバイスでは(1つの例外を除いて)ハイレゾが楽しめないかを説明します。

ブルートゥース規格自体はバージョン5.0以降では50Mbps(理論最大値)という伝送ビットレートを実現しているのでハイレゾロスレスでも問題なさそうですが、音楽データを無線通信するためのA2DP (Advanced Audio Distribution Profile)のサポートビットレートが最大1Mbpsのため伝送できるデータ量に制限が生じます。

従ってハイレゾ音源をスマホ内で準備できてもブルートゥース接続することにより全てのファイルがダウンサンプリングされて標準音質となってしまいます。

唯一の例外はソニーが開発したLDAC(下記参照)というコーデックを使った方法で、スマホとイヤホンが両方ともLDACに対応していればブルートゥース接続でハイレゾワイヤレスオーディオが楽しめます。

※iPhoneはLDAC非対応ですがLDAC対応のトランスミッターを有線で接続して無線伝送した後、LDAC対応デバイスで聴けばハイレゾオーディオを楽しむことができます。

以下にBluetoothヘッドホンやイヤホンで使用される主なコーデックを列記します。ワイヤレスデバイスを選ぶ時にはオーディオ信号を送り出す側のスマートホンと受け取る側のヘッドホンやイヤホンが対応している方式が揃っている必要があります。

・SBC (Subband Coding):
SBCはA2DPのサポート必須コーデックであり、ほぼすべてのBluetoothデバイスでサポートされています。

・AAC (Advanced Audio Coding):
AACは高い音質を提供する非可逆圧縮コーデックで主にApple製品で使用されています。

・aptX / aptX LL (Low-Latecy) / aptX HD / aptX Adaptive:
aptXはQualcomm社が開発した音声伝送コーデックで特にAndroidデバイスで広く使用されています。aptX HDはより高いビットレート・576kbpsで音楽を転送し、より高品質なサウンドを提供します。但し専門家からは「ハイレゾ品質の転送とは言えない」という評価があります。

・LDAC (Low-Delay Audio Codec):
LDACはソニーが開発した高解像度オーディオコーデックでハイレゾでの音楽転送を可能にします。ロッシー圧縮と呼ばれ元のハイレゾ音源の情報は一部欠けますが、高音質音源データのロスレス圧縮に比べて伝送後の音質は優れています。

おわりに

ロスレスオーディオとハイレゾオーディオについては、前編と後編で説明しました。ハイレゾに興味がある方で、Apple MusicかAmazon Music HDを使っている方はぜひお試しください。

現在のところ、ハイレゾ対応のUSB-DACアンプとヘッドホンまたはイヤホンを使う場合の合計金額は、5万円以下、5-10万円、10万円以上、20万円以上といった段階で「良い音」になると個人的に感じています。

とはいえ、ただし、急に数万円を使って失敗したらどうしよう?というのは正直なところですよね。そこで、予算別のオススメな組み合わせを紹介しようか迷いましたが、音楽や音の好みは人それぞれなので控えています。

YouTubeには標準音源とハイレゾ音源の聴き比べをした動画も多くありますが、それを再生するのがスマホとワイヤレスイヤホンだと良さを感じ取るのは不可能なので、こればかりは試聴可能なリアル店舗で聴いて頂くしかありません。

ただ私が見た聴き比べ動画の中では、音楽デュオのコブクロが自分たちのYouTubeチャンネルで外付けDACアンプやヘッドホン/イヤホンの世界を分かりやすく紹介していて、とても面白く分かりやすかったかったです。スマホ+オーディオ機器に興味ある方にはぜひご覧頂きたいので文末にリンクを貼っておきます。

みなさんのオーディオライフに少しでもお役に立てたら嬉しく思います。
長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。


【参考:コブクロのデバイスくらべ】


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