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死にものぐるいでアクセルを踏む

よく覚えていないのだが、
多分フェイスブックに自分の気持ちを発信したのかもしれないのだが、
ある友達から電話が来た。
「今からうちに泊まりにおいでよ」
その友達はいわゆる
「ぽつんと一軒家」みたいなところに住んでいて、
里山にある古民家で仙人のような暮らしをしていた。

彼女の家はウチから90キロ以上離れていた。
すごい行きたかったけど、
愛犬がいるから無理だし、
免許はあるものの、
近所しか運転したことがなかった。
しかも、私は自他ともに認める重度の方向音痴だった。

「すっごい行きたいけど、私、高速とか無理だし、
〇〇(愛犬)いるから無理だよ」
「潮風なら出来るよ!絶対できる!来なよ!」

考えてみたら、
どうせ、今晩一人で家にいても
死にたいとしか思えないのだから、
死ぬぐらいの勇気があるのなら
高速乗っても怖くないはずだよね?
だって怖い理由って結局は「死」が怖いわけだから。

「わかった」

気づくと私は愛犬を後部座席に乗せ、
高速を突っ走っていた。
カーナビもついていないので、
頼れるのはiPhoneと料金所のおじさんだけだ。

きっと車のボイスレコーダーに残っていると思うのだが、
私はハンドルを強く握りしめながら
大声で叫んでいた。
「神さま、私は死にたいけど、死にたくない。本当は生きたい!!」
文字通り死にものぐるいで走り続けた。

料金所に停まるたびにおじさんに聞いた
「初めて高速に乗ったんですけど、次どこで曲がればいいですか?」
おじさんはみんな優しかった。
私の表情から訳のわからない殺気みたいなものを感じたのだろう。
「道曲がるときは必ずあらかじめ左車線に移っておくんだよ!」
「ありがとうございます!!」

途中、サービスエリアで犬に水を飲ませたりするために立ち寄った。
もう死ぬ気になればなんでもできると思ったので
夫に電話をした。
「私ともう住む気ないんだよね?」
夫はどっかの定食屋で昼食を食べながら電話に応えてるっぽく
くちゃくちゃしながら
「別にそういうわけでもないけど」
どんな会話をしたか、正直よく覚えていないのだが、
夫がくちゃくちゃしながら応えていることに
嫌悪感を抱いたのだけははっきり覚えている。

そして、走り続けた。
愛犬も怖がらずに一緒にがんばってくれた。
本当に愛犬がいなければ成し遂げられなかった。
こんなにちっちゃいけど存在はとても大きい。
ありがとう。

奇跡的に到着した。

友達は驚きつつも喜んでくれた。

つづく

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