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歩みの重ねがあついほど重ねた歩みが自分を支える

vol.77【ワタシノ子育てノセカイ

前に進まないとなぜか後ろに進む。現状維持は衰退するんだ。

世界は変わらないようでも日々刻々と進んでいる。この瞬間にも1秒また1秒が生まれては過去になっている。進まずに止まって変わらない世界にいると、しずやかにゆるやかに世界は後退していくんだ。

今を過去にせず未来にするには、とりあえずでも進むことなんだろうな。



ところで私には「実子誘拐」で6年以上離れて暮らす、10代のふたりの息子がいる。

2024年春休み。いとこの地元まで花見がてら、実子誘拐ぶりに会いに行こうと母子で企てるも失敗する。結果報告のLINEが長男タロウから届き、ミッション失敗のしめとして、母宅へ「お昼だけ食べに行く」と返信がきた。

せっかくなので、母とふたりでの花見を提案するも、丁重にお断りされたから、理由を勝手に思春期にしておいた。一方で、いとこ訪問を母とのランチ会に代替した思春期タロウが、私にとっては満開の桜そのもの。一緒にいられるのなら、どこでも花見状態である。

ちなみに次男ジロウは、同日に花見会を計画していたそうで、お友達とおでかけらしい。ジロウから直接の連絡をタロウに依頼したけど、本人からの連絡はなかったので、ジロウ視点の回答は得られていない。2023夏のいとこ会↓↓や秋の葬式と、違う結果になっているよう願うばかりだ。

弁の立つ兄と言語異なる父のもと、逞しく意見申し立てをできるジロウの勇気は、しばしば蚊帳の外になっている体験が、おおいに役立っているのかもしれないな。

4月5日ランチ会。私の母がタロウへ好物のグミを用意してくれていたので、食事はそこそこにお茶会へ移る。母は断片的な記憶をつむいだらしく、タロウの好きなマンゴー味らしきグミを選んでくれていた。

タロウは小学校2年生のとき、フィリピンにてマンゴーの虜になったんだ。東南アジアでの滞在話が久しくはじまる。「安くて種類もたくさんあって、ジュースも美味しかったよな」と記憶をたどる15歳のタロウ。

マンゴー味らしきグミのパッケージを見つめながらお喋りするタロウは、もう高校生なんだけど、なんだか実子誘拐前の可愛らしいサイズに見える。まじまじと見つめるグミの味は「楊枝甘露」で、ヨンジーガムロというらしい↓↓

味の説明を求められたタロウは、自分の感想をそこそこに、スマホで検索をはじめた。どうやらヨンジーガムロとは、香港発のタピオカドリンクで、台湾で爆発的に流行り、日本にやってきているそうだ。

親子のお茶会は、いつも学びの宝庫である。

子育てとは、親子でプライベートを共にすること、なのかもしれないな。過ごす質よりたぶん、過ごす量が子育てとなるんだろう。親子で重ねた時間が、子どもの成長となるんだ。

幼少期ほど親の影響は露わで、子どもは一生懸命に、ときに必死となり、親に応えようとする。思春期に入ると、親と過ごした土台の上に、自分という唯一無二の人間を、少しづつ創り上げていくんだろう。

実子誘拐などで親と引き離しになった子は、親による土台が歪む。だからこそ成長するにつれて、単独親権家庭の子どもたちは問題を抱えやすい。

たとえば不登校の割合は、共同親権家庭の約3倍が単独親権家庭というデータがある。いじめや非行などの問題行動も、傾向は類似。ちなみに、ひとり親は親全体の9%にすぎない。
※ひとり親世帯と子どもの生育環境/独立行政法人 労働政策研究・研修機構PDF

日本の子育ては「実子誘拐」が基本なので、子どもから親を搾取すること、つまり子どものアイデンティティを奪う行為を厭わない。子どもの尊厳を自然に傷つける子育てが、日本国のデフォルトとなるんだ。

実子誘拐とは単独親権制度のこと。そして親権制度とは子育てのこと。つまり、ひとり親家庭に限った話ではない、ということだ。

私たちの国は戦後から77年間、実子誘拐子育てを積み重ねた。単独親権制度の源流は、約130年前に施行された家制度。なので実質100年超に渡り、実子誘拐子育てを叩きこんだ国家が、2024年の日本といえるだろう。

現日本の家族観は伝統でもなんでもない。意図的につくられた、歴史上の単なる差別観なんだ。

タピオカジュースから味付きのふわふわカキ氷の話となり、フィリピンスイーツのハロハロをふたりで思い出し、南国フルーツを南国に食べに行こう、と母子の会話は盛り上がってゆく。

テンションが上がったせいか、ハロハロの語源のせいか、香港と台湾がごっちゃになった私は、島はどっちだと悩みだす。幼いタロウにプレゼントした地球儀を、片道5歩で手にすると、タロウは手元のGoogle地図で、すでに解説をはじめていた。

復路も5歩で席に着くと、タロウはクルクルと地球儀をまわして、もう一度丁寧に香港と台湾の場所を教えてくれる。

私が「香港に行ってみたいわ~」と呟くと、タロウはすかさず「行ったことあるやん」とあったかいエクボ。そういやタロジロと三人で、初めて足を踏み入れた海外は香港になるのか。トランジットで5時間ばかし、過ごしたことを思い出す。

「ここはもう日本やないねんな、お母ちゃん!」と珍しく興奮する幼いタロウが、15歳タロウの前に現れた。タロウは7歳で、ジロウは4歳の、2016年の夏。実子誘拐の一年前。

思春期色が濃くなるまでに、多種多様な文化に触れて、心をいっぱいいっぱい動かして、あわよくば英語に興味を抱いてもらおうと、当時の私はこっそりと画策してたんだ。地球儀の香港から今に戻ると、目の前で大きなタロウが笑ってた。

お母ちゃん、一緒に行ったんはココやで。

指差す手は私よりずいぶん逞しくて、タロウが久しぶりに回した地球儀は、ほんのりと、色あせていた。



2016年 香港国際空港
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